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南 元人 院長の独自取材記事

南産婦人科

(松阪市/徳和駅)

最終更新日:2021/10/12

南元人院長 南産婦人科 main

JR紀勢本線の徳和駅徒歩約10分「医療法人社団 南産婦人科」は、三重県松阪市において30年以上地域の出産を支え続けてきたクリニックだ。2014年に新築移転した院内は、木と自然光を取り入れた、やわらかな雰囲気となっている。父の後を継ぎ、2019年12月から院長を務めるのは、南元人(ゆきと)先生。南院長はこれまで、大学病院や松阪市内の急性期病院に勤務し、通常分娩だけでなく、高リスクの出産を数多く診てきた。その中には、流産や、母体と赤ちゃんどちらを優先するかといったつらいケースも含まれていたという。「経膣分娩であれ帝王切開であれ、無事出産できることは素晴らしいこと。その幸せな時間を全力で守り続けたい」と語る南院長に、移転の経緯や、院長就任に対する思いなど話を聞いた

(取材日2020年2月13日)

これからも地域の産科医療を守り続けるために

まず、貴院の特徴について教えてください。

南元人院長 南産婦人科1

当院は、1986年に私の父が開業した産婦人科のクリニックです。診療内容としては産科が中心ですが、一部婦人科がんの検診や、子宮筋腫の手術・フォローといった婦人科領域の診療も行っています。産科領域では、自然分娩はもちろん、計画分娩や無痛分娩にも対応していますし、吸引分娩や帝王切開も行います。また、妊産婦さんの充実したマタニティーライフを支援する取り組みにも力を入れており、助産師の面談は妊娠期間中3回行っていますし、その他にも、父母教室、おっぱい教室、マタニティーヨガ、マタニティービクス、リフレクソロジーといったさまざまなサービスを実施しています。

2014年に新築移転されたと伺いました。

そうですね。以前は、この向かいに建物があり、そこで父が診療を行っていました。ただ、開業から30年近くがたち、建物や設備も古くなってきましたし、スタッフが十分なパフォーマンスを発揮するには旧建物は少々手狭でもありました。私が後を継ぎ、これから先も地域の妊産婦さんや患者さんを支え続けていくためには、より快適で機能的な建物が必要と考え、父と母は新築移転を決めたと聞いています。私は、移転計画や設計には関わっていないのですが、院内の壁や床には木がたくさん使われていますし、自然光をふんだんに取り込む設計にもなっていますので、明るく温かみのある空間だと感じています。また、旧建物に比べ面積も広いですし、動線にも配慮されていますので、スタッフも働きやすくなったと思いますね。

もともと先生が継がれる予定だったということでしょうか。

南元人院長 南産婦人科2

それが、そうではないのです。新築移転が決まった時、私は愛知県豊明市にある藤田保健衛生大学病院(現・藤田医科大学病院)の産婦人科に勤務していたのですが、当時は実家を継ぐという気持ちは持っていませんでした。教授や諸先輩方にとてもかわいがってもらっていましたし、仕事自体にもやりがいを感じていたので、その生活に満足していたのです。そのため、初めのうちは、こちらへ帰って来るか良く悩みました。ただ、しばらく考えるうちに気持ちが整理され、「せっかくの建物を活用しないのはもったいない」、「ハイリスク分娩中心か正常分娩中心かという違いはあれ、産科医療を続けていけることに変わりはない」と思えるようになりました。そして、最終的にクリニックの継承を決意し、子どもが小学生になる前に、豊明市から松阪市に帰郷したという経緯です。

妊娠という幸せな時間を守りたい

職歴に関するお話が出ましたので、先生のキャリアについて伺いたいと思います。

南元人院長 南産婦人科3

私は、2005年に藤田保健衛生大学を卒業後、同学や附属病院の産婦人科に勤務し、周産期領域を中心に、臨床・研究を行ってきました。同院は、高度医療を担う大学病院であると同時に、市民病院的な側面も持つ病院でしたので、臨床面では、リスクの高い妊産婦さんの管理から通常分娩まで、幅広く経験しています。また、MFICU(母体胎児集中治療室)の病棟医長を務めるなど、母体や胎児の救命医療にも数多く携わりましたね。研究面では、同学の関谷隆夫教授に師事し、主に超音波検査を用いた画像診断の研究に従事してきました。そして、継承を決意した後は、三重大学病院、松阪中央総合病院、済生会松阪総合病院といった、大学病院、急性期病院での勤務を経て、2019年4月に当院に戻りました。

