いながき内科クリニック (西宮市/香櫨園駅)
稲垣 忠洋 院長の独自取材記事
阪神本線の香櫨園駅から歩いてすぐ、春になると桜の名所としても知られる夙川オアシスロードに2019年5月に開業した「いながき内科クリニック」は、薬剤師から医師に転身したという異色の経歴の持ち主である稲垣忠洋先生が院長を務めるクリニックだ。医師になってからは、厚生労働省の医系技官のほか、病院の勤務医として糖尿病を専門に研鑽を積み、さらに内科診療を幅広く経験するなど、さまざまな方面で活躍。豊富な知識と経験を強みに、開業医として新たなスタートを切った稲垣院長に、薬剤師から医師へ転身したきっかけや、医師としてのこれまでの歩み、クリニックの特色や病気とうまく付き合う方法など、詳しく話を聞かせてもらった。
薬剤師から医師へ、厚生労働省医系技官としての経験も
先生は、薬剤師から医師に転身されたそうですね。
昔から、私はその時やりたいと思ったことを突き詰めてしまう性格なんです。薬学部に進んだのは、高校で進路を選択する時期に生命科学の分野に興味があったから。遺伝子の研究をしようと薬学部に進みました。しかし、薬学の研究はとても地道なんですよ。ですから、せっかちなところがある自分には向いていないなと、現場で患者さんと接する薬剤師になりました。しかし、実際に働いてみると、自分が思い描いていた姿との大きなギャップを感じるようになりました。薬の効き目、患者さんに合っていたかどうか、もっと知りたいのにその情報は薬剤師には十分に入ってきません。だったら自分のスキルアップのために、医師として頑張ろうと思って、医師に転身することを決めました。
医師に転身してからも、さまざまな経験を積まれていますね。
厚生労働省の医系技官として働いたことはとても良い経験になりました。一方で、あまりにも組織が大き過ぎて、現場のトップになって自分がやりたいことをやれるようになるまでには、かなり長い時間を要するという現実に直面しました。そうしているうちに、現場で患者さんと接していたいという思いが強くなり、縁あって勤務することになった相澤病院で、糖尿病治療の面白さに衝撃を受けました。糖尿病は何よりも勉強が大事であること、外科などと違ってスキルの勝負ではないことを知り、だったら糖尿病を自分の専門として突き詰めたいと思うようになったんです。また同時にターミナルケアを含む地域医療に関しても学びを深めました。今思い返しても、どれも今の自分を支える基礎となる時間だったと思います。
開業を決意したのはなぜですか?
相澤病院を退職後、兵庫中央病院、笹生病院で勤務してきました。それらの経験を通して、やはり「自分が考える治療」を実践する病院をつくりたいと考えるようになりました。特に糖尿病は長期にわたって治療が必要な病気ですので、生活習慣の改善も立派な治療の一つです。しかし、習慣を改善するのはとても難しいことなんです。時間もかかりますし、患者さん自身に治療に参加してもらうことが何よりも大切です。大きな病院で働いていると忙しく、なかなかそこまで関わることは難しいので、内科全般を診ながらゆっくり患者さんとお付き合いできる環境を整えたいと開業いたしました。
「家族みんなが気軽に行けるクリニック」をめざす
クリニックの特色を教えてください。
私は日本糖尿病学会糖尿病専門医ですので、まずは糖尿病治療に関してさまざまな取り組みをしているところですね。運動指導や食事指導、合併症を防ぐためのフットケアなど、患者さんの生活に寄り添いながら専門的な糖尿病治療を行っています。同時に、幅広く内科の診療経験も積んでいますので、風邪や頭痛など内科全般の診療も行っています。また薬剤師としての知識もありますので、薬に対する患者さんの幅広い不安や疑問に丁寧にお答えすることも、当院の仕事ではないかと考えています。老若男女問わず幅広い患者さんに来ていただけるような、「家族みんなが気軽に行けるクリニック」になっていければうれしいなと思いますね。
設備も充実し、スペースも広々としていますね。
誰もが気軽に来れるようにと思っていましたので、院内は車いすの方でも通りやすいバリアフリー仕様で、お手洗いのスペースも広く取っています。待合室のスペースもゆったりと取りましたので、感染症の心配も軽減できているのではないでしょうか。また、先進の検査機器を導入しているのも特徴です。指先からのわずかな血液採取でHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)を高精度に測定するための糖尿病検査装置や自動血球計数装置を備えており、すぐに結果をお伝えできます。ほかにも、血液や尿の分析ができる臨床化学分析装置などを導入しています。なるべく待たずに、忙しい人でも通院しやすいように考えていますので、体調が悪ければまずは来ていただきたいです。
糖尿病の治療について、こだわっているところはありますか?
