病院やクリニックなど看護の現場で働いている人、あるいは勤務経験がある人、これから看護師として働きたいと思っている人の中には、小児科を転職先として検討している人もいるのではないでしょうか。
少子化が進む一方、アレルギー疾患や生活習慣病に象徴される子どもの健康問題の多様化、育児相談や支援といった保護者へのサポート強化などを背景に、小児科の看護師に対するニーズや求められる専門性はますます高まっています。
この記事では、小児科で働く看護師の仕事内容とは? 特別なスキルや経験は必要? といった疑問や不安に応える情報から、メリットやデメリット、やりがいにいたるまで小児科で働く看護師について紹介します。
小児科で働く看護師の仕事に関心のある人はもちろん、小児科看護師について知らなかったという人も、看護師としての選択の幅を広げるヒントにしてみてください。
<目次>
1 小児科で働く看護師の仕事内容・役割
小児科で働く看護師の業務は、医師の診療補助のみならず、患者である小児の着替えや排せつのお世話、保護者対応など多岐にわたります。ここでは、小児科看護師の主な仕事内容を紹介します。
なお、小児科の対象年齢については特に規定があるわけではなく、病院ごとに異なります。乳児から中学生まで、あるいは18歳までを原則としている小児科もありますが、中には慢性的な疾患や先天的な病気の場合、成人後も継続して診療するケースも少なくありません。
2 小児科で働く看護師の1日のスケジュール
小児科で働く看護師の場合、病棟勤務かクリニック勤務かによってスケジュールが異なります。 ここでは病棟とクリニック、それぞれの看護師の代表的な1日の流れを例として紹介します。おもちゃなどが置いてあるプレイルームを有する病棟なら、ベッドから離れられる子どもたちをプレイルームに連れて行き、保育士に託すことも看護師の仕事になります。看護師は、プレイルームで子どもたちが遊んでいる間に、遊べない子どもの入浴などのケアを行います。
なお日勤のほかに、2交代制なら夜勤、3交代制なら準夜勤・深夜勤などがあります。それぞれの勤務時間帯によってタイムスケジュールが異なりますので、応募時に確認すると良いでしょう。
午前の診療から夕方の診療終了までフルタイムで勤務する場合、長時間勤務になることも。その場合、昼休憩を長めにとれることが多いので、この時間にゆっくり休みましょう。
また、クリニックによっては、遅番と早番を設けて2交代制にしているケースもあります。
3 小児科で働く看護師に必要な資格、スキルや経験
小児科で働く看護師の場合、看護師の資格以外に特別な資格は必要ありません。ただし、備えていると役に立つスキルや資格があるので、以下に紹介します。
<資格>
・小児プライマリケア認定看護師
子どもの健康と福祉に関する問題に幅広く関わり、小児患者と家族へ最適な支援を実践できると認められた看護師に認定される資格です。以前は「小児救急看護認定看護師」という名称でしたが、2019年から「小児プライマリケア認定看護師」へ名称が変わりました。
・小児看護専門看護師
日本看護協会が認定する資格の1つ。子どもの健康と発達を支援するために、高度な知識とスキルを持つ看護師のことです。
・新生児集中ケア認定看護師
重篤な状態にある新生児に、高いレベルの治療や看護を行うための認定看護師資格の1つ。ハイリスク新生児とその家族のケアを行います。
<スキルや経験>
・観察力や洞察力
子どもの場合、自分自身の症状に気付かなかったり、症状や痛みを言葉で言い表せなかったりすることも多いので、子どものわずかな変化に気づき、病状を読み取る能力が求められます。
・アセスメント能力
看護師にとって重要な力となるのが、専門知識や過去の経験を活かしながら、患者の情報を収集・分析・評価してケアプランの内容や方向性を決定するアセスメント能力です。
とくに子どもと向き合う小児科看護師の場合、子どもの年齢や発達レベルによって正常範囲が異なること、変化の速度が速いこと、子ども自身が自分から状況を伝えられないケースが多いことなど、アセスメントのハードルが高くなります。
そのためわずかな状態の変化を見逃さず、子どもの成長状態や発達段階を踏まえて、総合的な視点からアセスメントを行う高い能力が求められます。
・コミュニケーション力
小さな子どもは自分の症状を言葉でうまく伝えられないため、患者である子どもはもちろんのこと、家族も含めて丁寧なコミュニケーションが肝要に。
子どもと話す時には、できる限り不安や恐怖心を抱かせないように目線を合わせ、子どもを落ち着かせながら、安心感を抱かせるように対話できるコミュニケーション力が求められます。
・わかりやすく説明する力
病気のことや治療内容について、子どもにわかりやすく説明しなければいけない場面も。イラストや人形などを使って子どもに伝えた経験やアイデアがあると役立つでしょう。
4 小児科看護師のメリットややりがい、デメリット、大変な点とは?
