あいざわ歯科医院 (江東区/亀戸駅)
相澤 正之 院長の独自取材記事
JR総武線亀戸駅より徒歩5分という通いやすい立地の「あいざわ歯科医院」。義歯や噛み合わせ治療に情熱を注ぐ院長の相澤正之先生は、その場しのぎではない根本的なアプローチを心がけ、患者の生活を快適に理想に近づけたいというモットーで入れ歯を作ってきた。自由診療が多くはなるが、それに十分に見合う価値を提供したいという、こだわりや思いを語ってもらった。
快適さを追求した義歯を作り、患者の生活を支えたい
ここ数年で、患者さんの意識は変わられましたか?
そうですね。当院は入れ歯治療が主ですが、その準備段階として噛み合わせ治療や歯周病対策もとても重要です。その中で、もともと歯をなくして入れ歯を必要とする元となった原因に対してアプローチしないと、入れ歯だけを作り直しても不具合を繰り返すことになると思っています。以前には「歯がなくなったところに入れてくれればいい」とだけ言われる患者さんも少なくありませんでしたが、今はトータルで治療させてくださる方が増えました。歯がなくなるというのは、それ自体が病気なのです。それを認識してもらい、入れ歯を入れる前段階で「これ以上、歯をなくさない」という意識でトータルの治療に入っていただけるのは良いことです。
入れ歯を作られる患者さんは、どのような方ですか?
今入れている入れ歯に何らかの不満をお持ちで、当院にいらっしゃる方がほとんどですね。痛くて噛めない、うまく食事ができないなどと言って来られます。そうした訴えに対して、当院ではよく噛めるというのは最低限のベースと考え、その入れ歯を入れて外出したくなるような、はつらつとした気持ちを引き出せるような快適な入れ歯の提供に努めています。例えば、噛むたびに痛いと、食事に誘われても楽しめず、断るうちに引きこもりがちになってしまいますよね。外に出たくなる理由は、人によって食べやすさ、話しやすさや見栄えの良さなどいろいろあるでしょうが、快適さを追求した義歯をお作りすることでそれを支援したいと考えています。
快適さを追求すると、どのような義歯になるのでしょう。
自費診療になりますが、フルオーダーメイドで、その方の顎や噛み合わせの状態に合わせてお作りしていきます。歯がなくなるのには原因があったはずですから、その過程において顎や筋肉、関節がずれてしまっていないかをしっかり調べます。筋肉というのは、お口の周りの筋肉もですが、顎を動かす筋肉も重要ですね。顎の骨というのは頭蓋骨に筋肉でぶら下がっていますから、その顎がずれるということは、筋肉が左右同じ運動ができていないということになります。その左右非対称な状態をある程度まで調整することが必要な場合もあるわけです。
2段階の義歯で満足度にアプローチ
総入れ歯の理想的な作り方というのはありますか?
ここに歯が並んでいれば歯がなくなることはなかったであろう場所に、入れ歯の歯を並べるのが基本です。骨に差し込むインプラントと違い、入れ歯はお肉で支えるものなので、安定という意味で比べれば弱い物ではあります。その分精密にお作りしないと、ゆがみが出てきたときにどうしても痛みにつながってしまうのです。ですから当院ではフルオーダーメイドで、患者さんの筋肉や顎の動きに合わせた入れ歯をお作りしています。例えば型を採るにも、従来のやり方では口を開いた状態でお肉の型を採り、歯科医師のほうで頬を引っ張ったり舌を動かしたりして入れ歯の大きさを決めていくものです。でも、それはその方の動きではありません。当院ではお口を開けたり閉じたりして、また患者さん自身に動いていただいて、特殊な機材でその動きを型に採っていきます。
その人本来の動きに合わせて作られるのですね。
