栄駅前矯正歯科クリニック (名古屋市中区／栄駅)
芝崎 龍典 理事長の独自取材記事
栄駅から徒歩1分の場所にある「栄駅前矯正歯科クリニック」は50年の歴史をもつ矯正歯科専門医院。院内は明るく清潔感にあふれ、新緑の季節には診察室の大きな窓から久屋大通公園の鮮やかな緑が目に入る。理事長の芝崎龍典先生は、広島大学、長崎大学で多くの経験を重ね、名古屋でも多くの臨床を積むベテラン。2017年からは同法人「栄アイ歯科クリニック」を隣に開業し、一般歯科との密な連携が図れる体制を確立。患者もより便利に通えるようになった。今後はより質の高い予防やMFT（舌の筋力トレーニング）などを統合させた流れを確立したいと熱く語る芝崎先生に、クリニックや矯正治療のことから、プライベートまでたっぷり語ってもらった。
形と機能の両方を達成する矯正治療を
前勤務先の長崎から名古屋にいらっしゃったと伺いましたが、名古屋の印象はいかがですか？
長崎大学に勤めていたとき、毎年講演のために外部から来てくださる口腔外科の教授がいらっしゃって、その先生にそろそろ実家のある大阪で開業しようと考えていると話していたところ、名古屋のこのクリニックのお話がありました。お話を伺ってみると、クリニックでは伝統的に外科と矯正治療を一緒に行ったり、先天性異常の子どもなどへの治療も行っているということで、歯科医師としてその治療内容にとても魅力を感じて、院長の浅見勲先生にお会いして、こちらに勤務させていただくことになり、名古屋にやって来ました。名古屋の印象は、きれい好きで、きめ細かな人が多い感じがします。患者さんにしても、医療従事者にしてもそうですね。
どんな患者さんが多く来院しますか？
30、40歳代の女性が増えています。ここ40年のデータを見ても、どんどんそれが顕著になってきていて、以前は7、8割がお子さんだったようですが、今は逆転して7割以上が成人で、男性も増えてきています。このような状況があるのは、一般の歯科医院でも矯正治療を行うようになってきたためかもしれません。虫歯などで歯科医院に行って、そのままそこで矯正治療もできますので、当院のような矯正治療専門に来る前には、すでに子どもの頃に矯正治療をしている人が圧倒的に多い。ですから、当院に来院するのは難しいケースであったがために、治療を先延ばしにしていた大人が多いのだと思います。
こちらのクリニックならではの治療法はありますか？
当院では、矯正治療が終わって最終的に仕上がったときに、きちんと噛めるような状態を実現するための検査を最初に行ってから治療に入ります。噛むというのは、筋肉を使って噛んでいるのですが、バランスよく噛んだり、頬の力や舌の使い方などがスムーズに行えるように、その機能に配慮して治療しています。また、高齢になったときに歯並びが悪いと、舌の位置が下がって誤嚥を起こしやすい状態になっています。仕上がったときに舌が適切な位置にあることは、血行が良くなって顔色が良くなることや、高齢になったときの誤嚥を防ぐことにもつながります。矯正で歯並びをきれいにするというだけでなく、生涯しっかり噛めるということも大切なのです。当院では形と機能の両方を達成するということを第1の目標にして治療しています。
「生涯現役」であるために、興味あるテーマに取り組む
印象深い患者さんはいますか？
喉と顎の骨がつながっていないという先天性異常のある患者さんで、私が3年ほど診ていた高校生の子がいました。その子が受験の時期になって「歯学部に行きたい」と言っていたのを聞いてとてもうれしかったですね。治療が難しいケースだったこともあって、とても印象に残っています。このような患者さんが印象深くなるのは、私の体験にも関係しているかもしれません。私は子どもの時に滑り台で転んで矯正歯科で治療を受けたのですが、その時に治療をしてくれた先生が、私が入学した1年後くらいに教授として広島大学にいらっしゃったのです。子どもの時にも、大学時代・大学院時代も、大学を出てからも、その先生にお世話になって影響を受けました。
勉強会やセミナーの講師など、とても活躍されていますね。
