中央歯科クリニック (蕨市／蕨駅)
杉村 麻央 院長の独自取材記事
蕨駅西口から徒歩で約8分、県道110号沿いにある「中央歯科クリニック」は長年地元で親しまれている歯科医院。大きな窓から豊かな陽光が差し込む院内は明るく清潔な雰囲気で、4つある診療ブースはゆとりある造り。高齢者の靴の脱ぎ履きの一助にと造られた玄関の立ち上がり用スタンドなど、随所に杉村麻央院長とスタッフのこまやかな心遣いが息づいている。やわらかな笑顔と落ち着いた口調で話す杉村院長は、蔵戸田歯科医師会でも活動するなど、地域での予防歯科への啓発活動にも力を注ぐ。そんな杉村院長に診療姿勢や思いなどを聞いた。
子どもから高齢者まで来院しやすい雰囲気に
開業から18年。20周年が見えてきましたね。
戸田市・蕨市で育ちましたから自分の歯科医院を持つならやはり地元で、と思い、2005年に開業しました。私は立教大学経済学部を卒業後、いったんカメラ・医療機器メーカーに勤めたのですが、病気で1ヵ月間入院した際に「直接自分が医療の担い手になりたい」と思い立ち、翌年に日本大学松戸歯学部に入学。卒業後は大学の医局関連の歯科医院で勤務した後に独立開業しました。看板をピンクにし院内の配色にも優しい色合いのピンクを採用したのは、明るく親しみやすい感じにするためです。内装設計を担当してくれた女性デザイナーが「歯科医院は患者さんにとっては少し怖いイメージがある」ということでこの雰囲気を提案してくれました。小さいお子さんや女性も親しみやすい空間になっているかと思います。
どのような患者さんが多く来院されていますか？
このエリアは地元で生活を続けてきた方も多く、おじいちゃんおばあちゃんから孫世代まで家族みんなで通ってくれているご家庭も多いんですよ。もう開業から18年もたちますから、私が保育園の歯科医師として診ていた子がうちで歯科医院デビューしてくれて、その後もずっと通ってくれていたりするのを見ていると、本当にうれしいものです。学術的には母子分離といってお母さんとお子さんを離して治療するのが基本らしいですが、当院ではお母さんが不安にならないよう、目の前に座ってもらってどんな治療をしているかを見てもらっています。また悪くなっている部分を「ここがこうなっているので、こうします」と説明し、納得された上で治療に入ります。その後、小学校の高学年になるとお子さん一人で来院できるようになると思いますし、お母さんも私のやり方がわかっていれば、安心して任せられるのではないでしょうか。
先進の機器も積極的に導入されているそうですね。
矯正には精密な診断が欠かせませんので、口腔内スキャナーを使い3Dデジタルデータとしてお口の中を把握するためのシステムと、頭部の精密なエックス線画像を撮影する装置などを導入しています。従来の印象材による歯の型採りが苦手な方は案外多く、矯正の診断だけでなく、例えばセラミックのかぶせ物の型採りでも活用して患者さんの負担軽減を図っています。印象材や石こうのように収縮膨張がないので、できあがったかぶせ物などの技工物の精度も高く患者さんのフィット感も良くなると思います。またスキャナーによるデジタルスキャンだと、虫歯や歯並びの状態がより精密につかめますので、さまざまな診断に役立ちます。今後も患者さんの負担軽減やより良い治療のために進化を続けていきたいと思います。
良き話し相手になるのも診療で大切なこと
高齢の患者さんではどのようなお悩みが多いですか？
歯周病予防やケア、義歯・入れ歯のご相談が多いですね。ご高齢になると歯がそろっていれば良いというものではなく、咀嚼して飲み込むまでの一連の機能を維持する必要があります。そのため、高齢者歯科やリハビリテーションに関する講習会に参加し、知見を広げて診療に生かすようにしています。80歳で自分の歯を20本残すことが目標の時代から現在ではさらに高齢化が進行し、ちゃんと噛んで飲み込むという口腔機能の維持、オーラルフレイルの予防・改善が診療の目標となっています。まずは歯を失わないよう予防することですが、万一失ったとしても、補うための方法は必ずしもインプラント治療でなくてもいいと思います。義歯や入れ歯など適切な方法で補うことをめざし、しっかり栄養を吸収し健康寿命を延ばしてもらうことが大切。そして、患者さんにその意識を持ってもらうことが何よりも重要だと考えています。