転職を考える場合、どのような職場にもメリット、デメリットがあります。ここでは、小児科で働く看護師にとっての一般的なメリットややりがいに感じること、一方のデメリットや働く上での大変な点を紹介します。小児科の場合、クリニックと病棟勤務で勤務条件が大きく異なるため注意が必要です。
何事にも一長一短があるので、両面を自分自身の価値観、現在の環境や状況、将来のことなどと照らし合わせ、転職を検討する材料にしましょう。
●小児科で働く看護師のメリット・やりがい
<クリニック>
・勤務時間や休みの日が規則的
クリニックの場合は診療時間が決まっているため、夜勤がないケースが多く、勤務時間が規則的な点がメリットに。また、大半のクリニックは日曜・祝日は休診で休みも安定しているので、休暇の予定が立てやすいです。
ただし、クリニックによっては日曜・祝日の診療や夜遅めの時間まで診療を受け付けている場合もあるので、勤務時間や診療日については応募前に確認が必要です。
<病棟・クリニック共通>
・子どもの成長や回復を身近で感じられる
日々子どもと関わり合いサポートを継続していくなかで、いろいろな葛藤を乗り越えながら疾病が回復し、元 気になっていく子どもの姿は、ケアする立場の大人たちにも勇気を与え、看護師としてのやりがいになります。 時にその成長などに触れることで、心を動かされる場面も少なくないでしょう。
・小児に関する幅広い知識やスキルが得られる
患者の対象年齢が広く小児特有の疾患などさまざまな症例と向き合う小児科では、幅広い知識や対応力を身につけられます。
子育て中、または今後、出産・育児を希望している人にとって、仕事を通じて小児医療に関する知識やスキルを高められることは自身の育児にも役立つといえるでしょう。
●小児科で働く看護師のデメリット・大変な点
<クリニック>
・給与の水準が低め
夜勤や残業を求められるケースが少ないことから手当が付かない場合が多く、病棟勤務に比べると給与水準が低めの傾向であると考えられます。特に病院からクリニックへの転職を考える際などに、給与アップをめざして転職を検討する場合には、事前によく確認しておくと良いでしょう。
<病棟・クリニック共通>
・子どもとのコミュニケーション、保護者対応が難しい
患者の対象が幅広いなかで、症状や痛みを言葉で言い表せない年齢の子どもも多いので、一人ひとりの様子から状況を判断することが求められます。また、診療をスムーズに行うために子どものモチベーションを高めたり、警戒心を取り除いたりすることに難しさを感じる人がいるかもしれません。
加えて、保護者とのコミュニケーションに難しさを感じる人もいるでしょう。子どもの病気に対して不安や心配を抱く保護者の対応にも、きめ細かな配慮が求められるのです。
5 小児科で働く看護師に向いているタイプ
ここまで紹介してきた小児科で働く看護師の仕事内容やメリット・デメリットを踏まえると、小児科での仕事に向いている看護師人物像は以下のとおりです。
・子どもが好きな人、子育て経験がある人
1日中子どもと接する小児科看護師の場合、子どもが好きなことは必須条件といえるでしょう。育児経験がある場合に、大きなアドバンテージになります。
・コミュニケーション能力が高い人
子どもとのコミュニケーションはもちろん、保護者とのやりとりも重要に。双方の不安に寄り添ったケアができるコミュニケーション能力の高さは大いに役に立つでしょう。
・ワークライフバランスを重視し、規則的な勤務形態を求めている人(クリニックの場合)
クリニックの場合、大半が日勤のみで規則的な勤務時間で働けるため、ワークライフバランスを重視したい人にとって働きやすい環境といえます。
・ブランク明けで負担の少ない職場からリスタートしたい人(クリニックの場合)
子育てや介護、病気などによって長期間離職していた人が職場復帰する際、精神的にも肉体的にも負荷の少ない職場からリスタートしたいと考える人は少なくないでしょう。
クリニックの場合、夜勤や休日診療などがないケースが多く、クリニックによっては救急を受け入れていない場合もあるので、仕事のリズムを取り戻しながら職場復帰しやすいといえます。
6 小児科看護師への転職に役立つ志望動機
小児科看護師への転職を希望する場合、採用担当者に熱意や意欲を伝えることや病院にとってどのようなメリットをもたらすことができるかという点をアピールすることが必要です。
採用したら即戦力になる、現場の良好な環境づくりにつながるなど「必要な存在である」「採用したい」と思わせる志望動機を考えて選考につなげましょう。
以下に、志望動機の例文を挙げています。自分自身の経歴や思いに置き換えて、熱意や意欲が伝わる自分らしい志望動機を作るための参考にしてください。
●小児科での勤務経験がない場合
