たまきクリニック (目黒区/自由が丘駅)
玉木 優子 院長の独自取材記事
自由が丘駅前という場所柄、買い物ついでに立ち寄る人も少なくないという「たまきクリニック」。受付から診療室へ向かう通路は、神社の鳥居を思わせるようなデザインが施され、通るだけで新鮮な気持ちになるようだ。院長の玉木優子先生は、西洋医学のみならず漢方内科など、さまざまな診療を取り入れている。どれも先生自身が体験してから取り入れた治療ばかりだと、笑顔で話してくれた。
心の問題をケアしたい
医師を志したきっかけをお聞かせください。
父が口腔外科の医師、母も歯科医師だったため、ごく当たり前に私も医療に携わることを選んだように思います。父は曹洞宗の禅寺の生まれということもあり、人の生死や倫理観についてふれる機会が多く、その影響も少なからず受けていると思います。
ご両親から教わったことなどありますか?
父は大の話し好きで、休みの日ともなるとたくさんの話を聞かせてくれました。答えが出るような話題でなく、尊厳死についてどう考えるのか、倫理的な観点から医療者はどう人の死と向き合うべきか……など、当時の私にとっては理解が難しい哲学的な話ばかりでした。しかし、経験を重ねていくにつれ、父が言っていたことが少しずつ理解できるようになりました。といっても、まだまだわからない部分が多いのですが。もちろん、母も医療に携わる大先輩として学ぶことは多いですね。ところが、母から学んだことといえば、哲学的な父とは対照的に超現実的なことが多いですね。家事の手の抜き方は母から学んだ代表的な教えかもしれません(笑)。
口腔外科や麻酔科などさまざまな診療科を経験されていますね。
父の影響で最初は口腔外科に入局しました。結婚を機に筑波に移り麻酔科に入局しました。東京に戻ることになり、母が会長を務める山下診療所で内科の医師として患者さんと接している時に、心の問題を抱えている患者さんの多さに気がつき、心療内科にも興味を持つようになりました。心と体は密接に関連しているので、患者さんの心までケアする必要があり、内科だけではカバーしきれないと思ったからですね。
漢方も自分自身の経験から
漢方内科なども取り入れているそうですね。
そもそもは私自身が病気になったことがきっかけです。医学部の学生だった頃に難治性の潰瘍性大腸炎にかかり、わらにもすがる思いで試したのが漢方薬でした。半信半疑でしたが、私の体質や症状に合っていたようでした。その経験から、西洋医学だけにこだわらず、いいものは取り入れていくというスタンスになりました。漢方薬をはじめとする東洋医学は西洋医学とは違ったアプローチです。西洋医学が縦糸だとしたら、東洋医学が横糸といった感じで、2つを上手に織り合わせるようなつもりで診療を行っています。
玉木先生が大切にされている考え方を教えてください。
「元気」という字は元の気に戻るという意味です。当院にお越しいただくことで、本来のご自分を取り戻していただくためのお手伝いができたらと思っています。東洋医学の考え方には、生命エネルギーである「気」というものが存在し、気の通路を経絡と呼んでいます。気の流れを円滑にし、免疫力、治癒力、調整力にアプローチすることが健康状態に関わるという考え方です。呼吸を整えることは脳の休息にも関連しているとされ、潜在意識の働きによって不調部位の回復力にも影響するのではないかと考えられています。座禅の瞑想状態に近いといえばイメージしやすいでしょうか。
休みの日はどのように過ごされていますか?
漢方などの東洋医学を取り入れているせいか、ストイックな生活を送っているように見られてしまいますが、休みの日はダラダラしていているんですよ。診療で患者さんのお話を聞く時に気持ちに余裕がないと聞くことはできませんし、医師が疲れた顔で診療していたら、患者さんもがっかりしてしまうと思うんです。少しでもいい診療ができるように、休みの日はのんびりと何も考えずに過ごして、心身ともにリセットするようにしています。
虹のように色とりどりな医療で幸せの架け橋に
診療の際に心がけていることをお聞かせください。
気功の考えでは、体にたまった悪い気を吐き出さなければ、良い気を取り入れることはできないといわれています。患者さんは、何か困ったことがあったり心配なことがあってクリニックに足を運んでいると思いますので、まずは、その気持ちをしっかり受け止めて、苦しい気持ちやつらい思いといった悪い気を吐き出して、少しでも気を楽にしていただきたいですね。また、医師である私にとっては、これまで何度も診断をつけたことのあるありふれた病気であっても、患者さんにとってはどんな病気であっても病気というだけで少なからずショックを受けるものです。その思いも受け止めていきたいと思っています。経験を重ねていくうちに、そのような当たり前のことすら忘れてしまいそうになります。どんな時でも初心を忘れずに、患者さんの立場や気持ちを理解した診療を心がけています。
患者さんとの思い出やエピソードをお聞かせください。
たくさんの患者さんから数多くのことを学ばせていただいていると、日々実感しています。心療内科では、患者さんの育ってきた環境についてなど、深くお話を伺うことがあるのでなおさらなのですが、それぞれに違った価値観を持ってらっしゃることがわかります。時には信じられないような価値観を聞くこともあります。信じられないと拒否するのは簡単ですが、患者さんの立場になって理解したいと思い、話に耳を傾けています。そのようにしているうちに私の考え方の幅も少しずつ広がっているんでしょうね。毎日、患者さんに成長させてもらっています。
今後の展望をお聞かせください。
患者さんのお一人お一人が幸せになれるように、さまざまな医療でお手伝いをしてきたいと思っています。言うなれば、虹のように色とりどりな医療で皆さんの幸せの架け橋となれれば幸せですね。西洋医学と東洋医学を融合させた全人的統合医療をめざし、病気の予防やエイジングケアなどを積極的に取り入れていきたいと思っています。不調になってから来る場ではなく、健康を維持するための場として気軽に来院できる地域の身近なホットステーションとして、医療を提供していきたいと思っています。