伊藤メディカルクリニック (新宿区/落合駅)
伊藤 幹彦 院長の独自取材記事
東京メトロ東西線の落合駅そばにある「伊藤メディカルクリニック」のテーマは「地域に密着した、地域の人がふらっと入れるクリニック」。伊藤幹彦院長は笑顔で患者の話をよく聞くことを心がけており、患者の不安感を軽減できるよう努めているという。治療プランを立てる時には決して無理強いをせずに、患者の希望を踏まえながら妥協点を模索していく。専門は心臓血管外科で、今でも過去に勤務していた東京警察病院で手術を行う。糖尿病の診断に必要なHbA1cを調べる機器や循環器疾患を調べる血液検査など、診断力を高めるために設備投資も積極的に行ってきた。「患者さんの全身を診て、病気の早期発見に貢献したい」と話す伊藤院長に、診療への思いや取り組みについて聞いた。
地域の人がふらっと入れる身近な存在でありたい
まずはこちらで開業された理由をお聞かせいただけますでしょうか。
こちらにはもともと、父が経営していた歯科医院がありました。私は1993年に東京医科大学を卒業後、八王子医療センター、岩手や新潟の病院、そしてここからほど近い東京警察病院などで心臓血管外科の手術を行ってきましたが、外科の医師には視力や体力が問われますから、そんなに長くやれるわけではないのが実際のところです。私が43歳くらいの頃に父が引退する話が持ち上がったので、ここでの開業を決意したわけですね。こちらは落合駅のそばにありますから患者さんにとっても利便性が高いですし、本当に良い場所で開業ができたと思っています。父から建物を引き継ぐにあたって、内装も一新しましたが、開業から8年たった今でも院内はきれいに清潔に保てているのかなと思います。
現在はどんな患者が来院しているのでしょう。
近くにお住まいの方が中心ですが、私が心臓血管外科、引いては循環器を専門にすることを知って練馬区や埼玉県などの少し離れた所から電車を使って来院される人もいらっしゃいます。東京医大をはじめ東京女子医大や国立国際医療研究センター、東京山手メディカルセンターなど周囲の病院から紹介されて、心臓の手術を受けた方などが経過観察に当院を受診されることもありますね。その一方で、当院の患者さんは50~80代の方が中心ですから、糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病をお抱えの方はやはり多いです。父の代から2代、3代にわたって受診してくれるご家族がいらっしゃるのも特徴でしょうか。父に歯の治療を受けていた患者さんがそのまま私の患者になってくれて、そのお子さんやお孫さんも受診されているんですよ。うれしいですよね。
先生は2010年の開業以来、どんなクリニックをめざしてきたのでしょうか?
それは開業してからずっと変わらなくて、地域に密着した、地域の人が入りやすいクリニックです。今日も「通りすがりに目に入ったから」と来てくれた方がいましたが、そんなふうにふらっと来ていただけるとうれしいですね。私は開業医としての役割を重視していて、まずはどんなお悩みでも耳を傾ける。そして当院でできることは行い、難しそうであれば抱え込まずに速やかにふさわしい医療機関をご紹介する。患者さんが適切な医療を受けるための道筋をつけられる存在でありたいと考えています。
笑顔で話をよく聞き、患者の不安感が和らぐよう努める
診療時に心がけていることをお聞かせください。
笑顔で患者さんの話をよく聞くことです。患者さんは診療時に緊張されていることが多いですから、まずは私が心を開いて「何でも話して大丈夫ですよ」という姿勢を示し、少しでも安心していただくことが大切。私は勤務医時代に手術を受ける患者さんと接してきましたから、この辺りのことはとても意識していますね。手術の前後にちょっと顔を出すだけでは自分の体を預ける患者さんは不安に思うでしょう。忙しい中でもなるべく病棟にいらっしゃる患者さんのもとに行って、顔を突き合わせてお話するようにしていました。そういった経験が開業医の外来にも生きているように思います。
生活習慣病の治療を行うときにはどんなことを意識していますか?
