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二井 栄 院長の独自取材記事

白子ウィメンズホスピタル

(鈴鹿市/白子駅)

最終更新日:2021/10/12

二井栄院長 白子ウィメンズホスピタル main

4階建ての建物正面に、花や葉、茎の模様をあしらったガラスが美しい「白子ウィメンズホスピタル」。1991年にクリニックとして開業、東日本大震災の翌年2012年に免震構造を取り入れ、現在の建物に生まれ変わった。人員、設備をより充実させて2016年、病院となり、現在は5人の医師と多数のスタッフが患者を支える。二井栄(にい・しげる)院長は、「お産の時は、感動と感謝の気持ちでいっぱいになります」と話す優しい雰囲気のドクターだ。四十数年の経験を重ねた今も、出産の場ではその思いがこみ上げるという。「今は少子化ですが、子育てがしやすい環境づくりに貢献できれば」とも。隣に建つ小児科クリニックは院長の妻が院長で、互いに連携して母子を支える。患者や地域に対する思いをじっくりと聞いた。

(取材日2020年5月1日)

「ゆりかご」をイメージした建物で母子を守る

建物も美しく、待合室はホテルのロビーのように洗練された空間ですね。

二井栄院長 白子ウィメンズホスピタル1

設計担当の方が、三重県にないような建物を造ろうとアイデアを出してくださり、外観は植物をモチーフに華やかさや上品さのある、ゆりかごをイメージしたデザインとなっています。以前から災害に強い建物を造りたいと考えていたことから免震構造とし、環境配慮の点から屋上にソーラーパネルを取りつけました。内部は、患者さんに落ち着いて過ごしていただけるようにゆったりと広く、病室は和室・洋室とも、クリニック時代と比べると2倍近くのスペースとしています。院内には母親教室や両親学級を行う多目的室、マタニティーヨガを行うホールも備えました。また、大勢のスタッフにとって働きやすく、移動しやすい動線となるよう計画しています。

医療面のみならずホスピタリティーも充実されています。

昔はお産の後、血が上るから1ヵ月は髪を洗わないほうが良いとされていましたが、やはりシャンプーはきちんとしたいという声が多く、クリニック時代からシャワールームは設置していました。現在は、個室によってはバスルームもあり、またシャンプーサービスのほかにフットマッサージを行うリラクゼーションのためのルームも用意して、特に入院が長い方には喜ばれています。食事は管理栄養士の監修のもと、地産地消にこだわり、できるだけ鈴鹿の食材を用いて安心して召し上がっていただけるように工夫しています。専用オーブンで作る焼き立てパンも好評です。

先生が産婦人科を専門にされたのはなぜですか?

二井栄院長 白子ウィメンズホスピタル2

最初は外科にも興味がありましたが、産婦人科は内科的要素と外科的要素があるところに惹かれました。研修でお産に立ち会った時の感動はとても言葉では表せません。当院のホームページにも赤ちゃんの写真をたくさん載せていますが、赤ちゃんはかわいくて見ていて飽きませんね。たくさん赤ちゃんがいてもお母さんは「なんでうちの子はこんなにかわいいんだろう」と言われます。赤ちゃんは、お母さんの、そして私たちの宝です。普段は、「なぜ産婦人科の医師に?」と聞かれると「女性が好きだからですよ」と答えていますが、今日は真面目に答えました(笑)。

病気のリスクもしっかり伝え妊婦に寄り添う

診療の際、先生が心がけていることを教えてください。

二井栄院長 白子ウィメンズホスピタル3

いつも心がけているのは、どなたにも敬語で丁寧な言葉遣いをすることです。たまに最初から友達のように話をされる方もいらっしゃるので、そういうときは適宜合わせます(笑)。その方それぞれに背景がありますので、お話の中からいろいろなことをくみ取っていきます。昔は、リスクについてはオブラートに包むように話をしていましたが、今はインフォームドコンセントが当たり前になったこともあり、包み隠さずしっかりお伝えするようにしています。お産は病気ではないし自然に産まれるものと考えている方も多いのですが、一つ間違えば命に関わることもあります。

妊婦はどのようなことを注意すべきですか?

