たまさかい皮フ科クリニック (町田市／多摩境駅)
芳賀恒夫 院長の独自取材記事
昨年の4月、京王線多摩境駅の目と鼻の先にあるクリニックモールにオープンした「たまさかい皮フ科クリニック」。白を基調としたやわらかな日差しが差し込む開放的な院内は、来院者の半数に当たる0歳から中学生までの子どもを意識したものだという。院長の芳賀恒夫氏は、控えめで穏やかな話し方が印象的な長身の医師だ。しっかりと目を合わせ、一つ一つの質問にも丁寧に応じてくれる様子からは、誠実な人柄がうかがえる。父に影響をうけ、歩み始めた医師の道。大学病院での10年を超える勤務医時代に身につけたしっかりとした基礎を生かし、皮膚科のなかった地域の病気を一手に引き受ける。「地域に根付いたクリニックとして息の長い診療をしていきたい」と語る芳賀院長に、診療方針やこれまでの経緯を伺った。
来院者の半分が子どもという地域に開業して
とても明るくて過ごしやすい待合室ですね。クリニックをオープンされるときにはどのようなことを意識されたのですか？
内装は、差し込む光に明るく映えるように白を基調としました。待合室はソファなどを温かみのあるオレンジにして、診察室は青で統一しました。お子様がとても多く来院されるので、床は木目調にし、お手洗いにはオムツ替えシートを設置しています。2013年の4月にオープンし、地域の皆様のおかげで１年を迎えることができました。
どうして多摩境で開業しようと思ったのですか？また、患者層はどのような方が多いのでしょうか？
多摩境駅は、以前に働いていたクリニックまでの通勤途中にある駅でした。当時、同じクリニックで働いていた看護師さんが、このエリアには皮膚科がなくて困っている患者さんがとても多いと教えてくれました。いざ開業してみると本当にファミリー層の多い地域で、思った以上に多くのお子さんが来院されました。今では半数以上が赤ちゃんから中学生くらいのお子さんたちです。それ以外はお父さん、お母さん世代が3割、ご高齢の方が2割程です。バリア機能ができあがる前の肌はとてもデリケートなので、乾燥肌やアトピー性皮膚炎に悩まれているお子さんは多いですね。最近は季節柄、虫刺されをかき壊してとびひになってしまうお子さんがよく来られます。
自由診療も充実しているのですね。
基本的には、患者さんに負担の少ない保険内診療を行っているのですが、要望があればお勧めしています。プラセンタなどの美容注射も自由診療なのですが、皮膚の再生が促されるので、手荒れに悩む美容師さんや主婦の方にも喜ばれています。また開業時には、光治療で肌質を改善できる機械を導入しました。これは隠れたしみや小じわに働きかけたり、肌質や色調を改善するのに役立ちます。レーザーと違って施術後すぐにお化粧をしていただけるので、患者さんの負担が少ないのが特徴です。それ以外では、塗ることで肌の新陳代謝を促進してしみを薄くし肌にハリを与える化粧品や、ニキビ肌のためのスキンケア商品なども取り扱っています。
どんな皮膚の相談でも受けられるジェネラリストをめざすまで
診療で心がけていることはどんなことですか？
お子さんたちはとても賢く、小さなお子さんでも、話してみるとわかってくれることがとても多いです。そのため、できるだけ本人にお話しをさせていただき、その上で保護者にも説明するようにしています。また、治療は患者さん本人の協力が不可欠です。薬を使ってもらえなければ治りません。そのため、なるべくわかりやすい言葉で説明し、ご理解頂けるよう考えています。また勤務医時代に、天疱瘡（てんぽうそう）という体に水疱ができる病気で入院された患者さんがいて、薬を飲んでも口の中の水疱だけが治らないことがありました。どうしてそこだけ治らないのかと不思議に思っていたのですが、その患者さんが硬い煎餅を食べているのを見つけて驚いた経験があります。口内トラブルのある時に硬いものを食べるとは思っていませんでしたので、そこまで説明はしていなかったのですが、それでは駄目なんですね。医師と患者さんの常識というのは、思った以上にギャップがあるものです。あれ以来、可能な限り患者さんの生活スタイルをお聞きして治療をするように心がけています。
