浦野歯科医院 (奈良市/学園前駅)
浦野 洋史 院長の独自取材記事
近鉄奈良線の学園前駅より徒歩3分。のどかな住宅地の一角に「浦野歯科医院」はある。1977年の移転開業以来、対話を重視した診療と専門性の高い技術による治療で地域に根差してきた同院。父である先代に代わって2010年7月に院長に就任した浦野洋史先生は、アメリカでも歯科医療を学んだ歯科診療のエキスパートであるだけでなく、常に患者やスタッフへの感謝を忘れない優しい人柄の持ち主でもある。浦野院長が、「患者さんに喜んでもらえるようこだわって改装しました」という白い壁に木目調の内装が印象的な院内は、どことなく温かみがあってリラックスできる雰囲気だ。クリニックのこれまでの歩みや診療方針、今後の展望などについて、浦野院長に話を聞いた。
祖父と父の影響で歯科医療の道へ
クリニックの歴史についてお聞かせください。
祖父、父ともに歯科医師で、当院は、父が1977年にオープンしました。私自身は、歯学部卒業後アメリカに留学、帰国してから勤務し始めたので30年弱くらいでしょうか。14年ほど前から院長に就任し、現在に至ります。「親子で一緒に働いていて、よくけんかにならないね」と、驚かれることもありますが、基本的に患者さんは担当制ですし、お互いに信頼しあっていますからけんかにはなりません。もちろん最初から信頼関係があったわけではなく、これまでの長い経験の中で少しずつ着実に築いていった感じですね。当時は私も若くて突っ走っていましたし、父も、臨床経験の乏しい私のことをすぐに信用してくれたわけではありませんでしたが、今では親子というより、歯科医師の先輩後輩としてうまくタッグを組んでいます。
先生が歯科医師をめざしたのも、お父さまの影響が大きいのでしょうか?
そうですね。祖父も歯科医師でしたし、私の息子たちも現在歯学部に通っています。私は中学時代、救急医療のテレビ番組を見て「救命救急の現場で働く医師になりたい!」とも思っていましたが、医学部にはご縁がなかったようで(笑)、歯学部に進学しました。ですから、大学入学当初はそこまでモチベーションが高かったわけではありませんでしたが、時間がたつにつれて歯科診療の勉強が好きになり、父の姿を見て「極めたい」と思うようになりました。歯科医師になり父と一緒に働くようになったおかげで、父のすごさも改めて感じられましたし、結果的には良かったと思っています。
すてきな親子関係ですね。
少し前までは遠方の勉強会や講習会もいつも親子で行っていましたので、休みの日も一緒でした。私は、長いキャリアを持ちながら、常に新しい知識や技術への興味を失わない父をとても尊敬しているんです。歯科医師というのは経験がものを言う部分も大きいと考えているのですが、父は経験を積んでもなお、今の歯科医療がどうなっているか探究心を持ち続け、常に学びの姿勢でいます。1970年代に日本を飛び出してアメリカの歯科医療を学んだというところも尊敬しますし、1本の歯でも大切にし、丁寧に説明した上で治療に入るという診療スタイルがずっと変わらないこともすごいと思いますね。
どんな訴えにも、じっくり耳を傾ける
どのような患者さんが多くいらっしゃっていますか?
お子さんや中高生もいますが、年齢層は高めですね。日本では定期検診で再来院する割合が非常に低いといわれていますが、当院はきちんと定期検診に来院される患者さんが多く非常にありがたく思っています。何年か前から、より患者さんに安心感を届けたいと考え、定期検診も歯科衛生士さんだけでなく自分でも確認するようにしました。そうすると「歯ブラシを変えたこと」など患者さんの小さな変化に気づくことができますし、そこから「今でもよく磨けているけれど、さらにこうしていくといいですよ」といったアドバイスにもつながっていきます。基本的には、定期検診で大きな虫歯などを未然に防いでいくことが大事だと考えていますし、それが当たり前の世の中になっていけばいいですよね。神経など歯の内部の治療は当院で行いますが、矯正歯科や埋伏智歯は、信頼できる専門の歯科医院を紹介する形をとっています。
先生が、診療で大切にしていることを教えてください。
患者さんの声に耳を傾けることです。例えば、患者さんから「義歯が痛い」という訴えがあった時、「どこにも当たっていないし、ぴったりフィットしている」と感じても、そこからさらにひもといて診察することを大切にしています。「一番よくわかっているのは、われわれではなく患者さん自身」と考えていますし、食事の時にその部分がどうなっているかなどを私は確認できないわけですから「大丈夫ですよ」とは言いません。じっくり話を聞くと、調整するところが見えてくるかもしれませんし、患者さんからさらなる訴えや質問が出てくることも考えられます。求められたことには丁寧に、実直に応えるようにしていますね。「安心しました」「よくわかりました」と不安を解消して笑顔で帰っていかれたら、私も「良かったな」とうれしくなります。
クリニックの雰囲気が良いのが伝わってきます。
ありがとうございます。以前はもう少し大所帯でやっていたのですが、現在は歯科衛生士1人、歯科助手2人、受付2人でやっています。少数精鋭だからこそコミュニケーションも円滑に行い、開業してから今が一番うまく回っていると感じています。人数が減った分、スタッフ一人当たりの負担が増えていないかは気になっていますが、スタッフ皆さん本当によく気がつきますし、私自身もとても心地良く診療できているのでいつも感謝しています。患者さんとももっとじっくり関わりたいですし、さらにクオリティーの高い治療をめざしていきたいので、現在5台あるチェアを減らしてもいいかな、とも思っています。
患者に「安心感」を提供していきたい
休みの日はどのように過ごしていますか?
家族と過ごすことが多いです。自宅でゆっくりというよりは出かけることが多く、先日は妻と愛犬と、京都までドライブし、桜を見てきました。愛犬との時間は本当に癒やされます。5月の連休は県外にいる息子たちも一緒に、白馬でのんびり山々を眺めて過ごしました。年を取ったのか「疲れが取れない」と感じることもあるのですが(笑)、健康に暮らせていることに感謝しています。
今後の展望を教えてください。
定期検診やメンテナンスを通して、患者さんご自身がきれいな口腔状態を維持するのを手伝い、誘導するというコンセプトはこれからも変えずにいきたいです。私にとっては患者さんに「こんなにきれいに磨いてくださってありがとうございます」と言えるのが喜びなので、これからもそんなふうに患者さんと関わっていきたいですね。それがひいては予防につながり、虫歯もなくなり……と好循環につながっていくと思うのです。そうした上で、デジタル化といいますか、例えば、今は手鏡で見てもらっている歯の状態をモニターで一緒に見られるようにしたり、デジタルスキャンによる型採りを導入したりして、より患者さんに負担の少ない、かつ精度の高い治療を提供していきたいですね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
患者さんが「自分に合った歯科医院」を見つけることの難しさを感じています。知識や技術があるだけが「良い歯科医師」ではありませんので、まずは実際に話をして、人となりを感じていただくのが一番かと思います。現在はセカンドオピニオンを聞きに行くのも一般的になってきましたし、訴えに対する対応などを見て、求めているものと違うと思ったら治療に入る前に別のクリニックに変えても問題ありません。私は海外でも先進の治療を学んできましたが、それも良い意味で「どうでも良いこと」だと思っています。先日、患者さんの奥さまから「主人が『あんなに丁寧に対応してくれた歯医者さんは今までなかった』と、とても満足していました」と言っていただきました。大切なのは患者さんご自身がどう感じるかだと思います。当院に来ていただき、信頼できると感じられたら、私も治療という形で応え、安心感を提供していきたいと思っています。