さくら歯科 (東温市／横河原駅)
毛利 武文 院長の独自取材記事
東温市の田園風景の広がる川内地区にある「さくら歯科」は2005年に開業し、今年で15年目を迎える。院長の毛利武文先生は穏やかで優しく、誠実な人柄。同院は地域のかかりつけ歯科医院として、子どもから高齢者まで幅広い年齢層の患者が訪れる。診療では可能な限り歯を温存する治療を基本として、患者の立場に立って最善と思われる治療の提案に努める毛利先生。患者の希望にできるだけ添えるようにと、先進の歯科医療も取り入れているのだとか。「少しずつでもステップアップを続けていきたい」と語る毛利先生に、開業の経緯や力を入れている訪問診療などについて話を聞いた。
地域のかかりつけ歯科医院として幅広い診療を提供
最初に、開業までの先生のご経歴を教えてください。
1992年に九州大学歯学部を卒業した後、同大学病院の口腔外科に入局して7年間勤めました。愛媛に戻ってからは3軒の歯科に合計6年ほど勤務。訪問診療の経験も積ませていただき、2005年に妻の実家に近い当地に開業しました。私自身は旧明浜町（現・西予市）の生まれですが、父が転勤族で小学生まで県内のあちこちに引っ越しをしていて、中学からは松山市内で寮生活を送っていましたから、あまり地元というものがないんです。ここは妻の知り合いや友人も多く、患者さんとしても来てくださっていますよ。
勤務医時代と、開業してからでは変化はありますか？
大きく違いますね。勤務医時代は他にも歯科医師が在籍していますが、開業をすると歯科医師は私一人。治療の責任はすべて私にかかってきますし、運営面も考えなければなりません。また大学病院では口腔外科に勤務していましたが、開業後は専門性を押し出すというよりも、地域のかかりつけとして幅広く診療をする方向にシフトしました。専門性が求められる治療では決して無理をせず、専門の医療機関や先生に紹介するようにしています。ただ、口腔外科でがん患者さんを担当していた経験もありますから、口腔がんの発見にはお役に立てるかと思います。もちろん発見した場合には、速やかに専門の医療機関をご紹介します。
地域に根差して診療されているのですね。
そうですね。患者さんは地域の方がほとんどで、お子さんからお年寄りまで幅広く来ていただいています。小さいうちから予防に来ていただいて、将来虫歯になりにくい環境をつくることも大事ですし、また高齢になって通院が難しくなった患者さんには、要望があれば訪問診療も行っています。できる限りのことは対応するようにしていますが、専門性が求められる分野に関しては、患者さんの安全面も考慮して専門家にお願いするようにしています。地域の方に来ていただいて、喜んでいただけることが一番のやりがいです。
可能な限り、歯を温存していく治療
クリニックの診療方針をお聞かせください。
患者さんと接する際は、きちんとカウンセリングをして、希望も伺いながら、優しく丁寧に接することを心がけています。また、患者さんにとって最善と思われる治療を提案しています。その際、歯を削らないといけない場合は削りますが、抜かなくていい場合は可能な限り温存するようにもしていますね。また私自身は子どもの頃の歯科の先生が良かったのか、歯科治療に対して恐怖心のないまま育ちましたが、恐怖心や苦手意識のある方は多いです。このためお子さんの治療では恐怖心を植えつけないよう、緊急性がない限りは歯科に慣れてもらうことを優先しています。例えば虫歯だと、進行止めのお薬を塗って様子を見ていきますね。大人の方で不安感の強い患者さんに対しては、麻酔のかけ方を工夫したり、丁寧な声かけをしたりするなどして、少しでも安心していただけるよう心がけています。
先進の治療技術も取り入れるようにしているそうですね。
実際に希望する患者さんはあまり多くはありませんが、できるだけ幅広く、患者さんの期待に応えられるように勉強しています。例えば歯周病の治療では、新しい治療法である歯周組織再生療法など、よく調べさせていただいた上で、患者さんの状態により可能であれば当院で行っています。インプラント治療でも、患者さんのご希望と骨の状態を照らし合わせた上で、私のできる範囲で対応しています。状態の難しい患者さんでは、専門の先生にご紹介することもあります。
訪問歯科診療にも対応されているのですね。
愛媛での勤務医時代に訪問診療を担当して、1日中患者さんのお宅を回っていた時期もありました。現在、当院は在宅療養支援歯科診療所として、高齢で通院が困難になった患者さんのご自宅や、施設などにに訪問しています。外出が不自由になると人と接する機会も減ってしまいますから、患者さんにとってはコミュニケーション自体が楽しみということも。「来てくれてありがたい」と喜んでいただいたり、反対に私が元気をもらうことも多々あります。通院が困難とは言っても、パワフルな方は結構いるんですよ。また寝たきりの患者さんだと、食べることが1日の中での一番の楽しみという方も少なくありません。口腔内の環境を整えて、食べられるようにサポートしていきたいと想っています。
自身のステップアップを忘れず、地域に深く根差す
開業から15年を振り返っていかがですか？
患者さんに喜んでいただいて、やりがいのある仕事ではありますが、もちろんそれだけではなく浮き沈みもありますから、大変なこともたくさんありました。でもそれはどの開業医の先生も同じように苦労されていることなのかなと思います。山あり谷ありを経験しながら、何とかここまで脱落することなく、私自身もスタッフとても助けられ支えてもらいながらやってこれたという感じでしょうか。
今後、力を入れていきたい取り組みについてはいかがでしょうか。
歯周病の治療や予防に注力していきたいと考えています。近年、予防歯科の考え方が浸透しつつあるといっても、まだまだ歯科医院は痛くなったら行くところと思われている方が多いようです。しかし、歯周病は初期の段階ではほとんど自覚症状がありませんから、気づかないうちに進行していて、痛みを感じたり出血が見られたときにはかなり状態が悪くなっているということもあります。それに、ただでさえ人は歳を重ねると歯茎も自然と下がってきます。そんなエイジングと上手に付き合っていくためには、自分のお口の中の状態を自覚した上での対応が必要です。なので、「ここ数年歯科医院に行っていないな」という方は、何もなくてもまずはお気軽に来ていただけたら。そこでもし虫歯や歯周病が見つかれば早期治療が可能です。そして、治療が終わった後も定期的なメンテナンスで患者さんの予防意識を高めていくことができれば幸いです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
開業から15年がたち、年齢的になかなか無理もできなくなってきましたが、健康に気をつけて、できるだけ長く地域の患者さんとお付き合いしていけたらと思っています。その中で、向上心を忘れることなく少しずつでもステップアップして、先進的な治療技術も学んでいきたいですね。また将来的により高齢化が進むことを考えると、訪問診療や義歯など、高齢者の歯科治療にも力を入れていく必要性も感じています。地域のかかりつけとして、患者さんの希望に可能な限り応え、最善の治療を提案・提供できるよう努めていくつもりです。
