まえ田クリニック (京都市山科区/椥辻駅)
前田 吉宣 院長の独自取材記事
地域の人々でにぎわう商業施設に併設のクリニックモールにある「まえ田クリニック」は、循環器を専門に外科の医師として研鑽を積んだ前田吉宣院長が2024年7月に開業。バリアフリーの院内と充実した検査機器を備え、一般的な内科疾患だけでなく、小さなけがの処置、前田院長の専門分野である先天性心疾患などの手術後の継続治療まで、地域住民の健康維持に必要な医療の提供をめざす。山科区に居を構え地域とともに暮らす選択をした前田院長。「患者さんの小さな訴えを見逃さないクリニックでありたい」と話すその温かな瞳は、愛すべき地域へと向けられていた。
医師として患者の人生に寄り添いたい
開院の経緯を教えてください。
京都府立医科大学を卒業後、大学病院や市中病院の心臓血管外科で小児から成人、高齢者まで幅広い年齢の患者さんの循環器診療に携わってきました。外科ですので手術も多く担当しましたし、とても充実した日々を送っていたのですが、病院で外科の医師をしていると一人の患者さんと長くお付き合いする機会はそれほど多くありません。私は特に小児の先天性心疾患を専門としていましたので、病院での治療を終了した子どもたちがその後どんなふうに成長したのだろうかと、ずっと気になっていました。そんな思いが一つ、また一つと積み重なっていくうちに、残りの人生は医師として患者さんの人生にもっと寄り添っていきたいなと考えるようになりました。その思いが大きく膨らんだところで開業を決意し、今に至ります。
山科は先生にとってゆかりの深い土地なのですか?
山科は私の妻が生まれ育った場所で、今は私たちも住んでいる町です。私は広島県生まれ兵庫県育ち、大学入学を機に京都に来たので、妻のおかげで山科に縁をいただきました。妻とともに何度も訪れるうちに街の雰囲気が優しくて好きだなと思ったこと、また訪問看護師として働いていた妻からこの地域に住む人々の医療ニーズを聞きお役に立てるのではないかと思ったこと、地域に循環器内科がそれほど多くないことから山科での開業を決めました。クリニックのロゴマークは、娘が聴診器と心臓のハートと幸せを運ぶ四葉のクローバーを組み合わせてデザインしてくれたもの。医療を通して地域の皆さんに健康と幸せをお届けできたらいいなと思っています。実際、開院して以来、近隣の方から車・バスで来られる方まで、山科区の患者さんを中心に来院いただいています。年齢層は幅広く、ご家族で来院されることもありますね。
院内はゆとりがあって過ごしやすいですね。
山科は高齢者が多い地域ですので、車いすでの通院も想定して作りました。院内はバリアフリー設計で、エックス線検査室や待合室、トイレは中でもストレスなく車いすで移動・転回できる広さを確保しました。商業施設に併設ですので駐車場も広く、お車での来院にも便利かと思います。また、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスよりも小さな微粒子まで除去できる空気清浄機を設置し、衛生的でクリーンな空気環境を保つと同時に、発熱や風邪症状がある方専用の外来診察室も準備しました。自動精算機を導入していますので、待ち時間の短縮につながることを期待しています。まだオープンしたばかりで物足りないことも出てくるかもしれませんが、患者さんの声を聞き一つ一つ対応していけたらと思います。
充実の検査機器を備え、幅広い症状に対応
設備も充実していますね。
エックス線検査装置はもちろん、心臓や血管を観察できる超音波診断装置、血圧脈波検査装置、生体情報モニターなどの検査機器を備えています。また尿検査や血液検査は即日結果が出る体制を整えています。基本的な血液検査はもちろん、糖尿病の指標であるHbA1cの測定や抗凝固薬をコントロールするためにプロトロンビン時間の測定、感染症や炎症の早期発見に有用な血球計数CRP測定の結果がその日のうちにわかります。また、心筋梗塞の診断や心不全患者のモニタリングに有用な胸痛マーカー・心筋マーカー定量迅速測定装置も導入しています。早期に対処するべく症状を見逃さないよう、検査機器にはこだわりました。
こちらでの診療について教えてください。
