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藤谷 宏子 理事長の独自取材記事

藤谷クリニック

(大阪市天王寺区/大阪上本町駅)

最終更新日:2023/06/22

藤谷宏子理事長 藤谷クリニック main

近鉄大阪線・大阪上本町駅から徒歩7分。道をまたいだ百貨店の向かいのハイハイタウンの中に「藤谷クリニック」はある。同院は小児科、アレルギー科を標榜しており、理事長の藤谷宏子先生が診療を行っている。関西医科大学を卒業してから約15年勤務医として活躍した後、1993年に育児や子育てに十分に時間を取りたいという思いから開業。アレルギー疾患を中心に診療を行う。「アレルギーはすぐには治らないので根気よく向き合ってほしい」と言う藤谷先生に、専門とする小児のアレルギー疾患のことや、患者・家族についての想いを詳しく聞いた。

(取材日2017年6月22日/再取材日2022年8月8日)

小児医療の醍醐味は反応がダイレクトなこと

先生が小児科医を志した理由は何ですか?

藤谷宏子理事長 藤谷クリニック1

いろいろな方法で病気から子どもを守りたいという思いでした。そして、目的に応じて働き方を選べることも魅力に感じていて、研究などを通じて専門性を高めたい人は大学や専門病院で、地域の患者さんと向き合いたい人は開業医として働けます。今となっては子育てとの両立もできる開業医になれて良かったなと思っています。未来ある子どもを治すことはとても魅力的ですし、子どもはいつも正直で、治療を終えたときの喜びを素直に表現してくれる姿にうれしさを感じます。

アレルギー疾患の治療に注力されているそうですね。

ええ。長年アレルギー疾患のお子さんを中心に診療してきました。その中で感じるのは、アレルギーの治療は時代とともに変化するということです。クリニックでは、常にアップデートを重ねながら、先進の医療情報を提供するように心がけています。例えば一昔前ならば、食物アレルギーは完全除去が主流でしたが、今は「正しい診断に基づいた必要最小限の原因食品の除去」が基本となっています。離乳食も自己判断で除去するのではなく、むしろ専門家が安全な範囲を見極めたうえで摂取していくほうが、早期に耐性を獲得できると考えられています。また、一般的に食物アレルギーは乳児期に卵・牛乳・小麦粉を原因として発症するケースが大半ですが、最近は幼児期にナッツ類・魚卵・落花生、小学生以降で果物類・甲殻類(えび、かに)などによるアレルギーも増加しています。大きくなってから発症することもあるので、疑わしい場合はまず調べてみることをお勧めします。

貴院では、アレルギーの検査や治療法の選択肢を幅広く用意されているそうですね。

藤谷宏子理事長 藤谷クリニック2

アレルギー疾患は、何らかの原因があって発症します。当院では、その原因を突き止めることが治療の第一歩と考えており、一人ひとりに合った治療をめざすため、さまざまな検査や治療を積極的に取り入れています。一般的な血液検査やプリックテストはもちろん、舌下免疫療法、食物経口負荷試験など専門性の高い検査・治療も実施しています。また、最近は血液検査で測定できる種類も増え、素抗原だけではなくコンポーネントも測定できるようになり、より詳しく原因がわかるようになって適切な診断が可能となりました。さらにアトピー性皮膚炎の治療においては、ステロイドではないJAK阻害薬など新薬の登場で治療の幅も広がりをみせています。長年同じ治療を続けてもなかなか良くならないと感じている方は、改めてご相談にお越しいただければと思います。

親子の絆を深めるものとして、アレルギーを捉えたい

子どもにアレルギー疾患があるとき、家族はどのように向き合えば良いのでしょうか?

