横田クリニック (東大阪市／荒本駅)
横田 恭之 院長の独自取材記事
近鉄けいはんな線荒本駅3番出口から北へ歩いて3分ほどのマンションの1階。地域で長く親しまれた開業の設備や内装、スタッフから患者までをそのまま継承し、2022年5月に新たに開業したのが内科・消化器内科の「横田クリニック」だ。院長を務めるのは、山口大学医学部卒業後、大学とその関連病院に10年以上勤め、潰瘍性大腸炎やクローン病、内視鏡検査などの主に消化器内科の分野で経験を積んだ横田恭之先生。「新規開業なのに昭和ムード満点でしょう」とにこやかに出迎える温和な物腰に、誰もが心を許して話せるような優しい人柄が表れている。そんな横田院長に、医院継承の経緯や開業から2ヵ月の状況、クリニックが今後めざす方向性など、自己紹介を兼ねてじっくり語ってもらった。
患者と対等な立場で健康を幅広くサポート
まずは開業に至った経緯を教えてください。
ここはもともと福田クリニックという当院と同じ内科・胃腸科・放射線科の医院で、地域の皆さんに30年以上も愛される存在でした。私の母の実家がこの地域にあり、たまたま院長と母との雑談中に「引退したいので息子さんに医院を引き継いでもらえないだろうか」と打診をいただいたのが始まりです。当時の私は山口県内に勤めており、最初は思わぬ話に妻と2人で驚きましたが、夫婦で相談して引き受けさせていただくことになりました。1ヵ月間、院長先生が診察されるのを後ろから見学しながら「来月からは私が担当します」と患者さんにごあいさつもさせていただきました。そうした機会をつくってくれた先生に、今でも感謝しています。
横田院長は山口大学医学部のご出身だそうですね。
私は奈良市で生まれ、高校まで奈良市で過ごしました。子どもの頃は胃腸が弱く、自宅の隣にあったクリニックにしょっちゅうお世話になったものです。私が医学部に進んで消化器内科医をめざしたのは、その影響があったのかもしれません。大学卒業後は大学院で博士号を取り、大学病院やその関連病院など、開業するまでずっと山口県下に勤めていました。いつかは関西に戻りたいと思っていましたから、今回のご縁はいい機会だったと思います。実際に開業して診療をやってみると、やはり大学病院とは勝手が違いますね。大学病院ではドクターの立ち位置がなんとなく高いところにあるような雰囲気がありますが、ここでは医師と患者さんは対等。医療とは、そもそもそうあるべきではないかと思います。
開業からまだ2ヵ月ですが、今の状況を教えてください。
現在、これまでの患者さんを引き継いでおり、前任の先生と患者さんの信頼関係を感じながら、自分もより良い関係を築けるように努めていきたいと感じています。患者さんの大半はやはりご高齢の方で、血圧や血糖、コレステロールの値が高いなど、生活習慣に起因した慢性疾患があって定期的に受診されている方が中心です。こうした患者さんに「今日の体調はどうですか？」と確認する一方で、急なおなかの症状を訴えて来られる若い方にも対応し、かかりつけとしてしっかりサポートしていきたいです。スタッフは、受付が4人と看護師が3人。全員、前の先生からそのまま引き続きで働いてくれています。みんなベテランですごく頼りになりますし、既存患者さんのことも熟知しています。これまでどおりに受診できることは、患者さんにとって何よりの安心材料ではないでしょうか。
消化器の気になる症状があればいつでも受診を
こちらでは、どのような消化器疾患の診療が可能ですか？
病院勤務時代は潰瘍性大腸炎やクローン病などの難病も手がけていましたが、そのような症例をクリニックだけで継続的に診ていくことは得策ではないと考えています。必要に応じ、速やかに専門の医療機関をご紹介して早期治療に努めます。逆に身近な消化器疾患に関しては、当院でもしっかりと診断や治療が可能です。例えば逆流性食道炎の場合、胃の具合が悪い、みぞおちが痛いなどに加え、意外に見落としやすいのが喉の症状です。胃酸が喉元まで上がってきて、喉に異変を感じたり咳が出たり、そうした症状が逆流性食道炎の治療によって改善につながることもあります。逆流性食道炎の原因は食の欧米化、肥満による胃の圧迫、加齢による筋力の衰えなどが挙げられます。最終的な診断には胃カメラが必要になるケースもありますが、いずれにしても気になる症状があればいつでも受診してください。