診療する際に心がけておられることはありますか？
できるだけ患者さんのお考え・思いを尊重して望まれる方法で治療し、患者さんに寄り添うことが基本方針です。小児歯科でお母さんに立ち会っていただくのもその実践ですし、高齢の患者さんの場合、今はお一人で生活されている方も多いですから、話し相手になるのも大切なことだと思っています。ほかの歯科医院ではどうしても忙しくてゆっくり話すことができないことも多いでしょう。しかし私は話し好きな患者さんがわかっていますので、予約が入れば診療時間にも幾分余裕を持たせるようにしています。ほとんどは歯科と関係のない世間話でしょうが、人は話を聞いてくれる相手がいるだけで「元気で頑張れる」と思えるもの。さらに話の中で患者さんのほかの病気や服薬しているかどうかもわかりますので、他の診療科の先生に連絡する際の重要な情報になります。町のかかりつけ医として大切にしたいことです。
矯正の患者さんも多いのですか？
矯正歯科の専門家の先生に来ていただいていますが、マウスピース型装置を用いた部分矯正については私が担当しています。お口全体を考えたワイヤーを用いた矯正よりは期間や費用の負担も配慮されていますので取り組みやすいと思います。矯正開始から完了までは半年程度とお考えください。マウスピース型装置はお食事の時は外せますし、歯磨きも通常どおりできますので、生活する上でのストレスも少ないと思います。今はお母さま方のお子さんの歯の健康に対する意識が高く、お子さんの矯正を希望する方が増えています。良い歯並びは今後の健康的な人生に大きく貢献しますから、とても良いことですね。
訴えはもちろん口腔全体の異変にも気をつける
蔵戸田歯科医師会でもさまざまな活動もされておられます。
もう8年ほど蕨戸田歯科医師会で活動しています。蕨のイベントの一環としてお祭りの実行委員なんかもしているので、患者さんから声をかけていただいたり、またイベントのご縁で来院してくださったり、さまざまなご縁が広がっています。他にも、十数年続けている校医の仕事もあります。長く地域や子どもに関わる仕事をさせていただいていると、今の子どもはお口がきれいだなと感じます。お母さん方の意識の高さの現れでしょうか。とても良い傾向ですね。この調子で予防歯科への意識を地域ぐるみで高めていければいいですね。
スタッフさんもとても明るく優しい対応ですね。
スタッフたちも私に協力しながら明るい雰囲気で運営できるよう心がけてくれています。いつも院内がきれいに整理整頓されているのはスタッフのおかげ。実は私はスタッフから「怒らない先生」と言われています。開業前の分院長時代に学んだマネジメントの考え方で、患者さんへの視線は同じにして、歯科医院を良くすることならなんでも言いやすい雰囲気にしようと決めたのです。そのためか出産などで一度辞めたスタッフが戻ってきてくれる、あるいは手が足りない時には手伝いに来てくれる人もいて大いに助かっています。
今後の展望をお聞かせください。
おかげさまで地域の皆さまに受け入れていただき、ここまできました。患者さんのご家族を紹介していただいたり、小さい頃から長く通っていただいたり。振り返ると18年の重みを感じます。今後も患者さん方のお役に立てるよう自分磨きも欠かさずにやっていこうと思います。新しい機材を入れながら当院でできる範囲の診療を提供したいですね。口腔がんはまれな病気ですが命に関わりますから、日頃から主訴のほかに口腔内の状態は必ず確認しますし、粘膜病変の変化などももっと勉強していきます。また血液検査がある医科と違い、歯科は数値化できない部分も大きいので、読影などの経験則と新しい知見を合わせて診ていくことを心がけています。とはいえ、すべてできるわけでもないので、見極め、整理しながら時には専門家の先生に引き継ぐ、そうした仕組みづくりを歯科医師会とともに進めていきたいですね。
