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藤本 雅彦 院長の独自取材記事

フジモト眼科

(大阪市東住吉区/針中野駅)

最終更新日:2021/10/12

藤本雅彦院長 フジモト眼科 main

近鉄南大阪線・針中野駅から高架沿いに南へ2分ほど歩くと、実物大に近いキリンのフィギュアが出迎えてくれた。その足元にはシマウマをモチーフにしたベンチもある。2019年で開院から32周年を迎えた「フジモト眼科」は日帰り手術に力を入れており、3人の医師が常勤している。「病院の玄関に行くことをためらわせる『痛い』『怖い』というネガティブなイメージをなくし、手遅れという事態を防ぎたい」という藤本雅彦院長が心がけるのは気軽に受診できる環境づくり。キリン像の設置も、その一環だ。「明るく、やさしく、前向きに」をモットーに来院へのハードルを下げようと努める藤本院長に、診察時の工夫や、その背景にある思いなどについて聞いた。

(取材日2017年10月19日/情報更新日2020年1月1日)

銀行員から眼科の医師に転身した父の遺志を継ぐ

2015年に院長に就任されたのですね。

藤本雅彦院長 フジモト眼科1

院長としては4代目になります。初代は父の隆生(たかお)です。父は大阪大学工学部を卒業後、いったん大手銀行に勤めていました。ところが、結婚後に阪大医学部に入学し32歳で眼科の医師になって7年後の1987年に当院を開業いたしました。当時、白内障手術は入院が普通でした。お年寄りが多い地域なのに、近くには手術をする眼科の医療施設もあまりなくて術後の通院も不便でした。そのため地域への貢献も考えて日帰り手術をするために開業した、と聞いています。でもそれも5年です。44歳で腎臓がんで亡くなりました。私はまだ高校2年生。母は薬科大を卒業していましたが、父の代わりはできません。父の母校の阪大の眼科学教室の紹介で多くの先生方にサポートしていただいている間に私が眼科の医師になって後を継ぎました。

小さい頃から医師を志していたのですか?

小学校のときは野球が好きで毎日のように暗くなるまで練習していまして「野球選手か、眼科の医師になる」と言っていました。父が亡くなって医師ではない母が診療所を運営する苦労も目の当たりにして医師になる決意が固まりました。ひとつ下に妹がいまして彼女は歯科医師です。「羽目を外してはいけない」と言いますよね。母はそれにかけて「『歯目(はめ)』を外してはいけないので、子どもは歯医者と目医者にした」と笑います。私には小学生の息子が2人いますが、彼らにとっては祖父となる初代院長の遺志を引き継いで地域に貢献できる医師になってもらいたいと思っています。

院長に就任されるまでは?

藤本雅彦院長 フジモト眼科2

医学部を卒業してから阪大の眼科学教室に入局し、大阪労災病院や大手前病院などで勤務してから2008年4月に当院の副院長になりました。大学を卒業して臨床の現場に出た当初は「眼科ってこんなに忙しいんだ」と驚きました。それは想像以上で、緊急手術は毎日のようにありましたし、終電がなくなって病院に隣接した宿舎で寝泊まりすることは珍しくなかったです。そして当院で働き始めてからは、さらに経営に関わらないといけない上、スタッフ管理や採用面接もあって診察以上にやることが多くて驚きました。でも「お父さんに脳腫瘍を見つけてもらったのですよ」と話される患者さまもいらっしゃり、大病院よりも患者さまとの距離感が近くて、やりがいを感じています。

ステンドグラスに込めた思い

2012年に現在の診療所を新築されたのですね。

藤本雅彦院長 フジモト眼科3

今は来院者用の駐車場になっているスペースに3階建ての旧診療所があって隣に同じ階数で新築移転しました。開院25周年のときです。建物の延床面積は約1.5倍になりました。もちろんバリアフリーで以前は1階から3階まで分散していた待合室、検査室、診察室などはすべて1階部分に集約しました。2階にはキッズルームと手術室があります。旧院の手術室の待合スペースは大部屋スタイルでしたが、やはり自分が手術を受ける時のことを想像しても、緊張しているに違いない患者さまに少しでもゆったりとしていただきたいと思い、6つの個室にしました。キッズルームも待合室と別フロアですからお子さま連れのお母さま方に「他の患者さんに気兼ねしなくていいので助かる」と好評です。

