閑啓太郎クリニック (京都市北区/北大路駅)
閑 啓太郎 院長の独自取材記事
京都市北区の静かな住宅街に、2016年にオープンした「閑啓太郎クリニック」。診療にあたるのは、同院のロゴマークになっている似顔絵そのままの笑顔が印象的な、閑啓太郎院長だ。外科医師として30年以上のキャリアと、救急や総合診療にも従事してきた経験を生かし、地域のかかりつけ医として「総合的にすべての症状を診る」ことを大切にしながら診療にあたっている。外科・消化器内科・内科という幅広い診療を提供するほか、2階にあるリハビリテーション室では、慢性的な痛みに対して低周波治療やけん引なども行っている。開業医としての思いや診療へのこだわりなど、閑院長に話を聞いた。
総合的に満遍なく診療する、地域のかかりつけ医に
開業までの経緯をご紹介ください。
私は外科の医師として三十数年、手術をメインにした診療を行ってきました。専門は肝臓や胃・大腸などの消化器疾患の手術でしたが、肺がんや気胸などの呼吸器疾患、動脈瘤や静脈瘤といった血管疾患の手術にも携わってきました。外科医師としてのキャリアが長くなり、また息子たちも同じ道を進むことになり「そろそろメスを置いてもよいかなあ」という思いが芽生え始めた時に、開業医としての道を考えるようになりました。開業場所は、候補地がいくつかありましたが、結果的にこの京都市北区に開業できて本当に良かったと思っています。患者さんや住民の方は温かな方が多く、診察では私の話をよく聞き、よく理解してくださいます。開業医になったばかりの頃は、メスを執らないことが寂しく感じられたこともありましたが、地域医療の現場が新鮮で、開業医としての意欲が高まりました。私にとってはベストなタイミングでの開業だったと思います。
診療内容と診療で大切にしていることを教えてください。
外科医師としての経験、そして救急医療・総合診療に携わってきた経験を生かし、当院では外科・消化器内科・内科の診療を提供しています。また、疼痛部に対してのトリガーポイント注射や関節へのヒアルロン酸注射、物理療法の機器によるリハビリも行っています。開業医として私がめざしているのは、患者さんのさまざまな訴えに対して、満遍なく診ることができるクリニックであることです。風邪・糖尿病・高血圧・胃や肝臓の疾患・腰痛・膝痛・皮膚疾患など、総合的にすべての症状を診れること。そして専門的な治療が必要な場合は、速やかに適切な専門家をご紹介する。それが本当の意味での「かかりつけ医」であると考えます。そして私が最も大切にしているのは、「早めの診断をつけること」です。患者さんの大きな病気の前兆を見逃さず、予防するための診療を提供すること。それが地域のかかりつけ医の大きな役割だと思っています。
患者層と主訴はどのような特徴がありますか?
ご高齢の患者さんも多いですが、ここは大学が近く若い学生さんが多く住んでいるエリアですので、若い患者さんも同じくらい多いです。開業して3年半になりますが、最近はお子さんを連れたお母さん方も来院するようになってきました。患者さんからのクチコミで、新しい患者さんも増えています。開業当初は、けがの治療に訪れる患者さんが多かったのですが、そのうち当院のホームページを見て、内科の相談で来院される患者さん、健康診断で異常があったので診てほしいという患者さんも多くなりました。主訴としては、ご高齢の方は腰痛や膝痛、高血圧や糖尿病の相談、学生さんは風邪などの相談が多いですね。
重症化させない、予防のための診療を大切にしたい
予防の観点からの診療とは、具体的にはどのような診療ですか。
例えば、血圧の高い患者さんがいるとします。「血圧が高いから気をつけていきましょう」と話をしても、患者さんはピンと来ません。それはなぜかというと、痛みがないからです。血圧を下げるための薬を出しても、薬を勝手にやめてしまったり、塩分のコントロールも実践しようとしない方が多いです。私は、高血圧が原因で脳疾患や、心臓疾患の症状を来し命を落とす人や、まひが残ったり、会話ができなくなった患者さんたちを多く診てきました。そうなってからでは遅いのです。ですから高血圧のリスクについて、患者さんには丁寧に説明して治療につなげるようにしています。「取り返しがつかなくなる前に、今のうちに重症化しないための治療を続けていきましょう」と懸命に伝えています。外科医師として手術をメインにする治療中心の医療を長年行ってきましたが、開業医になると医療に対する考え方が大きく変わり、今はこうした予防のための医療に注力しています。
