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成増産院 (板橋区/地下鉄成増駅)

田村 彰浩 理事長の独自取材記事

東武東上線成増駅、東京メトロ副都心線と有楽町線の地下鉄成増駅から徒歩数分の「成増産院」。1963年開業の歴史ある病院で、地域の産婦人科医療を支えてきた。田村彰浩先生は同院の2代目の理事長。前任・榑松和夫先生の意志を継ぎ、2002年より理事長に就任。開業当時から現在に至るまで同じ建物ではあるものの、改装が加えられ、歴史を感じさせない清潔感のある明るい雰囲気。「休日は愛犬と一緒に運動をしています」と話す田村理事長は、何でも相談したくなるような優しい笑顔が印象的だ。一転、命に関わる出産のこととなると一つ一つ真摯に答える表情は頼もしく、生涯にわたり頼れる医師だと信頼を寄せる患者が多いのもうなずける。そんな田村理事長に、診療に込めた思いを聞いた。

産婦人科医師は女性の一生を支えていく素晴らしい職業

はじめに、医師をめざしたきっかけを教えてください。

父が九州で産婦人科の開業医をしていたのですが、私には父と一緒に遊びに行ったり旅行をしたりした記憶がありません。お産は昼夜を問わず、その上父は勉強熱心な人だったので、プライベートな時間、つまり私と過ごす時間が確保できなかったのですね。幼い頃からそんな父の背中を見て育ち、尊敬の念を抱いていました。だからといって、医師になりたいと思うことはありませんでした。ましてや、多忙な産婦人科の医師になるのは絶対に嫌だとさえも思っていましたね。私が大学へ入る前に父が心筋梗塞で倒れ、救急車で運ばれるとき、自分の診ている患者さんたちを将来的には私に診てほしいと希望していました。そこで「医師にならなければ」という、ある種の使命感のようなものが生まれたのだと思います。

そこで、産婦人科の医師をめざすことになったということですね?

父の言葉が医師をめざすきっかけにはなりましたが、その地点で産婦人科の医師になろうとは思っていませんでした。帝京大学の医学部へ進学し、5年生の時には自分が何科へ進むかを決めるのですが、最初は産婦人科を候補には挙げていませんでした。当時の臨床実習は各科全てを回るもので、もちろん産婦人科も回りました。そこで気づかされたことは、産婦人科の医師は新しい命を取り上げる一方で、死の場面に立ち会うこともあるということ。そこで、産婦人科の医師は大変かもしれないけど、女性の一生を支えていく素晴らしい仕事なのかもしれないと気づかされました。女性にとって、幼少期は産婦人科とはあまり縁のないものですが、それ以降はずっと縁のある科ですからね。

貴院の歴史を教えてください。

当院は、前の理事長である榑松先生が1963年に開業しました。当時から産婦人科単科のでの病院(20床以上の入院施設を持つ医療機関)は都内でも珍しく、当院ではこれまでに約5万人の赤ちゃんが誕生しています。親から子、子から孫へと3世代にわたり当院とお付き合いしてくださる方も多く、榑松先生は地域医療に深く根差した病院を作り上げてこられました。私は大学生の頃から当院に縁があり、榑松先生から意志を継いでほしいと言われ、もともと東京は私の父の出身地で周りに親戚が多かったこともあり、引き受けることにしました。2002年に理事長に就任してからは、榑松先生が作り上げてきた歴史を大事にしつつ、時代の流れに合わせて病院内外装に少しずつ改装を加えてきました。患者さんがリラックスできる病院づくりに努めています。

一番大事なことは、安心安全な医療を提供すること

こちらへ来院される患者さんは、お産をされる方がメインでしょうか?