他にもさまざまなこだわりがありそうですね。

待合室を吹き抜けにして25畳の壁面をステンドグラスにしたことも、そうです。例えば白内障の手術前と後で見え方が変わります。美しいステンドグラスで色や景色が楽しめることを実感していただきたいのです。それに動物には癒やしの力がありますよね。玄関にキリンやシマウマ、そして待合室に実物大のチンパンジーのフィギュアを置いているのも、そんな効果を期待していまして、それぞれに意味も込めています。例えばキリンは首が長くて遠くを見ることができますから、未来を見て成長してくださいね、というスタッフへのメッセージ。患者さまには今、治らない病気があったとしても未来には治る可能性もあるので希望を捨てないでという気持ち。シマウマは、色が白黒という点から、医療機関は曖昧であってはいけないので白黒をはっきりとさせようという方針、チンパンジーは、チンパンジーのようにみんなから愛され続けるように努力しますという思いです。

そのこだわりの姿勢はどこから?

藤本雅彦院長 フジモト眼科4

医療機関に「怖い」「暗い」「臭(くさ)い」という「3K」の先入観をお持ちになっている方は少なくありません。二の足を踏んでいる間に病状が進んだり、治せたものも手遅れになったりすることもありますから、来院へのハードルをできるだけ下げたかったのです。その「3K」を病院に「来たい」のKに、「来たい」を「期待」に変えていただき「希望」を加えた「3K」にしたいのです。そのために策定した理念が「患者様の『不安』を『安心』にかえ、『安心』を『希望』にかえ、希望を『見える喜び』、『生きる喜び』にかえます」でしてスタッフと共有しています。

患者の本当の望みに寄り添うために

白内障の日帰り手術に力を入れておられますね。

藤本雅彦院長 フジモト眼科5

父が地域の方々のために始めた当院開業の原点とも言える治療ですからメインに取り組んでいます。おかげさまで地元を中心に多くの患者さまに当院へお越しいただき、2019年は1056件の白内障手術を行いました(2019年1月~2019年12月)。手術の前の不安を少しでも軽減できるように当院では約20年前からオリジナルパンフレットを制作し、わかりやすく解説をしております。医師との一対一の説明はもちろん毎週金曜日に手術を控えた方の合同説明会も開いています。1回に参加されるのは約15人。患者さまにしてみると「同じ手術を受ける患者さんが、こんなにいるんだ」という安心感を覚える機会になり、患者さま同士の一体感も生まれてくるのだと思います。

普段の診療で心がけていることは?

とにかく患者さまの話を、よく聞いて何を望んでおられるかを理解することです。診察室に入ってこられる様子から始まって、五感を総動員して、じっくり話をしたいのか、早く帰りたいのかなどといったことも判断しますし「目は口ほどにものを言う」というのは本当で心が反映されますから目を見るのは大切。その上でセオリー通りでは手術を勧めるケースでも、失明に関わることでなければ、できる限り、ご本人が本当に望まれていることに寄り添うようにします。話すスピードも重要で、ゆっくりと話すようにしています。患者さまの気分も落ち着きます。特にお年寄りは耳も遠くなって、早口だとそれだけで拒絶されることがありますからね。

「院内セカンドオピニオン制度」も設けていますね。

藤本雅彦院長 フジモト眼科6

複数の医師による症例検討会です。私や家内の藤本陽子部長ら3人が常勤で、非常勤医師が6人以上いて、患者さまの望む医師が診察をさせていただきますが、時には混み合っていてご希望に沿えない場合があります。そんな場合、患者さまが本来希望されていた医師の意見を聴いて、それをお伝えできるので、納得していただきやすいのです。医師の間で意見が異なることもありますが、患者さまが悩まないよう整理して選択しやすいように説明します。技術の進歩で眼科手術の際の傷も小さくなってきたので、将来は日帰り可能な手術も増えるはず、患者さまの負担軽減のためにも、最先端の技術を常に導入して当院だけでトータルにケアできる範囲を広げていきたいです。「患者ファースト」を基本にして変化し「目の治療を通じて患者さまの人生も背負っていることを忘れてはいけない」という思いは変えません。

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