大垣歯科クリニック (大垣市／大垣駅)
市橋 和雄 院長の独自取材記事
大垣駅から車で約10分の場所にある「大垣歯科クリニック」。2002年に父の後を継ぐかたちで、市橋和雄院長が開院。吹き抜けで窓から自然光が差し込む開放的な診療室は、あまりの気持ち良さに寝てしまいそうな雰囲気が漂う。リラックスできる空間になっているのは、それだけではない。「難しい専門用語は使わず、わかりやすい説明を心がけています」と市橋院長。他にも、虫歯を「削る」と話すと緊張感を与えるので、「整える」や「きれいにする」と言葉を吟味しながら、患者の立場に立った診療を行っているという。また、時代の流れに応えるため、現在は訪問診療を行う体制を構築中。休日は遊び盛りの子どもたちとよく遊んでいるという子煩悩な市橋院長に、治療へのこだわりや普段心がけていることなどを聞いた。
子どもから大人まで安心して通える歯科医院づくり
まずは、大垣市に開院された理由から伺います。
私の生まれは岐阜市なのですが、幼少期に大垣市へ引っ越し、高校まで過ごしました。その後、大阪歯科大学に進学し、大学病院と大阪市内の開業医のもとで経験を積みました。この地で開院したのは、歯科医師である父親が高齢で長時間の診療が難しくなり、私が継ぐことになったからです。もともとは「大垣歯科」だったのですが、父親が昔から診ていた患者さんも多く、名残を残そうと「大垣歯科クリニック」という名前にしました。当初は2階で開業していましたが、ご高齢の患者さんにとっては階段の上り下りが困難だと思い、駐車場にしていた場所に移転し、15～16年たちます。この辺りは車がないと移動が難しい土地柄なのですが、駐車場を広く確保していたのは、父親に先見の明があったからでしょうね。
患者さんの層について教えてください。
午前中はお子さん連れの主婦や年配の方、午後になると学校帰りの学生、夕方を過ぎると会社帰りの方などが多いですね。ありがたいことに遠方から来院される患者さんもいます。大阪と大垣の患者さんに違いを感じるのは性格ですかね（笑）。大阪にはせっかちな方が多く、大垣にはのんびりした方が多い感じがします。最近、主訴として気になっているのは、歯と歯の間に食べ物が詰まる方が増えていることです。かぶせ物や銀歯の不具合、歯周病による歯茎の変化などが原因として考えられますが、同じような症状に悩まれている方は一度検診を受けてみてください。
院内が開放的でとても気持ちがいいですね。
そう言っていただけるのはうれしいです。個室ではなく、オープンな感じにしたのは、患者さんが圧迫感を感じることなく、治療前の緊張感を和らげられたら、と思ったからです。また、個室にしてしまうと、私の目が行き届かなくなってしまう恐れもあるので、それは避けたいというのもありました。患者さんからもリラックスできると好評ですね。吹き抜けから暖かい日差しが入るので、たまに寝てしまう方がいるくらいです（笑）。また、開院した時から、お子さんに来てほしいと考えていたので、デフォルメした動物を壁に描いて、かわいらしくしました。お子さんが安心して通えるクリニックならば、家族の方にも通ってもらえると思うので。当院は子育て経験豊富なスタッフばかりなので、保護者の方も安心して受診していただけると思います。
患者の気持ちを思慮した言葉選びでわかりやすく説明
こちらには歯科技工士もいらっしゃるそうですね。
はい。当院がこの場所に移転する前からずっと勤務してくれているベテランの女性歯科技工士です。ほぼ常駐していますので、急に入れ歯が割れてしまった、金具が外れてしまった等の義歯の不具合には随時すぐに対処できる体制を整えています。作業時間は少々かかりますが、その日のうちに対処するので食事でき喜んでいただけているのではと思っています。院内に技工士がいることで、私自身はほかの患者さんの治療にとりかかることができるのも私としてはうれしいですね。
先生の診療方針を聞かせてください。
