本宮歯科医院 (横浜市青葉区／たまプラーザ駅)
本宮 勇人 院長の独自取材記事
「現在、日本人が歯を失う一番の原因が歯周病といわれています」と話すのは、たまプラーザ駅南口から徒歩1分の所にある「本宮歯科医院」の本宮勇人院長。日本歯周病学会歯周病専門医資格を持つ、歯周病治療のスペシャリストだ。2008年の開院以来、「しっかり説明をした上で納得できる治療を」をモットーに、歯周病の予防とメンテナンスから、歯周組織再生療法を併用したインプラント治療まで広範にカバーしている。歯周病専門医だからこそ可能な診療の内容を中心に、いろいろと話を聞いてみた。
プラークコントロールで虫歯、歯周病の原因に迫る
来年には開院15周年を迎えられると伺いました。
はい。診療を続けることで歯周病に着目した診療を行う当院の方針が広く周知され、その治療のために来られる方が増えたと感じています。ウェブなどで情報を調べた上で、遠方からも来院され、歯周病治療のためにとても大切な定期通院を習慣にしていただいている方も多くなっています。歯周病治療には歯周組織再生療法といった選択肢もありますが、何より大切なのは予防です。そのために欠かせない日頃のチェックと定期的なメンテナンスを当たり前と捉えることができる、いわゆるデンタルIQが高い方が増えてきていることをうれしく思っています。
開院当初から歯周病に特化した診療を行っているそうですね。
虫歯を削る治療は悪くなった部分を除去しているだけの対症療法なんです。虫歯になってしまった原因を取り除かなければ、いずれは再発も避けられないでしょう。原因に迫る治療が必要ですが、虫歯や歯周病の原因である口腔内細菌は、口腔洗浄剤などでは表層しか除去できません。歯科医院での徹底的なクリーニングとともに、ご自宅での適切な歯磨きで、プラークコントロールをしていく必要があるのです。歯周病は痛みなど自覚症状があまりないうちに進行していくことがほとんどですが、前段階の歯肉炎の時点で止められれば歯周病まで進行しませんし、早く治療を始めれば将来的に多くの歯を残すことも期待できます。長くお口の健康を維持するためには、予防を含む歯周病治療がとても大切なのです。
具体的にはどのような治療を実践していますか？
当院ではセルフチェックシートを作成し、11項目中2つ以上当てはまる場合は、歯周病の確率が高いと予測します。歯磨きの際に歯茎から出血するようなら要注意。歯茎が腫れていたり、歯が動いたりするようなら、かなり進行している可能性もあります。歯周病治療で一番重要なのは、症状や病気の原因である菌を増加させないことです。そのために、歯石を除去して正しい歯磨きを習慣づけていくことで、歯周病菌の塊であるプラーク（歯垢）を減らす「プラークコントロール」を徹底しています。また、歯列不正や歯ぎしりなどの症状があると歯周病になりやすいので矯正を勧める場合もありますし、噛み合わせをかぶせ物で調整できる場合もあるため、その際は歯科技工士との連携で補綴治療を行うことも。歯並びは見た目の要素も大きいですが、歯磨きのしやすさにも大きく影響しますので、審美面にも配慮しながらきちんと歯磨きができるようにすることをめざしています。
ブラッシング指導から再生療法まで専門性高く診療
ブラッシング指導に注力しているのはそのためなのですね。
歯磨きは毎日のことですので、歯周病予防にとても大事なポイントなんですよ。ブラッシング指導では染め出し液を使ってプラークを赤く染め出して確認してもらっていますし、「ちゃんと磨こう」というモチベーションを高めていただくため、初回には顕微鏡でご自身の口内の菌の様子を見てもらうこともあります。さらに「プラークコントロールレコード（PCR）」を導入し、磨き残しを数値化できるようにしています。数値で出すことで、しっかり磨けているか、どの部分に磨き残しが多いかが理解しやすくなるのです。目標はプラークスコア20％。診療のたびに「今日は何％でした」とその日のブラッシングの結果をチャートにして皆さんにお渡ししています。ブラッシング指導だけで1時間以上かかることもありますが、ほとんどの方は3回ほどの指導で上手に磨けるようになるのではないかと思います。
インプラント治療にも注力しているとか。