ほとんどの患者さんがお産で来られます。そのため、4D超音波など産科に関わる先端の機器はできるだけ導入するようにはしています。もちろん、婦人科や不妊治療、更年期障害などで来院される患者さんもいらっしゃいます。地域に根差した医療を提供するためには、婦人科も含め全般を幅広く診られることが使命だと思っているので、産婦人科全体をカバーできるような機器を導入したり、私を含めスタッフへの教育や修練を徹底しています。手術に関しては帝王切開、母体保護手術、婦人科手術ならポリープの切除やバルトリン腺嚢腫など全身麻酔が不要なものに対応しています。

不妊治療にも対応していらっしゃるのですね。

最近は不妊で来院される方も増えてきましたね。不妊には何らかの原因があるのですが、まずはそれを明らかにし、それぞれに最適な治療をしていくことが重要だと考えています。当院では、まずはホルモン検査や子宮卵管造影などの検査で原因を追究し、タイミング法や人工授精などの治療を行っていきます。不妊治療が長期間に及び、患者さんが経済的負担を感じることもあるので、できるだけ保険適用範囲内での治療をと考えています。その後ステップアップは人工授精まで対応していますが、それよりも高度な治療が必要になる場合は他の病院をご紹介します。不妊治療に関してはクリニックの雰囲気や医師との相性を重視される患者さんも多いので、できるだけご本人の希望にあった所をご紹介できるよう努めています。

先生が診療するにあたり、大切にされていることは何ですか?

まずは患者さんとの信頼関係をつくることが大事だと思っています。そのためにはコミュニケーションをとることが重要ですね。世間話から始まり、ついつい話が長くなってしまうこともあるのですが、それも信頼関係づくりには欠かせないことだと思っています。一番重要なことは、患者さんが安心して治療や出産に臨み、出産の場合なら母子ともに安全に出産を終え、元気に退院していくことです。そのためには、信頼関係はもちろんのこと、リラックスして治療や出産に臨めるような環境を作っていくことが私たちの使命でもあると思っています。それを持続的に可能にしていくために、当院では資格取得の奨励や教育、修練などさまざまな取り組みを行っています。

生涯にわたり頼れる医師・病院であるために

安心安全な医療を実現するにあたり、どのような取り組みをされているのでしょうか。

当院は医療法人のため、委員会などの設置が義務づけられています。医療安全や院内感染などさまざな委員会を設置し、安心安全な医療を実現するために活発な活動を実施しています。また、当院スタッフのほぼ全員が新生児蘇生法の講習を受けて認定されています。生まれたばかりの赤ちゃんに何か異常があったときは、すみやかな対処が求められます。そういった資格を生かし、さらにはさまざまなケースを想定した訓練を行うことで、どんな場面にでも対応できるように備えています。それから、産後のケアに関してもいろんな取り組みを行っています。リフレクソロジーのプレゼントや、4月からは産後サロンや、専門家を招いての乳房ケア専門の外来の開催を予定しています。

これから出産を控えている方にとって、何か心強いものを感じますね。

今は高齢出産が増えてきて、それに不安を感じている方も多いと思います。それを解消するために、私たちは日々進化する医療を常に学び続け、さまざまな取り組みをしています。ただ、どうしてもリスクは伴います。それを共有していくのが私たちの務めだと思っていますが、そのリスクを私たちが抱えきれないものだと判断したときは、安全な出産が第一だと考えているので、連携する病院へご紹介します。出産には大変な痛みを伴い、それを自分で乗り越えるしかないのですが、それに対してのサポートはしっかりします。もし危険に直面した場合は、当院が連携をとる帝京大学医学部附属病院・日本大学医学部附属板橋病院などの総合周産期母子医療センターへとご紹介することができるので、安心して頼ってほしいと思います。

読者へのメッセージをお願いします。

最近よくニュースなどでも取り上げられていますが、「産後うつ」にかかってしまう方が増えています。核家族であったり、周りに頼れる人がいなかったりと、どうしても孤独を抱えてしまうのでしょうね。もしも悩みがあってつらいのなら、近くにいる人や自分が出産した病院、他の病院でもいいので、とにかく早く相談することが大事です。行政でも対応する窓口があるので、保健師さんが相談に乗ってくれたり訪問してくれたりと、何かしらお母さんを救ってくれるところはあります。一人で抱え込み、内に内にとこもらずに、自分の苦しみを一刻も早く“外”に知らせることが大事です。赤ちゃんはお母さんを選んで生まれてくるのです。それと同時に赤ちゃんが頼れるのはお母さんだけなのですから。

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