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紀平 憲久 院長の独自取材記事

津西産婦人科

(津市/津新町駅)

最終更新日:2021/10/12

紀平憲久院長 津西産婦人科 main

1990年の開業以来、およそ30年にわたって地域の出産を支えてきた「津西産婦人科」。現在は分娩こそ扱っていないものの、幅広い世代の女性の体の悩みに寄り添う産婦人科診療を続けている。「開業してから、泊まりがけの旅行には1回も行っていないんです」と笑いながら話す、紀平憲久院長。並々ならぬ覚悟と献身で子どもを取り上げてきたこれまでの歴史と、10代から90代まで通える婦人科をめざすという今後のビジョンについて語ってくれた。院長の一言一言には、すべての女性へのいたわりがあふれていた。

(取材日2019年5月17日)

地域の親子の30年の歴史を紡ぐ、分厚いアルバム

ここ津市は先生の地元ですよね。

紀平憲久院長 津西産婦人科1

私は津で生まれ育ち、大学も三重大学、長く経験を積んだのは松阪中央総合病院です。地元に育ててもらい助けてもらいながら、ここまでやってきました。医学の道に進んでから、内科的なアプローチも手術も、どちらもできるような医療をしたいと思い、産婦人科に進みました。当時の産婦人科は今ほど専門化しておらず、不妊治療も分娩も新生児の対応も、何もかもこなせて一人前でした。そうしたスタイルも性に合っていました。そして勤務医として松阪中央総合病院で診療にあたっていましたが、「一人の患者さんの産前産後のすべてを診たい」という思いが募り、開業しました。大規模病院ではどうしてもチームでの対応になってしまいますから、すべてを手がけるのは難しいんです。開業したからには、自分が動けるうちは現場に立ち続けようと決め、今もその想いは変わっていません。

開業以来30年近く、地元の新生児を取り上げていらっしゃいました。

現在はマンパワーが足りず、分娩を扱っていませんが、それまでは必死に地域のお産を支えてきました。1990年7月の開業以来、ざっと数えても3000人以上の赤ちゃんを取り上げてきたのではないでしょうか。当院では退院時に産後のお母さんと新生児を撮影して、それをクリニックに残すことにしています。分厚いアルバムには、この地域の親子の歴史の一端が詰まっています。先日、思春期を迎え初めてクリニックにいらした娘さんが、この産院で生まれたと気づき、アルバムを見せてあげました。親子で良い表情で眺めていました。長くやっているとこんなことがあるので、やりがいも大きいです。

基本的に院長お一人でお産を続けられてきて、ご苦労も多かったのでは?

紀平憲久院長 津西産婦人科2

つらい思いをすることも少なくありませんでしたが、優秀なスタッフや近くの病院のドクターなどの助けを借りて、なんとか続けてくることができました。お産というのは急変があるので怖いんです。どれだけ丁寧に診ていても、突然状況が変わる。それを肝に命じて診療にあたってきました。夜勤に入っていただく先生はいましたが、基本的には医師は私一人だけ。開業してからは、必然的に遠方への旅行はできなくなりました。ですので、この30年泊まりがけの旅行は一度もしていません。お産が多かった時には、20人近くが一度に入院していたこともあり、母親教室用のスペースにベッドを置いたり、てんやわんやで乗り越えたのも今となっては良い思い出です。開業から今まで、この地域の分娩を扱う医療機関は半減しています。それでも市内に5ヵ所あるので、まだまだ恵まれているかもしれません。

女性が体や性の悩みを気軽に話せる場所に

分娩を扱わなくなった今、どんな産婦人科をめざしていますか?

紀平憲久院長 津西産婦人科3

「産婦人科の町医者」でありたいと思っています。女性が体や性の悩みについて気軽に話せて、相談できる場所が身近にあることは、大きな安心材料になると思います。今通ってくださっている年代は幅広く、10代から90代まで。女性の体は、大きく変化しながら人生を歩んでいきますから、その傍らで不安や違和感を解消できる存在でありたいです。もちろん、性の話は話しづらいという方も多いと思いますから、皆さんが気軽に話せるように、冗談も交えて問診します。スタッフも明るく楽しい人が多くて、シリアスになり過ぎずに話せる環境だと思います。私が一言「大丈夫」というだけで、気が楽になったという人も多いですから、これからもまだまだ役目はあるのかなと思っています。

妊婦健診は続けてらっしゃいますが、最近の妊婦に変化を感じますか?