勉強会の場では、70、80歳代でも活躍していらっしゃる先生方がいらっしゃいます。私は「生涯現役」が夢なので、そうなりたいと思っています。また、自分が取り組んでいるテーマを発表して、それに対する意見を聞くことができるので、勉強になります。センセーショナルな発表ができるわけではありませんが、日々の臨床で気になることはたくさんありますので、例えば、MFT（舌の筋力トレーニング）に関するものなどを世の中に出すことは、日々頑張ってくれているスタッフにとっても一つの報いにもなりますし、勉強にもなります。セミナーの講師は依頼があった際に行っています。
休日の過ごし方や趣味をお聞かせください。
休日は子どもと過ごすことが多いですね。趣味はカメラを買うことです。良いレンズを仕入れたときはうれしいですね。レンズは結構高価なので、欲しいレンズのことをいろいろ調べて、お小遣いをためて、とうとう手に入れたときはうれしいものです。時々、子どもを撮ったりしますが、撮るというより、そのレンズのポテンシャルをいろいろ考えているのが好きですね。そうは言っても、名古屋に来たときはいろいろな場所に出かけて撮るのが夢だったのですが、なかなか余裕がなく、まだ実現できていません。今は、近くの鶴舞公園へ出かけるくらいですね。
何歳からでも、何歳になってもスタートできる矯正治療
予防歯科についてお聞かせください。
患者さん自身によるセルフケア、われわれ専門家によるプロケアを両立しながらしっかりケアを行うことで予防になると思います。年齢が上がると、若い時のように手先を器用に動かすことができなくなりますから、ずっと同じ形や固さの歯ブラシを使って予防はできません。現在の環境や年齢に合わせた予防プログラムを常にアップデートしていく必要があります。磨き方などは一人ひとり違いますので、当院では矯正治療のカルテと同様に、予防のカルテも詳細に記入して、スタッフ皆がそれを把握できるようにしています。
小児が矯正治療を始める時期はいつ頃がベストなのでしょうか？
お子さんの歯並びや骨格などによって開始時期は異なります。歯並びは哺乳瓶の種類や使い方、授乳にかかる時間など、授乳中に受ける影響もありますから、われわれは何歳になったら来てくださいとは言いません。たとえ0歳、1歳でも、何かしら歯並びに関する悪い影響を取り除くことができます。その子が成長していく間に歯並びが良くなって、何も治療をすることがないということになれば、むしろそのほうがいいのです。矯正装置を着けるタイミングは、骨格などから判断して必要な時期に行います。例えば、上顎の発育が悪い場合は、噛み合わせを考慮してそれを整えるようして、歯の矯正というより上顎自体を矯正します。
コミュニケーションで意識していること、治療する際のモットーはありますか？
矯正治療は30分～1時間はかかりますので、時には雑談をします。患者さんに気持ちのゆとりがあるかどうかも、治療の上では欠かせませんので、雑談の中からそれをうかがい知ることができます。患者さんの特徴をつかみながら、緊張感をなくしていけるようなコミュニケーションを意識しています。治療する際のモットーは、できるだけ痛みを和らげることです。私自身が、治療や器具による痛みや不快感が苦手なものですから、一番の注意を払っています。自分が矯正治療を受けたときに一番嫌だったのが、痛かったことです。それが大学院の研究のテーマになりました。痛みの種類や程度、質を常に気にしながら治療しています。また、初回のカウンセリングを無料で行っております。カウンセリングでは、こちらの治療を押しつけるのではなく、患者さんのニーズに合わせて一緒に治療プランを考えていきますので、気になったら気軽に相談してほしいですね。
読者へメッセージをお願いいたします。
「何歳から矯正治療ができますか？」という質問をよくいただくのですが、同時に「何歳まで矯正治療ができますか？」というお問い合わせも多くあります。実は、70歳でも80歳でもできます。今はインプラントや入れ歯を入れるときに、残っている歯だけでも整えたいという要望もたくさんあります。いくつになってもできることはありますので、何らか気になることがあれば、気軽に相談していただきたいと思います。
