加藤 伸一 院長の独自取材記事
加藤耳鼻咽喉科医院
(堺市北区/中百舌鳥駅)
最終更新日:2023/11/07
大阪メトロ御堂筋線なかもず駅、南海高野線南海中百舌鳥駅から南西へ約2km。百舌鳥古墳群にもほど近い場所にある「加藤耳鼻咽喉科医院」は、この地で30年以上にわたって地域に根差した診療を担ってきた診療所。2023年には内装の全面リニューアルを果たし、一層快適な環境へと生まれ変わった。「特別な診療はしていない」という謙虚な言葉の中にも医師としての矜持が感じられ、その飾らぬ人柄が幅広い層に慕われていることもうなずける。そんな加藤院長の診療哲学や現在の心境など、ベテラン医師ならではの話をじっくり聞いてみた。
(取材日2023年8月21日)
病気と付き合うのではなく、自分を大事にしてほしい
診療方針を教えてください。
今はネット社会が進んでいて、いろんな情報を患者さん自身で入手できる時代になっています。なので以前より、自分の体のことを理解し、健康維持ができている人が増えてきているのではないかなと思います。自分の状態を知って、自分の体本来の力が発揮されて、少しでも良い状態が長続きできるようになってほしいですし、そのためにも私は患者さん一人ひとりに向き合った治療を行っています。
診療で先生が大切にしていることは何ですか?
耳鼻咽喉科はその名のとおり、耳・鼻・喉をトータルに診察していく必要があります。人はだいたい鼻で呼吸しますが、感染症の場合、鼻詰まりから耳の不具合に発展していくケースもあります。また、鼻の防除システムでもある鼻の粘膜が湿っていることで、感染の防御が最大限に発揮されると考えています。例えば、喉が痛い時に鼻水が出てくると楽になります。そのために鼻の乾燥状態が起きないように処置をしています。耳鼻咽喉科で扱う器官は生命の入口であり、いかに全体として捉えていくかということを自分の診療の基本としています。
症状が長引く場合、どのような心構えが必要ですか?
長く通っておられる患者さんを、1日でも早く治してあげたいというのが医師の共通の思いです。ただ、通院が単なる日課のようになってしまうと治るべきものも治らないと考えています。時にはあえて受診のない期間を1ヵ月ほど設け、患者さんが自分の体と真剣に向うことも大切だと思うんです。途中で疑問が生まれたり、具合が悪くなる心配があれば、電話で相談してもらったり、来院してもらっています。付き合うのではなく、やはり自分を大事にしてほしい。完全に打ち勝つことはできなくても、主体は自分になってほしいと考えています。
患者にとって最善な道筋を見つけることが開業医の役割
先生は病診連携に積極的とお聞きしました。
新規開業時にさまざまな先進機器をそろえ、自己完結をめざす先生が増えていると思います。設備を充実させて、科学的なデータを集めて治療する診療が重視されています。私は患者さんの話をよく聞き、仕事等の背景を詳しく聞くことも治療に結びつくと考えています。ただ独善にならないように積極的に紹介を行い、必要な検査を受けてもらっています。そして、患者さんにとって最適な診断・検査治療になるように努めています。
どのような診療体制が理想とお考えですか?
自分の体のことを詳しく知りたいという思いは誰でも同じでしょう。今はインターネット検索などで調べるのが当たり前の時代ですから、医師としてはそれ以上の知識を用意しておかねばなりません。ただし1人で診ていると、思わぬ見落としや思い違いをしてしまうリスクがあります。1人の患者さんを複数の医師が診ることで最適な治療をめざせることがあります。
理想の医療を実現するために、大切なことはどんなことですか?
自分のような開業医にできるのは、まず一次診療の窓口となって治癒への道筋を見つけてあげることではないでしょうか。日常生活を保ち、質を上げる方法を見つけられればと思います。また、いろいろな検査にはそれぞれに意味があります。その意味もわかる範囲で説明したいです。
上手な受診のコツは医師をうまく利用すること
他院での検査を相談しても問題ないのでしょうか?
当院に来られる患者さんの中には、私の診察ではなく、最初から大きな病院の受診を希望する方がたまにおられます。要するに、開業医の役割は窓口だけで十分という考えですね。もちろん、自分の力が至らぬせいだと思うと、少しがっかりしますが、その方の考えが間違っているとは思いません。もし病院で大きな問題が見つからなければ、ゆっくりと楽になる方法を考えていけると思います。患者さんが気にかけるべきは医師の顔色ではなく自分の顔色で、少しくらい身勝手と思われても自分の希望を伝える気構えも必要です。その分、ご自身の体には真剣に向き合ってほしいと思いますね。
休日はどのようにお過ごしですか?
私は絵を描くのが好きで、油彩に取り掛かると筆が止まらず、朝に目が覚めるとすぐに描きたくなってしまうこともあります。それでここ数年来は道具一式を手の届かぬ場所にしまい込み、もっぱら鉛筆やサインペンでその辺の紙の裏にデッサンする程度にとどめています。ビデオで撮った動画をテレビ画面上で静止画にして、それを見ながら写生の練習をします。あとは寝ているか、本を読むか、公園を散歩するくらいです。
最後に、読者へ向けたメッセージをお願いします。
耳鼻咽喉科の症状は治療が遅れて慢性化させると厄介ですし、気づかぬうちに聴神経腫瘍などの難しい疾患が潜んでいることもあります。しかし現在はMRIやCTといった検査機器もかなり進歩していますから、もし心配であれば、より精密な検査を受けるべきかどうか、ご近所の先生に率直に尋ねてみるのも一つでしょう。自分の体のことですから遠慮する必要はありません。日常生活が少しでも楽になるように、医師を上手に利用してください。聞かれた医師はドキッとするかもしれませんが、私はその患者さんにとって一番良いと思われる方法をアドバイスできればと思います。