長澤歯科医院 (八王子市／めじろ台駅)
長澤 孝浩 院長の独自取材記事
京王高尾線めじろ台駅から徒歩10分、JR中央線高尾駅から徒歩15分ほどの静かな住宅街にたたずむ「長澤歯科医院」。まるで白亜の建物が宙に浮かんだような、モダンなデザインが目印だ。長澤孝浩院長は、クリニックのある東浅川エリアの出身。聞けば「ここは、もともと祖父の畑があった場所なんですよ」と、幼少時をしのぶような口調で語る。そんな自身が生まれ育った町で、地域に根づいた診療を続けてきた長澤院長に、患者への想いやモットーについて聞いた。院長の朗らかな人柄もあり、常に笑顔の絶えないインタビューとなった。
自身が生まれ育った地元の町に、歯科医療で恩返しを
クリニックの外観がとても個性的ですね。
開業の際、妻の知人の建築士の方にデザインしてもらいました。当時は地元の新聞にも「宙に浮かぶ歯医者さん」として取り上げてもらい、ちょっとした話題になったんです（笑）。この宙に浮く2階が注目されがちですが、実は歯科室は1階なので「2階に入ってみたかった」と残念がられることもありますね。院内は白を基調としたシンプルな造りなので、楽しい雰囲気になるよう、スタッフたちが積極的に飾りつけをしてくれています。ひな祭りやハロウィン、クリスマスなどなど1年を通して変えていきますので、季節ごとの装いを楽しみにしてくださる患者さんも。ちなみに梁にくぎを打つなどの力仕事は、もっぱら私の役目です。また、この辺りは自家用車を利用する方が多いので、足を運びやすいよう駐車場を広めにしているのもこだわりポイントです。
この地域は、院長の地元と聞きました。
はい、生まれも育ちもこの東浅川となります。この町は、人と人のつながりが強いところが気に入っています。私が小さい頃などは、学校へ行く時に近所の人みんなが「気をつけて行ってらっしゃい」と声をかけてくれたものです。この地に開業したのは、そんな地元の人たちに恩返しがしたいと考えたからなんです。最近では開発も進み、昔から住んでいる方に加え、ファミリー層も増えました。私が学校歯科医や園医をしていることもあってか、地域の子どもさんたちも私のことを覚えてくれており、時には診療後に絵を描いて渡してくれる子もいて、今では私の宝物になっています。また車の掃除やごみ出しの時などには、子ども独特のぶっきらぼうな態度で「先生おはよう」と声をかけ、走っていく子も。すると私もその背中に向かって「おはよう、気をつけて！」と返すんです。そんな一日の始まりは、とても爽快な気分ですね。
ところで、院長が歯科医師を志したきっかけは？
母親に勧められた影響が大きいと思います。母は教師だったのですが、もともと医師を志していたようで、息子の私にその夢を継がせたかったんでしょうね。私も、小学校の卒業文集にはすでに「お医者さんになる」と書いていました。その後、歯学部を卒業する頃には、母と同じく教師であった父の教え子に歯科医師の方がいて研修医を募集していたんです。その紹介のおかげで、とんとん拍子に進路も決まりました。思えば、歯科医師になれたのは周りの人たちのおかげかもしれません。今では、地元の同級生や後輩をはじめ、そのご家族や、以前の勤務医院で診ていた方が来院してくださることも多く、やっぱり歯科医師になって良かったと思いますね。皆さん親戚を診るような気持ちで診療しているので、しばらくいらっしゃらないと「元気にしているかな」と心配になることもあります。
患者と真摯に向き合い、信頼関係をつくっていく
診療の際に心がけていることを教えてください。
きちんと患者さんと向き合い、目を見ながら話すことです。あとは、治療のイメージが伝わりやすいよう、イラストの入った説明ツールや、治療前後の口腔内写真も活用しますね。患者さんが子どもの場合は、使う機器や道具を最初に見せたり、笑顔で話しかけたりして距離を縮めていきます。特に検診で初めて受診するときなどは、恐怖心でいっぱいのはずですから。私自身も子を持つ親ですし、子どもはかわいいですから、怖がらせず痛くない治療をしてあげたいんです。一方、ご高齢の方には、歯の大切さを十分理解していただけるようお話しすることを心がけています。そして、もし歯がなくなってしまっても、義歯などを用いて、しっかり噛めるようにすることのメリットや治療期間についてもわかりやすく説明するようにしています。