重度の歯周病の患者さんは歯の土台となる骨がなくなって歯を失うケースが多いのですが、それを補う手段の1つがインプラント治療です。インプラントも骨がなければできませんが、歯周組織再生療法を用いることで、インプラント体を埋入する土台の骨を作ることが期待できるようになります。過去に「インプラントは無理」と診断された方でも、可能性はゼロではなく、歯周組織再生療法を用いて、インプラント治療が行える状態をめざすことが可能になる場合もあります。また、インプラントでは治療後の管理がたいへん重要です。インプラント歯周炎にならないように、当院ではインプラント治療後の歯磨きを中心とするケアと定期通院でのメンテナンスにも注力しています。
仕事でやりがいを感じるのはどんなときですか？
治療後患者さんの満足した表情を目にすることができたら、歯科医師になって本当に良かったと思います。重度歯周病の患者さんの治療を始める前に、まず本人の希望を聞いて、しっかり状況等を説明し、相談をしながら一緒に治療方法を検討した結果、例えばインプラント治療を選択したとします。インプラント治療をした後に、その患者さんのうれしそうな表情を見れたら、僕も自分のことのようにうれしくなりますし、時間をかけて信頼関係を築きながら行った治療で患者さんが満足してくれれば、喜びも大きいですよね。今後も皆さんに満足してもらえるよう、技術の向上に努め、患者さんと協力し合いながら歯周病治療に励んでいきたいと考えています。
医師として努力を続けた父の背中を追って歯科医師に
先生が歯科医師をめざされたきっかけは？
父の影響です。医師である父の姿を見て育ち、自分も人のために役に立つ仕事がしたいと考えたのです。父は循環器系を専門とする医師でしたが、子どもの僕からしたら仕事ばかりしているイメージでした。でも、実際に自分が歯科医師になってみると、父が何をしていたのか見えてきました。大学院での歯周病の勉強はとても大変だったのですが、それを経験したことで、父のようになるにはたくさんの努力をしなければいけないことがわかったのです。循環器内科の専門家でありながら、他にもいろんな得意分野を持っていた父は、いつも忙しく夜遅くまで働いていました。歯科医師として仕事をするようになって、ようやく父のすごさがわかりました。
大学時代の思い出をお聞かせください。
大学時代は硬式テニス部のキャプテンでした。休みなしで練習や試合に行き、テニス漬けの毎日でした。厳しいキャプテンだったので、後輩は嫌がっていたかもしれませんね（笑）。大学卒業後はより専門的な知識を身につけたいと考え、大学院の歯周病学教室に入りました。そこでは朝から夜まで予防や歯周組織再生の研究や勉強を一日中やっていました。そのかいあって博士号を取得でき、歯周病専門医の資格を得ることもできました。コロナ禍でテニスは難しくなってしまいましたが、子どもが2人いるので、休日は遊びに連れて行ったり、習い事の送り迎えをしたり、今はそちらのほうが忙しいですね（笑）。
以前貴重な体験をされたそうですね。
大学病院の歯周病学教室で勤務した後、4月から予定していた歯科医院の勤務が、テナントの都合で12月まで延期になってしまいました。12月まで期間が空いたタイミングで、エチオピアへ行く機会がありました。そこで現地の人たちと接すると、部族や孤児の子どもたちは歯ブラシを持っていないんですよ。ちょうど歯ブラシをたくさん持って行っていたので、それを子どもたちに配ると、みんなすごく喜んでくれたのが今でも心に残っています。
読者へのメッセージをお願いします。
成人の多くが歯肉炎以上の歯周組織疾患を持つといわれています。歯周病は心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病といった病気との関連も指摘されている上、口腔内に炎症があるとバリア機能が低下して感染症のリスクを高めてしまうことも。疑わしい場合は、できるだけ早く歯周病専門の先生に相談してほしいですね。歯周病の治療には進行した場合は歯周組織を再生するための手術も含まれ、専門的な知識と技術が必要となります。専門の先生による診断を受けてから、かかりつけの先生に相談をするのも良いでしょう。まずは一度、専門の歯科医師を受診してみてください。
