玄和堂歯科診療所 (目黒区/学芸大学駅)
寺師 史峰 院長、関 洋一郎 先生の独自取材記事
学芸大学駅東口から徒歩2分ほどのにぎやかな商店街の一角にある「玄和堂歯科診療所」。2024年12月に開院した同院は、一般歯科、小児歯科、矯正歯科、歯科口腔外科を標榜し、寺師史峰院長を含めて合計7人の歯科医師と医師が在籍する。歯科医院でありながら医師が在籍する理由は、院内で行う手術に麻酔科の医師が立ち会うためだ。矯正歯科を担当するのは、東京医科歯科大学大学院出身で矯正歯科を専門に27年のキャリアを持つ関洋一郎先生。寺師院長と関先生に開院の経緯やクリニックの特徴について聞いた。
歯科口腔外科のエキスパートがオペ室を活用
寺師院長のご経歴と開院の経緯を教えてください。
【寺師院長】川崎の「医療法人社団博誠会久世歯科医院」に約10年勤務し、そのうち5年は分院で院長を務めました。勤務先は分院が5件あり、高度な治療が行えるオペ室を備えた分院と専門の歯科医師が複数在籍しておりました。将来は同様の設備と人員を整え、専門的な治療を行える医院の開業を考えておりましたが、現実には非常にハードルが高く、専門性を持つ歯科医師の確保や物件選定に時間がかかり、2024年度ようやく開業にいたりました。現在、当診療所には麻酔科の医師立ち会いのもとで手術が可能なオペ室を設けております。歯科の基準では手術時に心電図は必須ではありませんが、日本麻酔科学会麻酔科専門医の監修のもとに設計されたオペ室には、心電図をはじめとした医療機器を完備しております。また、院長以外に6人の経験豊かな専門性の高い歯科医師が在籍しております。学芸大学駅周辺は私の出身地であり、なじみ深い土地での開業となりました。
麻酔科の医師立ち会いのもとで手術をするメリットは何でしょうか?
【寺師院長】麻酔の知識のある歯科医師はたくさんいますが、全身麻酔で起こり得るさまざまな事態に対応できるのは、やはり麻酔科の医師だと思います。開院に向け、麻酔科の医師にはオペ室の設計についてアドバイスを求めました。また、彼の意見を取り入れてつくったのがリカバリールームです。麻酔をして処置が終わった患者さんが1時間ほど待機する場所で、最初はプライバシーを配慮した個室を考えていましたが、むしろ誰からも見えるようにしないと患者さんの状態の変化に気づけないとアドバイスを受けました。また、吐いた物が喉に詰まることがないよう、寝かせずに座らせることが大事だと。それらの助言を反映し、見通しの良い空間にベンチを置いたリカバリールームが完成しました。
オペ室を設けた理由と、どのような治療でオペ室を使うのか教えてください。
【寺師院長】前職で口腔外科の処置を担当することが多々ありましたが、オペ室を備えていた職場がゆえに、一般的なユニットで静脈鎮静などを行う際に両者の利便性の差を痛感していました。一般的なユニットでは歯科医師を含めたスタッフが増えた際に、動線の確保、機材の配置の大変さを感じており、ゆとりのある設計がとられたオペ室の恩恵を実感していたのです。また、当院には専門家が複数在籍しています。彼らが普段勤めている大規模病院に準じた設備配置と動線を整えることで、治療時の違和感を軽減し、結果として短時間で処置を終えて、患者さんの負担を減らせる環境をつくりたい。そう思っていたこともオペ室を備えた理由の一つです。現在、オペ室は親知らずの抜歯やインプラント治療の手術時はもちろん、矯正治療や、全身疾患があり生体モニターの装着が必須で複数のスタッフが必要な治療時にも多用しており、手術時以外にも大いに活躍しています。
東京医科歯科大学出身のベテラン歯科医師が矯正を担当
関先生のご経歴と、こちらで矯正を担当することになった経緯を教えてください。
【関先生】東京医科歯科大学を卒業し、同大大学院で生理学の研究をしました。卒業後は「医療法人社団博誠会久世歯科医院」に勤め、そこから独立した歯科医師のもとでも矯正を担当するようになり、今は神奈川や東京の歯科医院で治療をしています。当院も同じケースで、寺師院長は医療法人時代の同僚であり、10年以上の付き合いになりますね。
こちらでは、どのような矯正を選択できますか?