里帰り出産も多いので、健診の時期も短い方が大半ですが、妊婦健診は続けています。最近の方はスマートフォンに頼りすぎていると感じます。真偽不明の医学的根拠のない話が多く出ていて、それをうのみにしてしまっている方もいらっしゃいます。脅すような話を見るとついつい怖くなってしまいますが、まずは自分の体と向き合い、その後医師の診療を受けるのが大事です。それ以外の方法はないので、ぜひ目の前の医師を信頼し、目いっぱい頼ってほしいです。

月経困難症や更年期障害で悩む女性も多いと聞きました。

紀平憲久院長 津西産婦人科4

最近、月経困難症の女性が多いです。その背景には晩婚化や内膜症などの疾患が潜んでいる場合もあります。産婦人科ではピルの処方などさまざまな治療ができますから、我慢せず相談いただきたいです。そうした時に問診をすると、自分の体に無頓着な人が多いなと感じます。「最後の生理はいつですか」と聞いても、まったく答えられない人がいます。その場面で急いでスマートフォンのアプリなどを検索したりしていますが、そういったものに頼り過ぎず、自分の体と向き合うことを大事にしてほしいと切に願います。更年期でいらっしゃる方も少なくありませんが、過去には私の診療を受けた後「亡き母に再会したような気持ちです」とお手紙をくださった方がいました。私は一応男なんですが、どこかに母性を感じたんでしょうか(笑)。少しでも安心して過ごせるようになったのなら幸いです。

自分の体は自分でいたわり、自分で守ろう

ご趣味は何ですか?

紀平憲久院長 津西産婦人科5

旅行に行くことがないので、家でできる趣味を充実させてきました。家庭菜園もしていますし、東洋ランはかれこれ40年近く育てています。地味だけど可憐な花を咲かせてくれるので、それを楽しみに温室を手入れしています。それから囲碁も好きでよくやっています。地域の囲碁サロンに通っては、お仲間と楽しんでいます。ついつい長居をしてしまって、クリニックから探りの電話が入ることもあります(笑)。

先生の医師としてのモットーを教えてください。

患者さんのことを丸ごと理解する、そのために丁寧に問診をするということです。「痛い」といってもどんな痛みなのか、きちんと把握する。「おなかが痛い」と言われたら、下腹部なのか、脇腹なのか、実は背中なのか、などとにかく向き合って話を重ねます。お話の中で、患者さんの考え方や生活なども、見えてくるものです。そうした患者さんの特性も鑑みた上で、適切な治療やアドバイスができるようにしています。あとは単純なことですが、患者さんを待たせないこと。分娩が入ると難しい場面もありましたが、自分の都合で待たせることはないよう、徹底して患者さん目線で診療を進めてきました。きちんと問診することと、待たせないことを両立するのは大変ですが、両方とも諦めずにやってきたつもりです。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

紀平憲久院長 津西産婦人科6

何度も申し上げますが、自分で自分の体を大切にし、いたわってほしいです。あなたの痛みや不調は、あなたにしかわかりません。あなたのバイオリズムや感覚も、あなただけが気にできるものなんです。だからそれをないがしろにせず、自分で管理したり助けを求めたりできるようにしてほしいです。以前、クラミジアに感染した患者さんが、その後今度は淋病になってしまって……。本当に気の毒でしたし一生懸命診療もしましたが、こうした感染から身を守れるのも、最終的には自分自身だけなんです。周りとの関係、世間の風潮、忙しい生活……、いろいろと大切なことが流されてしまうことの多い日々だと思いますが、どの年代の女性にも「自分の体は自分で守る」という意識を常に持ってほしいです。私も体が動く限り、診療を続けていきます。いつでもご相談にいらしてください。

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