糖尿病は誰がなってもおかしくない病気で、私自身がなってもおかしくない病気なんです。そう考えていくと、糖尿病って、特別な病気ではないんですよ。皆さんの周りにも、糖尿病の方がいらっしゃるのではないかと思います。別に糖尿病だからといって人生が終わるわけではないんですよ。病気は人生のすべてではなく、人生の一部分です。だからこそ、「病気とうまく付き合ってもらいたいな」と考えています。1型糖尿病に関しては初期からインスリン注射が必要ですし、2型糖尿病であればできるだけ早期から生活習慣の改善が必要です。糖尿病のタイプによって適切な治療が必要なので、まずは怖がらず相談してほしいです。そして、一緒にちょうどいい落とし所を見つけられたらと考えています。
患者とともに、良い形の治療方針をつくっていきたい
糖尿病とうまく付き合うために、大切なことは何ですか?
無理をしすぎない、我慢しすぎないということじゃないかと思います。もちろん、運動はしたほうがいいし、食事も気をつけたほうがいい。しかし、あれも駄目、これも駄目となってしまったら人生の楽しみがなくなってしまいます。だからこそ、「ちょうどいい」が大切なんです。今の自分の状態を理解し、自分のライフスタイルを考え、相談して続けられる方法を模索していく。そのために、当院では私だけでなく、栄養士による食事指導や看護師によるフットケアの時間を設けています。大切なのは患者さんとわれわれがチームになっていくこと。治療だからと押しつけるのではなく、患者さんにとって良い形を作り上げていくことが理想ですね。
フットケアを行っているのですね。
糖尿病の重篤な合併症の一つに、下肢切断が挙げられます。これは足潰瘍が原因になることが多いため、フットケアが非常に有意義なんですね。当院ではフットケアについて専門的に学んだ看護師が担当し、時間をかけてチェックとケアを行います。ケアはとても気持ちが良いので、リラックスできると思いますよ。また、ケアを受けている時間は担当看護師とゆっくり話すことができます。栄養相談もそうですが、診察室で医師の私には言いにくいことがあるんじゃないかと思います。当院のスタッフたちはとても熱心に勉強していますので、きっとさまざまな疑問に答えてくれるはずです。どうぞ気軽になんでも質問してみてください。
それでは最後に、地域の皆さんにメッセージをお願いします。
病気になれば憂鬱だし、不安や疑問がたくさん出てくることでしょう。そんなとき、ぜひ当院に立ち寄っていただければと思います。当院は香櫨園駅から徒歩すぐの香櫨館3階にあり、とてもわかりやすい立地ですし、月・火・水・金曜は19時まで診療をしています。会社帰り、学校帰り、お買い物帰りに気軽に立ち寄っていただきたいと思っています。「こんなことで行ってもいいのかな?」と心配する必要はありません。私たちがめざすのは、地域の皆さんのかかりつけ医として、皆さんの健康のパートナーになることです。糖尿病はもちろん、健康相談や健康診断など、なんでも大丈夫です。皆さんがより良い人生を送れるよう、困ったときに思い出してもらえるような安心感のある医療を提供していきたいと思っています。