杉村 泰郎 院長の独自取材記事

地域におけるチーム医療にも携わり、患者に還元する

すてきな院内ですね。設計でこだわったところはありますか？

知り合いの女性設計士さんに設計をお願いしたのですが、優しい雰囲気が出てとても満足しています。圧迫感が少ない高めの天井やプライバシーを重視した診療室、ユニットに横になっても直接目に入らない間接照明は、設計士さんからの提案なんです。歯科医院は患者さんにとって嫌なところですし、恐怖心を抱く方もいらっしゃいます。少しでもその思いを抱かないよう、安心できるようにと、木材を多く使い窓にはステンドグラスを施して、全体的に丸みのあるデザインにしました。バリアフリーにも配慮して車いすの患者さんもそのまま入って診察できるようにしていますし、院内用の車いすやステッキも用意しています。私の好きなロイヤルブルーも院内に取り入れていますよ。

時代のニーズに沿った対応をされていると伺いましたが、最近ではどういったことに着目されていますか？

最新の知識や技術を常に取り入れるようにしていますが、口腔外科出身でもありますので、CTを用いてがんの早期発見などに力を入れています。加齢によって口腔機能が衰えていくことをオーラルフレイルと言いますが、その衰えを客観的にチェックできるシステムが確立されてきています。私自身、中川区歯科医師会で地域包括ケアにおけるチーム医療に携わっていて、高齢者の方の口腔ケアは問題意識を持っています。検査が地域に浸透して、患者さんの生活の質の向上につなげたいと考えています。

高齢の方が抱えている口腔内の問題に目を向けていらっしゃるのですね。

この地域でも寝たきりの方が多くいらっしゃり、高齢の方の口腔ケアは常に考えていますね。誤嚥性肺炎や心疾患、糖尿病といった口腔内の状態が悪いと起こりやすい病気の関連性が指摘されていて、口腔内をケアすることの重要性が叫ばれているのです。クリニックの診療と並行しての業務は多忙を極めますが、地域の皆さんに愛されてここまでこれたという思いがあり、活動を通して少しでも地域に還元したいのです。自分のお口の中に興味を持っていただいて、より良い老後が送れるよう支えたいと思っています。

口腔内の健康に、地域も見据えて向き合っているのが伝わってきます。

そうですね。同様に口腔がん検診の推進にも携わっています。口腔がんを見分けるには経験やスキルが重要となりますが、見分けられる歯科医師がまだ多くはないんですね。普通に歯の治療に来られた方でも希望されたら口腔がん検診が受けられるよう、手順を踏んだ客観的な方法を確立するとともに、検診ができる歯科医師を広めていこうと動いています。地域における病診連携を強化して、患者さんをすぐに紹介できる体制を整えていくことは非常に重要です。一口にチーム医療と言ってもクリニック内にとどまらず、地域におけるチーム医療も大事だと考えています。

より良い治療に向かって、スタッフと連携し前進する

どのような診療を提供されていますか？

0歳から90歳まで幅広い年齢層の方に来ていただいていますので、皆さんのニーズに対応できるよう幅広い診療を提供しています。特に専門である口腔外科に関しては組織検査もしていますし、親知らずの抜歯やインプラント治療などの小手術、炎症の強い方には点滴の処置もします。治療で用いる器具も手術室で使うようなものをそろえ、必要な時にしっかり対応できるよう体制を整えています。もちろん治療前にリスクやデメリットもお話しして、納得していただいた上で進めています。大きな手術が必要な場合は医療機関を紹介していますが、そこに至るまでのアドバイスですね。例えばこういった治療があるですとか、口腔外科が専門の歯科医師としての経験から得られた知識をできる限り提供しています。全身を診ることができる歯科医師でありたいと思って口腔外科を選びましたので、そこは常にベースに置いて診療しています。

このクリニックから開業された先生も多くいらっしゃるとか。

多くの先生方が巣立って活躍していますが、開業で一番大事なことは誰よりも早く来て誰よりも遅く帰ることだと先生方に伝えています。私も一番早く来て朝の準備をして、外の掃き掃除やゴミ出しなども率先してやっているんですよ。自分がやらないことをスタッフに押しつけてはいけないと思うんです。社会人としても、立場のある人間こそが、一生懸命働かないといけないと。そして、困ったら気を使わなくていいから、いつでも電話してきなさいとも伝えています。ありがたいことに、皆、今でも慕ってくれていますね。

スタッフさんにはどのように指導されていますか？

大学から若手の歯科医師も積極的に受け入れていますが、指導するだけでなく彼らから最新のトピックを吸収させてもらっています。どの立場のスタッフも一人ひとりがプロフェッショナルで、学びがあります。スタッフは私の宝物なんです。全員が同じ船に乗って、同じ方向に進んでいくことが大事です。スタッフの雰囲気は患者さんにも伝わりますからね。より良い治療に患者さんを導いて気持ち良く帰っていただくためにも、風通しの良い職場であることが重要。もちろん逸脱するようなことがあれば注意しますが、尊敬の気持ちを大切にしています。

全身状態を把握し、レベルの高い治療の提供をめざす

専門である口腔外科で気をつけていらっしゃることは？

患者さんの中には持病をお持ちの方も多くいらっしゃいます。治療を進める上でリスクを抱えていらっしゃる患者さんは、歯の治療をする前にかかりつけの先生にお手紙を書いて、全身状況の把握に努めます。患者さんの中にはご自身がどんな薬を飲んでいるか把握されていない方もいらっしゃいますので、把握するためには必要なことだと考えています。かかりつけの先生方からもご理解いただいているので、患者さんの服薬歴や、血液データ、注意すべきリスクなどしっかりとお返事をくださいます。口腔外科で得られた経験や知識を駆使して想定し得るリスクを把握し、かかりつけの先生方と連携を取って、より安全で適切な治療を提供していきたいと考えています。

診療時の心がけを教えてください。

治療のレベルを高くしていくことだけでなく、患者さんの希望に寄り添うことも大切にしています。さまざまな選択肢を用意し、インフォームドコンセントを得た上で治療を進めています。例えばクリーニング一つとっても、しっかりと掃除してほしい方もいれば、とにかく優しくやってほしいと希望される方もいます。歯科衛生士にも得意分野がありますので、患者さんの希望に合致したスタッフを配置するといったことも必要です。スタッフと協力しながら、チーム全体で質の高い歯科診療を提供したいですね。すべて患者さんに返っていきますから、人としても歯科医師としても、レベルアップしていきたいですね。

最後に読者へメッセージをお願いします。

開業して以来、少しでも地域の皆さんのお口の健康に携われたらという思いでやってきました。地域の皆さんに支えていただいたおかげで今を迎えられています。これからも門戸は広くハードルは低くして、入りやすいクリニックでありたいですし、レベルの高い治療を追求していきたいです。気軽に来ていただけたらうれしいですね。患者さんが心の底から来て良かったと笑って帰っていただけるようなクリニックでありたいのです。私のモットーは「粉骨砕身、滅私奉公」。歯科医師として人生を全うできたらこれ以上幸せなことはありません。患者さんに気持ち良く帰っていただけるよう真摯に治療に向き合って、前進していきたいと思っています。