【関先生】ワイヤー矯正とマウスピース型装置を用いた矯正に対応しています。近年、歯科業界では、矯正を行ったけれど希望した状態にならず、矯正専門の歯科医師がいる歯科医院で再度やり直すケースが増えており、問題になっています。矯正を専門とする歯科医師はワイヤーの施術ができ、これは何年も訓練しないと会得できないものです。ワイヤー矯正は毎月ワイヤーを着け直すことで状況を見ながら微調整を行える点がメリットです。例えば、マウスピース型装置を用いた矯正を始めて、途中からワイヤー矯正に変えるなど、患者さんが望むゴールに向けてフォローしていける点が、矯正を専門とする歯科医師の強みだと思います。
複数の歯科医院で矯正を担当する関先生が感じるこちらのクリニックの特徴や強みは何ですか?
【関先生】一つは歯科用CTがあるところです。歯の根の部分が顔の骨の中にきちんと収まり、安定することをボーンハウジングといいます。歯科用CTは、歯の根が骨の中に納まっているかどうかを見ることができ、現代の矯正には不可欠な機材です。矯正には、抜歯せずに歯を大きく動かすための方法があるのですが、その場合、歯の根の部分が骨から外れた場所に行ってしまわないかどうか、歯科用CTを撮ることで予測しやすくなります。よほど軽度なケースは別ですが、なるべく歯科用CTを活用して口腔内の状況を確認しながら診察しています。また、矯正のために抜歯が必要になったり、通院中に虫歯が見つかったりしても、紹介状を持って他院に行かずに当院で処置できるところも大きな強みですね。
一般歯科の他、各治療の窓口となるのが院長の役割
寺師院長はどのような治療を担当されていますか?
【寺師院長】私は一般歯科を担当しています。経験を積んできた分野は虫歯治療や根管治療、入れ歯治療です。一般歯科では9割が保険診療です。理由は患者さんの負担が少ないから。使える素材は限られますが、その分丁寧に時間をかけて治療します。診察の際は患者さんとコミュニケーションを取り、患者さんの心配事を聞き出せるよう心がけています。症状や治療について説明するときは、エックス線画像を見せ、さらに絵で説明する場合も。どこに神経があってどこに虫歯があるのか、歯周病の治療についてなど、絵を描いて説明したほうが患者さんにも伝わりやすいと思いますからね。
矯正や口腔外科の治療を希望する場合はどうすれば良いでしょうか?
【寺師院長】私が窓口になり、矯正なら関先生、インプラント治療はこの歯科医師に、口腔外科なら症状によってより専門性の高い歯科医師に担当してもらうよう割り振るので、どのような治療を希望するにせよ、最初は私がお話を伺います。なお、侵襲の大きい外科処置や歯科恐怖症の方などを対象にしたセデーション麻酔にも対応しています。当院では麻酔科の医師が担当いたしますので、あらかじめ日程調整が必要となります。ご希望の場合はご相談ください。
各分野を専門とする歯科医師たちを寺師院長から一言ずつご紹介ください。
【寺師院長】矯正を担当する関先生は人柄が良く、勉強家。麻酔科の古賀先生は目の前の患者さんのためなら親身に動いてくれるような方です。口腔外科の米山先生と口腔外科やインプラント治療を専門とする濱本先生は、施術の専門家。以前、米山先生が担当する手術を見る機会がありましたが、安定した技術力がありますね。濱本先生も、私がこれまで見てきた口腔外科の歯科医師の中で、安心して患者さんをお任せすることができるなと思っています。彼はインプラント治療の経験が非常に豊富ですし、口腔外科では交通事故の外傷の治療なども担当していました。当院では、大学院を卒業していたり、15年以上の臨床経験があったりするなど、専門的な歯科医師がそろっていますよ。
今後の目標と読者へのメッセージをお願いします。
【寺師院長】めざすイメージは、専門家が集まった小さな大学病院です。地域の方はもちろん、これまでいくつもの歯科医院を渡り歩いてきた患者さんも、安心して長く通える場所になればいいなと思っています。親知らずの抜歯ならあそこへ、矯正ならあそこへと複数の歯科医院に通うと時間も初診料もかかりますが、1ヵ所で済めば患者さんの負担も減るのではないでしょうか。地域の皆さまのかかりつけ歯科医院となるべく研鑽しますので、よろしくお願いいたします。