難しい専門用語を使わず、わかりやすい説明をすることを心がけています。治療前には、エックス線写真や口腔内を鏡で見てもらったり、イラストなどで症状のメカニズムや経過を患者さんに説明します。その上で、症状を防ぐにはどうした良いか説明し、これが良いと思われる治療法の提案はしますが、最終的な決定は患者さんに委ねるようにしています。例えば、親知らずの抜歯の場合、「抜くとどうなるか？」「抜かずにそのままにしておくとどうなるか？」と先々のことを話しながら、結論を出してもらっています。患者さん自身のお口のことなので、一方的に治療を進めるようなことはしません。また、患者さんにとっては医療費も気になると思います。かぶせ物などを装着される際には前々から概算をお伝えし、自費診療を検討される方には保険診療との比較も含めて選択していただくようにしています。
お子さんと接するときに心がけていることはありますか？
特に初めて歯科にいらっしゃるお子さんには、まずここがどんなところか理解してもらうことが大事だと思っています。「歯磨きは好き？」「どんなお菓子食べてるの？」などのお話から始めて、仮に虫歯があったとしてもいきなりは触らず、バキュームで遊んだりしながらどんな場所なのか理解してもらうんです。麻酔のときは怖がるお子さんも多いので特に気をつけていますね。「注射」とは言わずに「お薬塗るね」と言って、タオルで見えないようにしてから麻酔をします。お母さんたちにも、お子さんには「注射」とは言わずに連れてきていただくようにお願いしています。
患者に寄り添い、地域医療にも貢献する
診療での印象的なエピソードがありましたら教えてください。
少し趣旨から外れるかもしれませんが、10数年前、私自身が患者として内科を受診したときの経験を反面教師にしています。それは初診から1週間後、再診に行くと、先生が私のことをまったく覚えておらず、「どうだったかな？」とずっと困っていたことです。当時私はすでに歯科医師でしたが、自分の患者さんにこんな姿を見せたら不安しか感じないだろうなと思いました。それから、カルテに治療内容の他に患者さんの細かい情報をメモするようになりました。「性格的に怖がり」という情報を知っていれば、より繊細に口腔内を診るようにしますし、患者さんにとってもメリットは大きいと思っています。また、大人の方に麻酔の処置をするときは、「次回は麻酔をしますからね」と前もって伝えることで、心の準備をしてもらっています。
今後の展望を聞かせてください。
今後ますます少子高齢化が進んでいくことが予想されます。今は何の問題もなく通院されている患者さんでも、数年後には通院が難しくなる方が現れるかもしれません。すでに一人暮らしをされているご年配の方などは、そのような状況にあるという話を聞きます。歯科医師会でも、訪問診療の推進は大きな課題になっています。私もたまに老人ホームに足を運んで治療を行うことはあるのですが、まだまだ十分には行えていません。設備の面などクリアしなければいけない問題はありますが、体制を整えて戸別の訪問治療を増やしていきたいと考えています。
最後に、読者にメッセージをお願いします。
当院では、患者さん一人ひとりの希望に沿った治療を行っています。これまで歯の治療で嫌な思いをして、歯科医院に行きたくないと考えている方も少なくないと思います。しかし、それによって短期間で治療できるはずの虫歯や歯周病が治療できなくなってしまいます。場合によっては抜歯せざるを得ない事態になることもありますし、歯を失うということは、治療を行う歯科医師にとっても苦痛なことなんです。100人の歯科医師がいれば、100通りの診療があるというのが私の持論です。虫歯も歯周病も早期に発見、治療すれば比較的短期間で治療を終わらせることができます。怖いと思わせない治療を心がけていますので我慢をせずぜひ一度ご来院ください。また感染症対策として予約がなるべく被らないよう、お待合室で密にならないような工夫をしておりますので、安心してお越しいただければと思っています。