私がめざしているのは地域のかかりつけ医ですから、風邪や腹痛などの些細な体調不良やはやりの感染症、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病の管理、循環器疾患、心臓手術後の継続治療など幅広い症状やお悩みに対応していけたらと思っています。外科での経験から、小さな傷の縫合なども対応できますよ。「こんな症状の時はどこに相談すればいいんだろう」と悩むようなことがあれば、ひとまず私たちに相談していただければと思います。必要な際には他の医療機関をご紹介します。また健康診断で異常値を指摘された人に、ぜひ受診していただきたいと考えています。心不全は突然起こるものではなく、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病、腎障害との関連が深い病気です。日頃から体調管理を心がけることが命を守ることにもつながります。「これくらいなら」と油断することなく、早めの受診をお願いします。
小児の先天性心疾患をご専門とされていたそうですね。
先天性心疾患は生まれてくる赤ちゃんの約100人に1人の割合で見られ、心臓や大動脈、肺動脈などの大血管に形成異常や発育異常が起こることで生じる病気です。多くの場合は小児期に手術を含めた手術が行われ、中には生まれてすぐに手術が必要になることもあります。私は外科の医師としてたくさんの小児の心臓手術を経験してきました。患者さんには手術や治療を行う病院や小児科の先生方が既にいらっしゃるとは思いますが、私も先天性心疾患を診てきた医師の一人としてできることがあればと考えています。例えばかかりつけの小児科だけでは不安な場合や、中学生・高校生になりこれまで見てもらっていた小児科への通院に不便を感じるようになった場合、成人になり生活習慣病を併発している場合など、気軽に相談いただければ関連の医療機関と連携しながら診療いたします。
患者とその家族が安心できるクリニックをめざす
診療に際して、大切にしていることはありますか?
これまで患者さんご本人はもちろんですが、小児疾患の診療をする中で患者さんのご両親、ご家族がどんなに心配な思いでいるかを実感してきました。だからこそ、患者さんやご家族には誠心誠意説明し、病気や治療について理解していただけるように尽力しています。また同時に、患者さんとできるだけ話をして会話の中から小さな訴えや不安を拾い上げたいと思っています。ほとんどの人が医療機関では緊張します。落ち着いているように見えても血圧が高くなる人もいるほどです。緊張している中で本当に訴えたいこと、聞いてみたいことを全部伝えられる人はそれほど多くないでしょう。だからまず、私たち医療者は笑顔でいること。そして一人で何でもしようと意気込みすぎず、スタッフが適宜連携してフォローし合えるクリニックでいたいと思います。
先生はなぜ医師を、中でも循環器を選ばれたのですか?
月並みですが、私自身が小児喘息を持っていたため、幼少期から医療機関に通う機会が多かったことが大きく影響しています。自分も含めてつらそうにしている人が、ホッとした顔をして帰っていく姿を見て「自分も誰かのためになる仕事をしたいな」と考えるようになりました。医師になってからは、最初は消化器外科をめざしました。がんなど悪い部分を取り除くための手術に、やりがいを感じたからです。しかし、命を救うためとはいえ体の一部を切除する手術は患者さんの負担も大きいものです。そんな時、心臓の修復をする手術を経験してそのやりがいを強く感じて、心臓血管外科の医師になりました。
最後に地域の方々へメッセージをお願いします。
一人の医師として山科にご縁をいただけたことを心からうれしく思っています。医療機関はなかなか足が向かない場所ですが、健康に日々を重ねていくためには必要な場所だと思います。日常の体調不良はもちろん、生活習慣病や心疾患の管理など、気軽にご相談いただければと思います。また予防接種や健康診断にも対応しています。異常値が出たら受診してくださいね。さらに、より元気に過ごしたい方をサポートする自由診療として高齢者の爪切りなども行っていますので、困り事があればとりあえず相談していただければと思います。これまでの経験を生かし、皆さんの健康をサポートするために作ったクリニックです。皆さんに愛され、頼られるクリニックに成長していきたいと思いますのでよろしくお願いします。