院内にはリハビリルームもあり、設備も充実していますね。
1階には診療室・待合室・点滴スペース、2階にはリハビリテーション室があります。リハビリについては、肩凝り・腰痛・膝痛などの慢性的な痛みに対して、低周波治療やけん引などができる物理療法の機器を整えています。当院の場合、リハビリをしに来た患者さんには、リハビリだけをして帰ってもらうのではなく、必ず私が患者さんを診察するようにしています。患者さんを診ることで、リハビリ以外の処置が必要な病気のシグナルを見つけられるかもしれませんからね。また消化器外科を専門に長年やってきましたので、当院でも腹部超音波検査での診断も行っています。他にも心電図検査機器、血球・CRP測定器などをそろえ、高血圧や高脂血症、痛風、糖尿病、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの生活習慣病の検査や予防、治療も提供しています。
医療の連携についてはどのように考えていますか?
京都府立医科大学の出身である私にとって、京府医大圏内で開業できたことは、医療連携という意味でメリットが大きいと思っています。多くの後輩や同級生が京都市内の病院で医師として活躍していますので、患者さんが専門の診療が必要だと判断したときには、私がよく知る医師につなぐこともできます。お互いの顔も知らず、どういう人か知らない医師に患者さんを託すよりも、医師としての顔が見える医療連携ができることは、開業医としては心強いです。こうした顔と顔が見える医療連携は、患者さんにとってもメリットが大きいと思っています。
地域に根差し、地域の人と顔と顔でつながれる関係に
医師になったきっかけをご紹介ください。
私は高校までずっと野球をしていました。実はプロ野球選手になりたかったんです。高校は進学校でしたが、毎日朝から練習していました。高校3年の時、PL学園と夏の予選であたって負け、野球への情熱が冷め、勉強への情熱が芽生えてきた時に、「せっかくなら最難関の医学部をめざして勉強しよう」と思うようになり、2浪して入りました。でも今振り返りますと、医学部への道を後押ししたのは、天才外科医師を描いた漫画の影響は大きかったと思っています。このように、野球もすれば漫画も読み、いろんな経験をしてここまで来ました。
今後の展望について教えてください。
この地域に根差し、地域の皆さんに「何かあったら、あのクリニックに行けばなんとかしてくれる」と思ってもらえるようになっていきたいです。そして白衣を着ていなくても、通りを歩けば、住民の方に声をかけていただけるような、顔と顔でつながれる関係になれたらなと思っています。また、当院の在宅訪問診療では、肝臓がん末期の患者さんへ緩和ケアを提供することも可能です。私は肝臓を含めた消化器を専門にした外科医師でしたので、がんの緩和ケアや点滴の工夫などにも慣れています。「近くに末期がんを理解している先生がいてくれて、心強い」と言っていただいたこともあります。今後も地域の開業医として、できる範囲で在宅での緩和ケア、看取りなどにも対応したいと考えています。
読者へメッセージをお願いします。
基本的に当院の治療はオーダーメイドです。風邪でもすべての患者さんに同じ対処をするのではなく、その患者さんに合った治療を提供していきたいと思っています。ただ最近は、患者さんがインターネットや他のメディアなどで得た情報を「正しい」と思い込んで、診療に来られるケースが増えています。医師の立場から言えば、それが必ず正しい情報とは限りません。症状はその人その人で異なることを、しっかりと意識していただきたいですね。患者さんのバックグラウンドもそれぞれ異なりますし、一概に同じ薬、同じ治療法とはならないこともあります。そういうことも含めて、皆さんにとってなんでも相談できる身近なクリニックになれるよう、努力していきたいと思っています。