藤谷宏子理事長 藤谷クリニック3

私はアレルギーを大変な病気ではなく、努力が報われる病気と思っています。風邪は安静にすれば自然と快方に向かうことが多いですが、アレルギーは短期間では治らず、年単位の時間を要します。その為、アレルギーの患者さんは定期的に病院に通い、主治医と協力して治療を続ける努力が必要とされます。1回1回の湿疹、じんましん、喘息発作などの症状に一喜一憂することなく、どうすれば良い状態になるのかを長い目で見ることが求められるのです。そのためには家族みんなが病気について理解し、一致団結して協力することが大切です。根気はいりますが、あまり深刻に考えないようにしてください。ご家族のQOLを第一に、患者さん以外の家族にも配慮するほか、保護者が疲れないように心がけ、生活を見直す機会だと明るく受け止めてほしいです。中にはアナフィラキシーのような命に関わるものもありますが、状態を理解しコントロールすれば予防につなげられます。

アレルギー疾患の治療を受けるうえで、大切なことを教えてください。

わが子がアレルギーだと知ると、悲しまれる保護者が多いですが、子どものために目標を持って家族一丸となって向き合えるわけですから、むしろチャンスだと思ってほしいです。食べ物にアレルゲンや添加物が含まれていないか気をつけたり、インスタント食品や外食を避けたりと神経を使うことは多いですが、毎日、愛情のこもった手作りの料理を食べることができるなんて、子どもにとっては幸せなことでもあると思います。あと、アトピー性皮膚炎にはスキンケアが欠かせないので、たくさんスキンシップができますしね。子どもの健全な発育のためには欠かせないことですが、スキンケアを通じて自然と密度の濃いスキンシップを行うことにもなります。ですから大切なのは、わが子のアレルギーを悲しむのではなく、気分を変えて親子の絆を深めることができる機会に恵まれたと思って明るく対応していただくことだと思います。

治療をする際、先生が大事にしていることは何ですか?

藤谷宏子理事長 藤谷クリニック4

各論で考えるのでなく、総合的に考えて治療をすることを大事にしています。アレルギーに関して言えば、症状だけでなく、栄養面や心の問題も含めて多角的に治療したいと思っています。実際、食事で悩んでおられる保護者には、当院の管理栄養士による栄養相談を行ったり、気持ちが落ち込んだときには当院の臨床心理士によるカウンセリングや育児相談を受けてもらったりすることもあります。アレルギーの治療は、長くかかり患者さんのご家族が疲れたり、気持ちが暗くなったり焦ってしまったりすることがありますので、多職種と協力してあらゆる面でサポートができるよう心がけています。もちろん、悩みを私に話してもらっても構わないのですが、医師に言いにくいこともあると思うので、臨床心理士など相談しやすい誰かに打ち明けてほしいですね。

医師として子育てを楽しむためのお手伝いを

印象に残っている患者さんを教えてください。

藤谷宏子理事長 藤谷クリニック5

自分が治療を受け持った子は、どの子も印象に残っています。最近、とてもうれしかったのは、アレルギーの研究会に参加した時のことです。突然、会場でスーツ姿の若い男の子が「先生!」と声をかけてきたのですが、なんと、その男性は昔アレルギーで苦しんでいた、かわいい患者さんだったんです。「僕、アレルギーを専門にしているんです」と言ってくれた時には、心の底からうれしさが込み上げました。自分のアレルギーを克服して医師となり、さらにアレルギーを専門に選んでくれたことに感動しましたね。自分が診ていた子どもたちが大人になって、親となり、お子さんを連れて来てくれるのは喜びであり、医者冥利に尽きます。みんなの幸せそうな姿、活躍している姿を見るのが私の励みになっていますね。

今、先生が取り組んでいることはありますか?

少し前から、所属している日本小児科医会でホームページを担当しています。私にとって新しい分野なのでとても新鮮です。会員の先生方や一般の保護者の方に医療情報を紹介しています。また、最近は日本女医会の副会長にも就任し、女性や子どものための社会活動支援にも参加しています。どちらもまだ慣れませんが、微力ながらできることでお役に立ちたいと思っています。

アレルギーのお子さんを持つお母さんたちにメッセージをお願いします。

藤谷宏子理事長 藤谷クリニック6

お母さんになれるってすごく幸せなことだと思っています。私はなかなか子どもが授からなかったので、この思いが人一倍強いです。子育ては本当に大変ですし苦労することも多いですが、その分、喜びは何倍にもなります。特に子どもにアレルギーがあると気を使うことも多いでしょうし、どの親御さんも必死で取り組んでおられると思います。お母さま方を中心とし、ご家族が一緒に治せる病気は少ないので、やりがいを持って明るく向き合ってください。そして、「お母さん」という響きに幸せな気持ちを抱いて、子育てを楽しんでいただきたいと思っています。応援しています。

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