慢性疾患である生活習慣病の治療を行う上で最も重要なのは継続です。生活習慣病は長期間にわたって付き合っていかなければならない病気ですから、患者さんの主体性が問われます。患者さんのモチベーションを高めていくのはたいへん難しいことですが、私が意識しているのは医学的な正解を押しつけず、患者さんの希望を踏まえて妥協点を探していくこと。糖尿病の治療としてインスリン注射を行うのが望ましくても「どうしても嫌」と言われるのであればまずは飲み薬で治療を始めてみる、薬を3回飲むのが難しいのであればまず2回で試してみる、といったように。いくら医師が意見を伝えたとしても患者さんがそのことを理解・納得しないと続きませんから、患者さんの話に耳を傾け、決して無理強いはせずに折衷案を伝えるようにしていますね。その後、経過を見ながら治療が不十分であれば、再度相談しながら薬の調節を一緒にするようにしています。
先生は今でも病院で手術を行っていると聞きました。開業医としては珍しいですよね。
そうかもしれませんね。外科医が開業した場合、完全にメスを置くことが多いですから。当院の患者さんで閉塞性動脈硬化症、動脈瘤などの手術が必要になった場合、状態を見て東京警察病院にお連れして自ら手術を行いますし、心臓手術が必要な場合は信頼のおける以前私も手伝いに行っていたよく知る病院または大学病院へ紹介します。一般的にはかかりつけ医と手術の執刀医は違いますから、こうした取り組みは患者さんに安心感を与えられるものではないでしょうか。血管外科としては、深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)や下肢静脈瘤の治療も行っています。下肢静脈瘤については今はレーザー治療が主体になっているので他院を紹介することが増えましたが、弾性ストッキングを使った保存療法や血管を縛って逆流を止める高位結紮(けっさつ)術、硬化剤と呼ばれる薬剤を注入する硬化療法を行っています。
検査機器を増やして診断力が向上
開業以来、適時、検査機器を増やしているそうですね。
ええ。糖尿病の診断をする際には過去1~2ヵ月間の血糖値の平均を示すHbA1cを調べる必要がありますので、当院では検査時間が5分程となる機器を2台導入しています。また循環器疾患の診断力を高めようと、心筋梗塞や心不全、肺塞栓症にかかっているかがわかる血液検査も新たに導入しました。仮に患者さんが心筋梗塞にかかっていることがわかればすぐに救急搬送することも可能。循環器の病気は症例により死に直結しますから早期にある程度のスクリーニング(選別)をすることがとても重要なんですね。これらの他にも超音波診断装置、動脈硬化の程度を測定する血圧脈波検査装置、肺機能を調べるスパイロメーターもあります。
医師になった理由や休日の過ごし方についてもお聞かせください。
父に影響を受けました。子どもの頃は歯科医院と自宅が一体になっていましたから、働く父の姿が身近で、「いつか親父の後を継ぐんだろうなあ」と思っていたのです。ところが高校3年の受験直前になって父は「歯医者にならんでいい」と。そんなこといきなり言われてもと戸惑いましたが、考えた結果、同じ医療系の医師になろうと思いました。父は口では言いませんでしたが、医師になってほしいと密かに思っていたんじゃないかな。休日は妻や娘と一緒に過ごすことが多いですね。遊園地に行ったり映画を見たり。個人的にはゴルフが好きです。小学生の頃に初めて父のクラブを振り、大学生の頃に本腰を入れるようになりました。日本酒が好きなので、日本酒に合う魚料理を食べに行くのも好きです。娘からは「あまり飲まないで」と止められますが(笑)。
最後に、読者にメッセージをお願いします。
病気は多くの場合に早期発見と早期治療が重要ですから、年に1度は健康診断を受けるようにしましょう。当院では循環器を専門にしつつも、全身を診る診療を心がけています。私の今までの経験と各種機器によって患者さんのご病気を早く見つけられるよう努力したいと考えています。保険診療だけではなく、AGAの治療や低用量ピルの処方なども自費治療も行っているので詳しくは当院ホームページをご覧ください。これらの導入は患者さんのご要望を受けてのもの。今後も患者さんの声をお聞きしながら進化していきたいですね。