〈志望動機例〉
小児医療に携わることで、地域の子どもを見守りたいと考え、貴院を志望しました。私は内科病棟で5年間の勤務を経験し、幅広い世代の方のケアにあたってきました。その中で、地域医療の未来を支えていく上で小児科の果たす役割の大きさを感じるようになりました。
特に貴院では、診療のみならずご家族へ向けた医療セミナーや親子向けのワークショップを開催するなど、地域との連携、コミュニケーションを大切にされていらっしゃいます。そうした活動に感銘を受け、ぜひとも貴院の一員として働きたいという思いが高まりました。
これまでの看護の経験を活かし、子どもたちを取り巻く家族や地域の人々とのコミュニケーションも大切にしながら、子どもたちの笑顔を守る看護師になりたいと考えています。
●ブランクがある場合
〈志望動機例〉
看護師として総合病院で勤務した後、妊娠・出産を機に7年間休職していました。
看護師としての復職を考えた始めた頃、子どもが体調を崩して貴院にお世話になったことがあります。かかりつけ医が休診日だったため、急きょ診察をお願いしたのですが、初診だったにもかかわらず看護師の方や医師の方、スタッフの方みなさんがとても親切に接してくださいました。
看護師でありながらも、自分の子どものこととなると親として慌ててしまいましたが、みなさんの穏やかで的確なご対応により、冷静さを取り戻すことができました。
そんな貴院の一員として、ぜひ私も母としての思いや経験を生かしながら、保護者の気持ちに寄り添えるようなサポートをしたいと考えています。
●キャリアを活かす場合
〈志望動機例〉
大学病院での経験を活かし、基幹病院とクリニックの橋渡し役として地域医療に貢献したいと考えています。
私は8年にわたって小児病棟で経験を積んできました。その中で感じたことは、地域のクリニックと基幹施設となる中核・大規模病院との連携の重要性です。かねてより、地域の方々への啓蒙活動を積極的に行っている貴院の評判を耳にする機会が多かったことから、地域の小児科クリニックを起点とした地域医療の理想的なあり方を実現できるのではないかと思い、志望しました。
私自身も子育てに励む一人の母として、お子さんとそのご家族を支え、貴院の一員として、地域の子どもたちの明るい未来を支える役割を果たしたいと考えています。
7 小児科看護師の仕事の見つけ方
今回は小児科で働く看護師の仕事内容やメリット、デメリットなどについてご紹介しました。
子どもたちの成長を見守れること、育児によるブランク明けであっても育児経験が生かせることなどから、転職先として魅力を感じる人も多いでしょう。子どもたちの笑顔に励まされ、看護師としてのスキルや経験を生かすことができるというやりがいのある小児科看護師の仕事。転職を考える際の選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。
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◇ ◇ ◇
本サイトで紹介している幅広い求人の選択肢を参考に、自分自身が求める環境や働き方、仕事に対する理想などと照らし合わせながら、最適な職場やタイミング、条件を検討することで、ぜひ転職成功を引き寄せてください。
小児科で働く看護師の主な仕事内容
【診療補助・介助】
問診や処置の際の医師の補助業務を担当。特に小児科病棟の場合には、医師の治療・処置介助の場面が多くなります。診療補助に関しては、スムーズに診療・処置ができるように、泣き出す子や暴れる子を落ち着かせることも看護師の重要な仕事になります。
また、乳児の検診や身体計測、予防接種時の介助業務もあります。予防接種に際しては、ワクチンの準備や子どもを固定するといったことも看護師の仕事です。
【患者のケア】
乳幼児の着替えや排せつのサポートなど身の回りの世話をします。特に病棟看護師の場合は、清拭やシャワー浴、洗髪、赤ちゃんの沐浴といった清潔ケアの場面が多くなります。
またプレパレーションによって、治療にあたる子どもに安心感を与えるという重要なミッションが挙げられます。治療を受ける子どもに対して処置の説明を行う際には、子どもの年齢や状況に応じて絵や人形を使いながら子どもが理解しやすいように工夫することも。子どもが治療の意味を理解し、心の準備ができるように導きます。そのため、処置中や処置後の声掛けも大切です。
【家族のケア】
家族の不安や悩みに寄り添い、精神的なサポートを行います。症状や治療内容の説明のみならず、育児相談や保健指導を行うこともあります。
【その他】
病棟看護師の場合、時間に余裕がある時には子どもと遊ぶことも。また、新生児の授乳を行うケースもあります。母親に授乳時間を知らせたり、管理を行ったりすることも業務の一つです。