これまでの経験を、今後にどう生かしていきたいと思いますか。

1つは診断ですね。当然ですが、周産期医療において最も大切なことは、母子ともに健康な状態で出産を終えることです。そのためには、私たち医療職が画像検査などで母子の健康状態を細かく観察し、異常があった場合には、少しでも早く適切な治療へとつなげることが重要になります。私はこれまで、リスクの高い患者さんをたくさん診てきましたし、超音波検査の専門性も磨いてきましたので、そういったリスク管理には長けていると思います。そして2つ目は連携です、妊産婦さんの状態によっては、当院での対応が難しく、大学病院や総合病院といった専門的な医療機関での治療が必要になる場合もあります。私は三重県に戻ってから、地域の周産期医療の中核となる病院で働いてきましたので、そこで培った人脈は連携に生きると思います。

先生の診療に対するこだわりを教えてください。

南元人院長 南産婦人科4

私が一番大切にしているのは「妊産婦さんにできるだけ不安を与えないこと」です。私たち一人ひとりと同じように、赤ちゃんの育ち方にもそれぞれ特徴がありますが、妊産婦さんの中には、普通を望むあまり、そういった特徴を不安に感じる方もいらっしゃいます。そのため、妊産婦さんの性格を見極めながら、不安が強く出るような方については、あえて健康状態と関係のないような細かい情報はお伝えしないようにしています。私は、これまでのキャリアの中で、妊娠後期での流産や、母体を生かすか赤ちゃんを生かすかという二択を迫られるような、つらい場面にも多く立ち会ってきました。それゆえに、経膣分娩であれ帝王切開であれ、無事出産できることは、いかに素晴らしく喜ばしいことかを人一倍実感しています。妊娠期間は本来、妊産婦さんにとって、幸せで、未来への期待が一番膨らむ時間です。私は、その幸せな時間を守りたいといつも思っています。

父が培ったクリニックを、次代につなぐ

こちらの医院に勤務されて1年ほどが経過しますが、雑感をお聞かせください。

南元人院長 南産婦人科5

一番強く感じているのは、助産師をはじめとしたスタッフの優秀さですね。妊産婦さんや患者さんへの対応も素晴らしいですし、何より意識が高いと思います。例えば、「産まれてすぐの段階から赤ちゃんのスキンケアを開始することが、アトピーやアレルギーのリスクを減らすことにつながる」という内容の学会発表があったことをスタッフに伝えたところ、「妊産婦さんのためになることなら」と、すぐに取り組みを始めてくれたのです。他にも、近隣の小学校に出向いて「命の授業」なども行ってくれていますし、本当にいいスタッフばかりで、心強く感じています。

お忙しいと思いますが、何か趣味やリフレッシュ法はございますか。

趣味については、以前はスキューバダイビングなどをしていたこともありますが、子どもが生まれてからは読書や映画ぐらいですね。ただ、産科の場合は、仕事上で癒されることも多いので、そこでリフレッシュはできていると思います。というのも、他の診療科の場合、病気というマイナスからスタートし、それを元に戻すことが目標になりますが、通常分娩を中心とした産科の仕事は、元の状態に出産という幸せを足してあげることができるのです。そのため、無事に出産が終わると、心から「おめでとう」と言ってあげられますし、妊産婦さんやご家族の屈託のない笑顔には、いつも癒されています。

最後に、今後のビジョンとメッセージをお願いします。

南元人院長 南産婦人科6

私は、松阪市内の病院に勤務していた時に、「先生の実家で産まれました」という声をたくさん聞きましたし、実家を継いでからも、親子2世代にわたり当院で出産される方に何人も出会いました。正直、外から当院を見ていた頃はそれほど実感がありませんでしたが、今は、当院が、地域に根差したなくてはならないクリニックであると強く感じています。私は、院長として、父が30余年にわたり積み上げてきたスタイルや地域医療への思いを受け継ぎながら、松阪市の産科医療をできるだけ長く守り続けていきたいと思います。

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