院内の感染症対策にも力を入れてこられたとか。
はい。衛生管理については、コロナ禍になる以前から力を入れています。例えば、使用した器具を熱水消毒できるジェットウォッシャーや、欧州基準をクリアしたクラスB規格の高圧蒸気滅菌器も開業当初から導入しているものです。また、歯の治療中に飛び散る飛沫などを吸引するため、口腔外バキュームも設置しました。近年は歯科医院でのエアロゾル感染が話題になり、感染症対策がさらに重要視されてきましたから、こうした設備を早くに導入してきたのは結果的に良かったですね。もちろんコロナ禍になってからは、全ユニットの消毒や院内の換気も徹底しています。歯科衛生士にはフェイスガードの着用や、午前午後での白衣の着替えなども義務づけていますので、ぜひ安心してご来院ください。
開業後に博士号を取得され、勉強会にも積極的に参加されているそうですね。
博士号は開業の必須条件ではないのですが、自分自身の歯科医療の基盤が欲しかったんです。大学の病理学研究室で6年間「病理」について学びました。また、常に新しい知識や技術を修得していかないと、患者さんに対して自分の納得のいく歯科医療を提供できないと考え、勉強会にも参加するようにしています。特に開業してからは、研究医時代のように指導教官や同僚と議論を交わしたり刺激を受けたりする機会もないので。ちなみに最近ですと、摂食嚥下障害のケアなどに関心を持っています。近隣にはご高齢の方も多く、食事中にむせてしまうなど口腔機能が低下している方も少なくないので、嚥下内視鏡検査などによる適切な診断について学べたら、と考えたんです。
チャレンジ精神を忘れず、地域の人々の健康維持に貢献
高齢者施設での訪問診療もされていると聞きました。
ご自宅への訪問診療は積極的には対応できていませんが、週1日、地域の老人ホームへ訪問しています。2018年からなので、今年で5年目です。歯の治療や義歯の調整などはもちろん、お口の中の汚れを取って差し上げたり、歯磨き指導を行ったりしてお口の中の健康維持をサポートできたら。食べ物が飲み込みづらく喉に残ってしまう、むせてしまうといったことが続くと、誤嚥性肺炎のリスクも高まります。その上、食事そのものが楽しくなくなってしまうと、十分に栄養が取りづらくなりますし、ゆくゆくは体の健康にも影響を与えかねません。こうした状況は、やはり地元の歯科医師として放ってはおけませんから、嚥下トレーニングなどの指導も行うようにしているんです。この活動が、少しでも皆さんのお役に立てているならうれしいですね。
今後の展望についても教えてください。
「新しいことにチャレンジする」と言うと格好よく聞こえますが、常に挑戦し続ける姿勢を忘れずにいたいですね。先ほどお話しした勉強会や訪問診療などもその一環ですが、突き詰めれば、こうした取り組みの積み重ねが地域の皆さんの健康や安心につながっていくと思うんです。設備面においても、より精密な治療が行えるようCTやマイクロスコープ、むし歯の進行を数値化できる光学式う蝕検査装置など先進の機器に着目しています。当院では被ばく量の少ないデジタルエックス線撮影装置や、痛み・腫れの期間短縮のためのCO2レーザーなどはすでに導入していますが、さらに診療の幅を広げ、患者さんに還元していけたらと考えています。
最後に地域の方へ、そして読者へのメッセージをお願いします。
私がイメージする「名医」とは、いわゆる「神の手＝ゴッドハンド」ではなくて、患者さんの苦しみや痛みを分かち合える人なんです。ですので、地域の方から「まずはあの歯医者さんに行ってみようよ」と思ってもらえるような存在でありたいです。読者の皆さんへお伝えしたいこととしては、まず「歯をきちんと磨きましょう」ということ。そして、数ヵ月に1回は検診を受けていただけたら。また、できることなら、かかりつけ医を見つけましょう。そうすれば長い期間、安定した治療方針のもと、歯や全身をケアしてもらえるはずですから。美容室に行くような気持ちで、歯のお掃除をしてもらう。それが初めの一歩になります。
