おかむら歯科クリニック (春日市/南福岡駅)
岡村 亮 院長の独自取材記事
2007年の開業以来、子どもから高齢者まで幅広い世代のかかりつけ医をめざしてきた「おかむら歯科クリニック」。南福岡駅から車で7分ほど、県道56号線沿いの昇町交差点に位置し、周囲は小学校やマンションなどが立ち並ぶベッドタウンだ。そのため患者の各種ニーズに対応するかたちで、一般歯科はもちろん、矯正歯科、インプラント治療など、さまざまな診療を提供している。中でも噛み合わせを重視しており、岡村亮院長は「虫歯や歯周病には細菌だけではなく噛み合わせという力の要素も深く関わっているため、咬合の改善を図ることが予防にもつながります」と強調する。そんな岡村院長に、めざすクリニックの在り方をはじめ、これまでのキャリアや噛み合わせの重要性などについて詳しく話を聞いた。
さまざまなトラブルに向き合う歯のかかりつけ医
春日市に開業された理由と背景を教えてください。
春日市は都心に近く、小さなお子さんからお年寄りまでさまざまな世代が暮らしているベッドタウンです。そのためさまざまな主訴を診療させていただけるのではないかと考えました。加えてデンタルIQが高く、私自身が歯科医師として貢献できる地域だと感じたことも理由の一つです。実際にお子さんも多く、縁あって小学校の学校歯科医を任せていただいているのですが、始めた当初よりも虫歯のリスクは低くなっていますし、口腔内に関する意識は高まっている印象です。一方で乳歯から永久歯への生え替わりがうまくいかず、いわゆる受け口の反対咬合、口を閉じても前歯が当たらないオープンバイトといった歯列不正が増えています。そういった観点から、乳幼児期から口腔環境を整えていくための介入が必要だと痛感するようになりました。
先生が今まで培ってきた経験について教えてください。
広島大学歯学部在学中に補綴の講義で、初めてインプラントの話を聞きました。欠損した歯を補う興味深い治療だと思ったことがきっかけで補綴領域を専門的に学びたいと思いました。そこで九州大学歯学部の旧第2補綴科に大学院生として入局し、インプラントの基礎研究を行いながら臨床経験を重ねました。並行して、当時吉塚にあった木村歯科にお世話になり、麻酔の仕方から神経の治療、ご専門である歯周病治療など歯科医師としての基礎を身につけさせていただきました。特にインプラントをはじめとした補綴治療は歯周環境が整っていないとうまくいかないケースもあるため、しっかりと基礎治療を経験できたことは大きな財産になっています。
どのような主訴で来院される方が多いのでしょうか?
割合で言うと炎症など痛みを伴った主訴でいらっしゃる方が多いですが、診療する際は、主訴だけではなく口の中をトータルで捉え、痛みの原因がどこにあるのかを常に追求し治療計画を立てていくように心がけています。それ以外にも矯正や噛み合わせを整えていく咬合誘導に力を入れてきたため、矯正を希望される近隣の学生さん、乳歯から永久歯に生え替わる交換期の小学生では福岡市内から紹介でいらっしゃるケースも増えてきました。年齢層では40代以降の方が多いものの、親子で通っていただいている患者さんもいます。最初に保護者の方が通院されていて、噛み合わせといった原因にまで言及していくうちにお子さんの相談も受けるという機会が多いですね。
根本的な原因の解決に力を注ぐ
先生が診療で心がけていることを教えてください。
まず当たり前のことですが、一切妥協をせずに自分ができるベストを尽くすこと。そのためには診査・診断が重要です。 事前にレントゲンや口腔内写真、歯の模型などの資料を取り現在の状態を診査します。その上で、何が原因で現在の状態になったのかを診断し、それを踏まえた治療計画をたてます。これを患者さんに説明し納得された上で治療をしていくようにしています。学校歯科医として子どもたちと接するうちに、根本的な治療における咬合の重要性をあらためて感じました。どのような主訴であっても噛み合わせを精査し、噛み合わせに問題があり主訴の原因となっている場合には、その解決を提案します。大人であれば理想的な噛み合わせを獲得するために矯正を提案することもあります。乳歯列期や乳歯が抜けて永久歯に生え替わる交換期であれば、咬合誘導を目的にマウスピース型装置を使って舌の位置や口呼吸の改善を促すなどの介入ができるようにしています。