ほかにも身近な病気や症状があれば教えてください。
女性に多く、加齢につれて起きやすくなるのが便秘症ですね。便秘薬にもいろいろな種類がありますから、それを適切に使い分けることが重要です。昔ながらの刺激性の便秘薬は、腸を動かして無理やり便を押し出すようなイメージで、飲み続けると癖になって次第に作用しにくくなることも。できれば酸化マグネシウムなど、便をやわらかくする目的の非刺激性の便秘薬から試していただき、それでも出ないという場合に刺激性の薬を一時的に服用するのがベターです。最近は市販薬でも非刺激性の薬がありますが、できれば病院を受診した上で医師の処方を受けたほうが良いでしょう。
診察で心がけていることはありますか？
単純にイエス、ノーで終わるような質問ではなく、なるべく患者さんに症状を言ってもらえるように問いかけることです。おなかが痛いとおっしゃる方には、いつ頃から、どの辺りがどのように痛いのか、なるべく患者さんの言葉から聞き出すことが大切です。じっくりと患者さんの言葉に耳を傾けることを大切にしたい一方で、患者さんの数が多いこともあり、お待たせしてしまうこともあります。あまり待たせてしまっては申し訳ないですが、かといって流れ作業でもいけない。開業医は初めての経験なので、そのあたりのバランス感覚がなかなか難しいと感じています。なるべくスムーズにできるよう努めますので、今はどうかご理解いただければと思います。
専門性を生かしながら地域に貢献していきたい
ご多忙のようですが、休日はどのように過ごされますか？
うちは4人家族で、休日はみんなで近所の公園へ出かけて過ごすこともあります。妻とは山口県で知り合い結婚しました。妻は臨床検査技師をしていましたが、今は子育てをしながらクリニック業務も手伝ってくれています。子どもは小学1年生と幼稚園児の息子が2人。開業の件があり一家4人で関西に住むことになりましたが、上の子が小学校に入る直前でしたから、転校にならない今のうちということで早々に引っ越しを決めました。山口県の病院にいた頃、私が仕事する姿を子どもに見学させたことがありました。病棟を回診するのを後ろからずっとついてきて、ちょっと良いところを見せられた気がします。そのうち、医師になりたいなんて言い出すかもしれませんね。
今後に向けた展望や計画があれば教えてください。
2022年9月に電子カルテを導入する予定ですので、まずはそれが落ち着いてから徐々に次のステップに移っていきたいと考えています。将来的に、胃カメラはぜひ導入したいところです。カメラ自体の性能もさることながら、検査では操作する医師の技量が試されます。喉元に刺激を与えないようにカメラを挿入する技術など、それこそ私たち専門の医師の腕の見せどころ。「先生のカメラはつらくなかった」と患者さんから言われれば非常にうれしいですね。また、注意が必要なのは診断時の見落としです。一見すれば問題なさそうでも、なんとなく怪しい。それを直感でも気づくことができれば、精密検査をすることで深刻な事態に進展することはないでしょうから、これまでの経験を生かすべく、なるべく早い時期に検査体制を整備して上部消化器疾患の早期発見・治療に努めていきたいです。
地域の皆さんへ向けたメッセージをお願いします。
前任の先生のもとへ大勢の患者さんが通い、信頼関係を構築していたことを知るにつれ、地域との関わりという大切な役割を強く実感します。今は少しバタバタしていますが、まだまだ始まったばかり。自分のやりたい医療に焦ることなく、まずは皆さんに教わりながら、少しずつ自分のカラーを出していきたいです。また、新患の方も遠慮なく気軽に相談にお越しください。できることは全力でさせていただきますし、もし専門外や難症例の場合でも、近くには河内総合病院や市立東大阪医療センターなど基幹病院があります。今後は地域連携の絆をさらに深め、皆さんに最適な医療への橋渡しもしていきたいと考えています。皆さんのご期待に添えるよう精いっぱい励んでいきますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