先生が医師をめざされるまでの経緯を教えてください。
福島県の会津地方で生まれました。とても豊かな自然に囲まれた地域で、野山を駆けずりまわって元気に遊んでいました。医師をめざそうと決めたのは、大学の進路を決める段階になってからです。幼い頃股関節を痛めて長いこと入院していたときの、白衣姿の医師の姿が思い出され、自分もああいう仕事がしたいと思ったのです。薬剤師だった父の勧めもあり、聖マリアンナ医科大学の医学部へ進みました。
皮膚科医になろうと思ったのはなぜですか？
皮膚科に進むことを決めたのは大学卒業間際でした。いろいろな魅力な科があり、選ぶのは難しい事でした。ただ、父はとても皮膚病に興味のある薬剤師で、皮膚の病例写真を横目に食事をするような家庭環境だったんですね。その時父が「こんな病気を治せるのはすごいことなんだぞ」と言っていて、それが自分の中ですごくポジティブな印象として残っていたんですね。それで、「皮膚のジェネラリストになろう！」と決めました。
地域の人に長く愛されるクリニックをめざして
10年以上もの勤務医経験の中で、忘れられない患者さんはおられますか？
大学卒業後も聖マリアンナ医科大学で研修を行いました。卒後いろいろな科を研修してから進路を決める今と違い、1年目はずっと皮膚科で過ごすことができ、2年目になって救急や麻酔科、総合診療内科などを経験しました。大学病院ではありましたが、皮膚というのは他の診療科に比べると死を意識するような症例はずっと少ないものです。ですが、私がまだ経験の浅かった頃に、とても若い患者さんが壊死性筋膜炎という重い皮膚病で入院されました。これは致死率のとても高い病気で、救命のために足を切断しなければならないこともあるんですね。あの時は皮フ科だけでなく、他科の先生達と連携し、結果として救命することができたんですね。私はまだまだ新人の医師でしたが、退院したときにその患者さんが私の名前をきちんと呼んでくださって「ありがとう。芳賀先生のおかげです」と言ってくれました。本当にうれしかったですね。こうした大学病院での勤務経験から、当院で治療すべき患者さんなのか、大学病院を紹介すべきなのかの判断に裏付けができました。めざしていた皮膚のジェネラリストになるために、とても必要な経験だったと思います。
休日の過ごし方を教えてください。
9歳の娘がいて、平日は娘の就寝後に帰ることも多いので、その分休日には近所の公園でバーベキューをするなどよく遊びます。草野球チームにも入っているので、そこで過ごすこともあります。またお酒が好きなので、ご飯を食べに出かけることも多いです。
読者へのメッセージをお願いします。
当クリニックは、長く地域の方々に頼られる息の長い診療をめざしています。病院というと、病気を治すというイメージが強いために、「このくらいのことで行っては申し訳ない」などと思われる方も多いようですが、実際は重くなる前の段階で来ていただける方が、ずっと早くに完治できるんですね。だから「少し肌が乾燥するから病院へ行こう」とか、「この子って何となく肌が弱いから病院へ行こう」という具合に、ちょっとしたことでも気兼ねなく相談していただけるような環境を整えていきたいです。よく聞かれるのですが、お子さんが微熱で肌に発疹ができていた場合などに、小児科へ行くべきか皮膚科に行くべきか悩まれると思います。皮フに症状がある場合には、皮フから診断がつく場合もありますので、とりあえず皮フ科に来て頂いて結構です。当院のビル内には小児科クリニックなどもありますから併診することも可能ですので、安心してお越しください。
