きただい医院 (木田郡三木町／白山駅)
友兼 毅 院長の独自取材記事
県道13号沿い、白山のふもとに位置する「きただい医院」。県道バイパスに面しているため利便性が高く、20台分の駐車場も用意されている。同院は2021年4月に、北代雅也前院長から友兼毅（ともかね・たけし）院長へと引き継がれた。急性期病院で20年間、勤務を続けてきた友兼院長の専門領域は、循環器内科そして消化器内科。心臓カテーテル治療や、内視鏡を用いたがん手術の豊富な経験を生かし、さらに幅広い診療内容で、地域の健康維持・増進を図っている。継承から間もなく5年。新天地で今後どのように患者に寄り添い、歩んでいくのか、地域医療に対して今、どんな想いを抱いているのか、友兼院長に詳しく話を聞いた。
大規模病院の経験を踏まえ、地域のかかりつけ医へ
先生はいつ頃から医師を志したのでしょうか？
私は徳島県の田舎育ちで、子どもの頃は両親が育てたミカンや伊予柑の収穫を手伝っていました。ですので医師がどういうものか、幼少期から明確にわかっていたわけではないのですが、いつからか心のおもむくままに、医学の道へ進んでいましたね。徳島大学医学部を卒業した後は大学病院や中核病院を経て、高松市民病院（現・高松市立みんなの病院）に約10年間勤務し、主には心筋梗塞に対する心臓カテーテル治療や、内視鏡を用いた胃がん、大腸がん、食道がんの切除術に携わってきました。医師になったばかりの頃は、ハンセン病の療養所である大島青松園にも勤務しましたね。幅広い治療経験を得る中では、日本内科学会総合内科専門医・日本循環器学会循環器専門医・日本消化器病学会消化器病専門医・日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医・日本肝臓学会肝臓専門医・日本超音波医学会超音波専門医と、複数の専門医資格も取得することができました。
どのような経緯で、こちらの医院を引き継がれたのですか？
最後まで勤めていたのは高松市のみんなの病院ですし、このクリニックにも、三木町という土地にも縁があったわけではありません。自分の医業も円熟期に入ったと感じ、そろそろ開業をと考えていた頃に、コンサルタントの方からこちらをご紹介いただきました。三木町の中心部からはやや遠い立地ですが、県道沿いでアクセスは良く、落ち着いた環境が良いなと感じています。前院長は20年以上、地域のかかりつけ医として診療されていましたが、診療方針などは特段、引き継いでいません。「友兼先生のやり方でやったらいいよ」と、優しいお言葉をかけていただきました。私が当院を引き継いだ後は、従来の内科、循環器内科とともに消化器内科を掲げています。これまでの診療経験を生かして、患者さんを少しでも楽にするお手伝いができればうれしく思います。
最近は、どのような患者さんが多いのでしょうか。
継承当初の患者層はご高齢の方がほとんどで、90代の患者さんなどもよくいらっしゃっていました。今は働き世代の方も増えましたが、主訴は大きく変わっていません。高血圧症や心不全、腎不全などを抱えている慢性疾患の患者さん、あとは発熱症状の外来を設けていますので、熱や咳、腹痛などによる息苦しさを訴える方が来られています。大学病院などに通いつつ、日常的な診療は当院で、という患者さんも多いです。患者さんのお住まいのエリアは広く、三木町をはじめとした東讃地域の方々を中心に受け入れています。
「ここで診られるものは、ここで診る」ということ
専門分野を多数お持ちですが、これまで最も注力してきた治療は何でしょうか？
勤務医時代に注力してきたのは、内視鏡を用いたがん治療です。従来の消化器がん治療は、病変にループ状のワイヤーをかけて締めつけ、切除を図る治療法が主流でした。ところが最近では、内視鏡を使ってより大きな病変に対応する治療法、内視鏡的粘膜下層剝離術（ESD）が可能となっています。昔は開腹手術をしていた病変も、内視鏡治療で対応できるようになったのです。このように、消化器がん治療の進化はめざましいものがありますが、やはり最も大切なのは、早期に発見することです。当院では鎮痛剤を用いた胃・大腸内視鏡検査に対応することで消化器がんの早期発見に努め、小さな大腸ポリープであれば、日帰りの手術で切除に取り組んでいます。さらに、肺がんに関しても早期発見につなげられればと、2025年4月にCTを導入しました。胸部・腹部の異常を短時間で高精度に診断できますので、検査や結果説明を急ぐ方もお気軽にお問い合わせください。