根本的な解決に向け、きめ細かな診療を心がけていらっしゃいますね。
根本的な治療を行うためには細かな部分にまで配慮して診療を進めていかなくてはなりません。例えば、歯周病であれば歯周ポケット検査を怠らず、きちんと経過を追いながら目標に近づいていることを患者さんと細かく共有していきます。虫歯に関しては感染した部分を染め出しし、感染箇所を取り残さないよう配慮しています。歯周病や虫歯は感染症なので、口の中の細菌をどれだけ減らせるかが鍵になりますし、処置の際、細部まで精度にこだわることで再感染のリスク低減にもつながります。加えて治療のたびに口腔内の写真を撮影しながら患者さんと一緒に経過を確認し、治療への理解やモチベーションを高めています。百聞は一見にしかずではないですが、実際に自分の口の中を目の当たりにすると驚かれる方は多いです。
解決するための手段の一つとして、矯正に進む人も多いと聞きました。
確かに虫歯や歯周病が主訴だったけれど、根本的に口腔環境を整えるためには噛み合わせへのアプローチが必要となり、その結果矯正が伴うというケースは少なくありません。例えば交叉咬合(クロスバイト)といって、上下の歯の一部が正常咬合ではなく反対咬合になっているケースが多く見受けられるのですが、そういう方は全体的に歯が並ぶスペースが狭く、痛みなどの原因を取り除くためには矯正が必要となります。ただし歯が痛いから矯正をしましょうと提案しても理解はしてもらえません。そのため矯正に至らないとしても、きちんとカウンセリングを行い、リスクを伝えるようにしています。将来経済的に余裕が出たときに矯正を検討してもらえますし、痛んだときに早めに相談に来てもらえるなど、結果的に患者さんの歯を守ることにつながると信じています。
チーム一丸となって患者に寄り添っていく
日々の診療でどんなときにやりがいを感じますか?
やはり患者さんが笑顔になってくれることですね。歯科治療を好んで来られる方はいらっしゃいませんし、痛みがあるために嫌々来たと言う方も少なくありません。そういう方たちが喜んでくださる様子を見ると、私たちが関わったことで、患者さんの人生を少しでも豊かにできたのかなと思いますし、この仕事を選んで良かったと思います。他方で100%の治療ができたとしても、天然歯であっても、時間がたてば歯はどうしても摩耗していきます。そのためにもメンテナンスをしながら機能させていくことが大切です。
口腔内の健康を維持していくには、スタッフとの連携も重要なのですね。
歯周病治療においては患者さんのブラッシングが80%、歯科衛生士の役割が15%、歯科医師の役割が5%といわれています。メンテナンスでのクリーニングだけではなく、患者さん自身がブラッシングできるように指導を行うという意味からも歯科衛生士の役割はとても大きいと考えています。患者さんの口の中の状況や変化を把握し、ブラッシング指導にとどまらず食習慣や口呼吸などの癖を指摘し、いかに気づきを与えられるかがポイントです。いくら治療をしても、セルフケアを含めたメンテナンスがうまくいかなければすぐに壊れてしまいます。だからこそ歯科治療はチームプレーです。患者さんの心や気持ちを大切にしながら、チーム一丸となって寄り添っていきたいですね。
今後の目標と読者へのメッセージをお願いします。
かかりつけ医として、子どものうちから関わっていきたいと思っています。歯が生えてから大人の噛み合わせが完成するまでの期間に適切なタイミングで介入し、健全な永久歯列をめざしていくのが理想です。大人の方であれば、噛み合わせを精査した上で、虫歯・歯周病の治療、入れ歯、インプラントなど幅広い治療を提供していきたいと思っています。歯科医療は治療終了がゴールではありません。いかに健康な状態を持続するかが重要です。そこをサポートするのも、かかりつけ医の大切な役割です。健康的なお口で、おいしく食事ができる。そんな当たり前を実現するためにも、お口に関する不安があれば、どんなことでもご相談ください。