例えば、血液の量は、妊娠していないときと比べると多い人では1.5倍ぐらいまで増えています。ですから、高血圧になったり体のむくみが起きやすくなったりします。ホルモンの関係で糖尿病にもなりやすく、ほとんどの方は妊娠が進むとコレステロールと中性脂肪の値が上がって、もし内科に行ったら高脂血症と言われるくらいの人もいます。妊娠するとそれほど体の中に変化が起こるのです。ほとんどの方はお産が無事に済むとはいえ、少し歯車が狂うと誰にでも病気のリスクがあります。母になるという自覚を持って体の管理をしていただきたいですね。最近は仕事を続ける妊婦さんも多いですが、無理をすると早産につながりかねません。おなかに手を当てて、硬く張っていないか気をつけて過ごしていただければと思います。

こちらでの出産について教えてください。

二井栄院長 白子ウィメンズホスピタル4

基本的にはできるだけ薬を使わないようにしたいと思っています。しかし安全のために薬を使わざるを得ないこともあり、ケースバイケースです。ご希望や状態に応じて無痛分娩も行っています。当院のお産は助産師が主体であり、何も問題がなければ医師は後ろで見ているだけです。もちろん会陰切開や医療的な処置が必要な場合はすぐに対応しますが、お産が本当にスムーズに進んで、医師は「おめでとうございます」と言うだけのときもありますよ。出産後、お母さんは疲れておられるので1日様子を見て、翌日から母子同室になります。助産師、看護師などスタッフの存在はとても大事で、彼女たちの頑張りは大きいです。当院のモットーは、「あいさつの励行」「協調性」「誠意と責任感」「どなたにも温かく接すること」など。スタッフは皆、妊婦さん、患者さんに寄り添うことを大切にしてくれていると思います。

地に足をつけて母子や女性のサポートを続ける

何十年とご経験があっても、やはりお産は感動するものなのでしょうね。

二井栄院長 白子ウィメンズホスピタル5

私の年代ですと、産婦人科の医師は、現在がんを専門にしている人も、生殖医療、不妊治療を専門にしている人も皆、実習でお産を見て感動していると思います。お産はすべてが順調に進むわけではありませんので、無事に産まれてくれたときは感動と、自分の心の中の神様のような存在に対して深い感謝の気持ちでいっぱいになります。40年以上ずっとそうですね。印象深いお産を一つ挙げるとすれば、医師になって2~3年の頃、なかなか産まれない妊婦さんに深夜、吸引分娩を試みたことがあります。でもどうしても産まれなくて別室で待機していたら、明け方近く、難なく赤ちゃんが産まれたんです。赤ちゃんにはちゃんと産まれる力があるんですね。私は妊婦さんが苦しそうだったから早く産ませてあげようと吸引したのですが、そういう考え方では駄目だと痛感しました。医師は「産ませてあげる」のではなく、あくまで「サポートする」立場だと心得るようにしています。

昔と今では出産を取り巻く状況も変わりました。

現在は少子化が進んでおり、赤ちゃんが好きな私としては寂しいですね。古い考えを押しつけてはいけないのですが、若い方にはできれば出産してほしいと思っています。そのためには子育てがしやすい環境づくりも重要で、産婦人科の医師としてできることはないかと考えています。当院では、10年以上前からスタッフ対象の託児保育、一般の方向けの病児保育を行っており、少しでも働く親御さんの助けになればと思っています。妻が小児科の医師で隣にクリニックを構えていますので、当院で産まれた赤ちゃんの多くは生後2ヵ月にそこでワクチンデビューをします。妻はもともと子どもの発育やワクチンが専門で、ワクチン接種のスケジュールも組みますので安心してご相談いただけたらと思います。

今後の展望についてお考えをお聞かせください。

二井栄院長 白子ウィメンズホスピタル6

三重県では、1次医療と3次医療の二極化が進んでいるような状況です。当院としては、1.5次ぐらいまでの医療を担っていきたいと思っています。決して背伸びをするということではなく、5人の医師が在籍していることを生かして対応できることには対応していくということです。私は病院勤務時代、がんの手術を行っていましたので、現在もがんの検査や初期の手術には対応しています。子宮頸がんは若い人に多く、関心を持ってもらいたいがんの一つです。三重県では産婦人科をめざす若い医師が増えていますので、若い医師と交流を持ちつつ、今後も地に足をつけ、地道ながらも周産期医療に貢献していきたいと考えています。

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