診療する際に心がけていることはありますか？
ご高齢の患者さんに対しては、特に大きな声でゆっくりとお話しすること。それから院内が混雑していても、治療説明などが早口にならないようにすることを心がけています。急性期の病院ではスピード感が求められますし、患者さんも若い年代の方が多かったので、診療も素早い対応になりがちでした。けれども現在は、診察室の雰囲気も患者層もガラッと変わりましたから、環境に応じた対応をと考えています。患者さんに対するご説明の仕方も、日頃から気をつけている点ですね。例えば、病院にいた頃は「脂肪が多いので痩せてください」などと直接的に指示していましたが、当院ではそんな発言はしません。腹部や心臓のエコー検査を行う際には、「ちょっと奥が見えにくいので、体重を落としましょうね」と丁寧にお伝えしています。
地域医療を担う上では、何をすることが重要だと思われますか？
「ここで診られるものは、ここで診る」ということでしょう。この約5年間で、内視鏡やCT、さらには喘息を診断する呼気NO検査の装置といった検査設備を整えてきたのも、その想いがあったからです。検査の見落としを防ぐため、CT検査では日本医学放射線学会放射線科専門医による2次読影も施行しています。高血圧症や心不全の治療においても、まずは各種検査を通じて原因を調査し、そして最新のガイドラインに沿った治療を行っています。医療は日進月歩ですから、最新の医療知識を身につけておくことも重要です。一次医療を担うかかりつけ医は、そうやって二次・三次医療機関と適切に連携していく。それこそが、地域医療のあるべき姿だと思います。
早期発見のため、積極的にがん検診を推奨
お休みの日は、どのように過ごされていますか？
いろいろなうどん屋に行っています。近所のお店から評判の有名店、チェーン店まで、本当にたくさんのうどん屋があるので、さまざまなメニューを楽しんでいますよ。観光客が多いところは混み合うのでなるべく避けながら、あちこちうどん屋巡りをするのが楽しいです。
今後の展望についてお聞かせください。
健康診断の採血だけでは、なかなかがんを見つけられません。がんの診療に携わってきた経験を生かし、内視鏡検査などのがん検診を積極的に勧めていきたいです。特に、罹患率が高い大腸がんには注意をしていただきたいと思います。早期がんであれば、先ほどお話ししたような新しい治療法によって切除を図れますので、便潜血検査も推奨しながら、早期発見・早期治療に努めます。さらに消化器だけでなく、循環器についても、より幅広く診られるようにしたいと考えています。いずれの分野もニーズが高く、循環器内科では高血圧症や糖尿病といった生活習慣病の罹患者が増えていますので、患者さんの生活習慣にも気を配っていきたいです。私も含め、このエリアにはうどん好きの患者さんが多いのですが、うどんはどうしても、カロリーが高めですから（笑）。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
私は専門分野を広く有していますが、自分の専門外となる患者さんであっても、「専門外だから」と対応を断らず、まずしっかりと話をお聞きします。そして状況を丁寧にご説明した上で、病態が良くないという場合には、大規模病院などと迅速に連携を取ります。当院で診られるものは手を尽くして最大限対応し、患者さんにとって最良の方法を選択できるよう心がけ、その結果として、地域の健康維持・増進と各種症状や疾患の予防に貢献できれば良いと思っています。当院は地域のかかりつけ医として、これからも患者さんのためになる医療をモットーに、この地域の医療に従事してまいります。