そうすることで、その人に合った入れ歯が作れるわけです。ただし、顎や噛み合わせのずれを完全に解消するというのは難しいものです。そこで、大幅に調整が必要な時には前段階として、リハビリテーション用の入れ歯をお作りします。まず正しい位置で噛むことができるようにリハビリをし、慣れてきたら最終品の入れ歯を入れるという2段階になります。入れ歯の形は、リハビリ用も最終品もほぼ同じですが、リハビリ用は歯の素材が少し特殊なもので、それで訓練していただいて顎や噛み合わせのずれを調整していくことになります。訓練とはいっても筋トレ的なものとは異なります。リハビリ用の入れ歯を24時間、普通に使っていただくだけなので、使用感として負荷がかかるようなものではありませんから。ずれの度合いにもよりますが、リハビリ用の使用期間は1ヵ月から半年というところです。
噛み合わせは重要な問題ですが、そうやって調整をめざすのですね。
ただ、噛み合わせだけを整えても、背中が曲がっていたらきちんとは噛めないかもしれません。背筋を伸ばす練習もしていただければと思いますね。ですから歯の治療であっても、足を組まないようにといった生活習慣のご注意もしていくことはあります。とはいえ、人間は右利き・左利きがあり二足歩行である以上は何らかのゆがみ、ずれは生じるものです。歯科医師として入れ歯を作るときに「ここで噛んでほしい」というポイントはあるのですが、その方の体がそれを許さない場合もあるんですね。そうすると、妥協点を見つけていかねばならないのですが、そのために徐々にずれを調整していく目的でリハビリ用の入れ歯を使用します。その方の「今」の体の状態でここで噛めればというところを決めて、そこに入れ歯を作ってあげるということですね。首から上だけを見て作るのでは、入れ歯は駄目なんです。体に合っているかが大切です。
オーラルフレイルが進む前に早期の入れ歯治療を
入れ歯を使われる患者さんは、熟年層以上の世代ですか?
30代から使われる方もいらっしゃいます。そうしたお口になってしまうのは、その方の幼児期にご家族がしっかりケアができていたかどうかも関係しています。つまり、正しい歯磨きと歯科に通うという習慣づけですね。口腔内というのは生まれた時には無菌状態ですから、親御さんとはお箸を分けるのは良いことです。若い女性ですと、過食などで吐いたりするうちに胃酸で歯がむしばまれてしまうケースというのもあります。歯磨きも歯科への通院も、習慣づけていただきたいですね。虫歯も歯周病も、風邪などの感染症のように外から菌が入ってきて起こるのではなく、口内にいる菌によって起こるものです。それでも罹患する人しない人がいるというのは、歯磨きと通院の問題が大きいのではないでしょうか。
歯磨きと通院の習慣づけが大切なのですね。
実際、当院に入れ歯を作りに来られる患者さんは60代が多いでしょうか。団塊の世代は一心に仕事をされてきて、歯科に通う余裕はなかったでしょう。リタイアして時間ができたところで、きっちりと治したいというお気持ちは十分に理解できます。その分を取り戻すためにも、一度、きちんと噛むための義歯を作っていただき、生活全般を健やかに過ごしていただきたいですね。作った入れ歯については私自身の自己満足ではなく、患者さんからの評価を第一義的に考えねばと肝に銘じています。そのためにも、当院ではアンケートを取っています。作って最初の3ヵ月で満足を高めることができれば、あとはもう快適に使い続けていただけると考えています。入れた時のフィット感が爽快で、「使っていこう!」と患者さんに思ってもらえれば最高ですね。
最後に、患者さんへのメッセージをお願いいたします。
高齢者の患者さんもたくさんいらっしゃるので、入れ歯などの歯科治療をなるべく元気なうちに完了させておくことをお勧めしています。なぜなら今、筋力の低下により口の機能が衰える「オーラルフレイル」が高齢者に増えているからです。オーラルフレイルが進行して噛む力や飲み込む力が衰えると、たとえ介護者に食事介助をしてもらったとしても、食べ物を喉に詰まらせてしまうといったリスクが高まります。食事をすること自体が危険なケースもあり、そうなってからでは治療は困難を極めるのです。だから、私はオーラルフレイルが進行する前に、早めに入れ歯を入れて差し上げたい。入れ歯によって長く噛める状態を保ち、健康に生きるお手伝いをすることができたら、これ以上うれしいことはありません。