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坪井 声示 院長の独自取材記事

坪井整形外科

(名古屋市南区/本星崎駅)

最終更新日:2023/04/03

坪井声示院長 坪井整形外科 main

本星崎駅より西へ徒歩約9分、国道1号線から1本裏の通りに入った住宅地にある「坪井整形外科」。坪井声示院長の父が1966年に開院し、半世紀以上にわたり地域の健康を支えてきた歴史深いクリニックである。坪井院長はリウマチ系疾患や膠原病を専門に経験を積んできた整形外科のエキスパート。さらにリウマチ系疾患は他の病気と関わることも多いため、整形外科を標榜しているものの幅広い病気に対応しているのも特徴。医療の窓口として地域住民のさまざまなニーズに応えている。「培ってきた知見を生かして、育ててくれた地域に貢献したい」と穏やかに語る坪井院長に診療方針や医療の変化、今後の展望など話を聞いた。

(取材日2023年2月20日)

50年以上、地域医療を支える診療所を継承

クリニックの歴史を教えてください。

坪井声示院長 坪井整形外科1

私の父が1966年に有床病院として開業しました。当初は整形外科といっても、美容外科ですかと多くの人に言われた時代でした。父は整形外科といえども風邪や皮膚疾患など、幅広い症状に対応し、手術も行っていました。その後、私が整形外科、妹が眼科の医師になり、県外で医療に従事していましたが、父の年齢を考慮し、2021年に妹と2人で「坪井整形外科・眼科」としてリニューアル。妹は何かと忙しい身ですので、2023年1月に「坪井整形外科」として私が継承しました。私は一般的には定年の年を迎えていますが、現在、静岡県の病院にも勤務しています。閉院という選択肢もありましたが、培ってきた総合的な医療を生かしたいという想いから継承を決めました。この地域は日本の風情が残る住みやすい街ですし、私を育ててくれた恩を感じていますからね。

整形外科医になった経緯を教えてください。

最初は医師になる気持ちがなく、叔母に説得されて医師になりました。信州大学医学部卒業後は帰郷し、国立名古屋病院(現・国立病院機構名古屋医療センター)に勤務。整形外科の医師の息子であったことから「君は整形外科志望だよね」という院長の一言で整形外科に決まりました。院長や上司に恵まれたことで、さまざまな経験を積みました。整形外科の勉強も楽しかったですね。学位を取得してからは静岡厚生病院に勤務し、整形外科やリウマチに関する専門性を高めてきました。父親は早く名古屋に帰ってほしかったようですが、口にはあまり出しませんでした。しかし父親が高齢になるにつれ不自由なことが増えてくるのを見て、高齢化すると何が困るかの勉強になりました。結局父は、最後身をもって教えてくれたのではないかと感じています。

先生の専門分野について教えてください。

坪井声示院長 坪井整形外科2

整形外科の専門家として、先端的な知見に30年以上接してきました。その中でも関節リウマチやリウマチ性疾患を専門としています。整形外科というと一般的にはスポーツや事故のけがなど、外科的なイメージがあると思います。しかし、リウマチ性疾患というのは、全身に症状が現れますので、ほかの病気も総合的に診る必要があります。例えば、リウマチによる痛みだけでなく、合併症として起きる肺炎の予防・治療もします。皮膚や胃腸の病気の病態をたどっていくと、原因はリウマチとほぼ同じというケースもあります。また、免疫への理解が進んだことで、乾癬、アトピー性皮膚炎などや潰瘍性大腸炎、新型コロナウイルス感染症による肺炎など、リウマチの薬がほかの病気に効果が期待できることも明らかになっています。このように現在は「整形内科的な医療」が中心になっていますので、私の経験を生かして幅広い医療を提供できるよう努めています。

地域住民が気軽に相談できるかかりつけ医をめざす

診療方針を教えてください。

坪井声示院長 坪井整形外科3

何でも相談してもらえるクリニックですね。整形外科という看板を掲げていますが、先ほど申し上げたとおり、当院は幅広い医療の提供に努めています。また、患者さんと医師の間には壁があり、言いたいことが言えないというケースも多くみられますが、私はこの壁をなくしたいと考えています。気兼ねなくお話しいただき、良い関係を築いていきたいです。そして、患者さんにはきちんと情報をお伝えすることを大切にしています。例えば薬の場合「このような効果が期待でき、副作用の症状が出たらすぐに中止してください」とお伝えしておけば、万一のトラブルの際も重篤化のリスクが低くなるでしょう。これは整形外科に限らず、どのような領域であっても大切です。

診療時に心がけていることは何ですか? 

できるだけ患者さんのお話をお聞きすることです。患者さんが何に困っていて、不安を抱えているのかわからないと良い治療はできません。また、私一人にできることは限られていますので、チーム医療を大切にしています。例えば、リウマチの治療では患者さんと医師がいて、その真ん中に看護師やソーシャルワーカーなどが入るケースがあります。医師と患者さんの間には、十分な時間が取れない、話しにくいといった壁があることも多く、真ん中の人がいろいろと説明してくれるのです。この真ん中の人が疲弊しないように、医師である私が努力しなければと思っています。だらだらしてもいけないし、反対にあまり細かく指示しすぎてもうまくいきません。それぞれの立場の人が共存できるようなスタンスがチーム医療には大事。そして、言いにくくても医師として言うべきことは言えるように心がけています。

印象深い患者さんとのエピソードを教えてください。

坪井声示院長 坪井整形外科4

私が若い頃、リウマチで手足が固まり、肺も真っ白で人工呼吸器につながれた方が内科病棟にいました。話しかけても答えられない、手術しても治らないという命をつなげているだけの状態でした。現在ならこの状況でもリハビリテーションをするのですが、当時一般的にはその考えはありませんでした。大きな病院でしたので、その患者さんは今後の治療は必要性ないという理由で転院することになり、私がアルバイトをしている療養病院へ移ることに。縮みきった膝を無理やり伸ばすと骨折してしまう恐れもあるので、何度もギプスを作り直して、少しずつ伸ばすようにしていきました。その経験から、諦めず挑戦を続けることの大切さを学びました。

相談窓口として地域医療の一端を担っていきたい

長年にわたり医療に携わり、変化を感じることはありますか?

坪井声示院長 坪井整形外科5

リウマチ治療は次々と新薬が出てきたことで、ずいぶん変わりました。ひと昔前までリウマチの外来は車いすの患者さんが約半数でしたが、現在はほとんどいませんね。それに少し前までは対症療法が良くないという考え方が優勢でしたが、最近、この考えは変わってきているように感じます。例えば、痛い時期を寝て過ごすことや、腰痛でトイレに行くのが大変なので水分を控えてまうと、胃腸の働きも弱まってトラブルを引き起こします。つまり、痛みによって病気が生じるのです。したがって痛みを取って、動けるようにすることも大事。特に超高齢社会の現在、対症療法はとても大切だと思います。また、かつての日本では痛み止めを飲み、土曜日も無理して仕事をして、トラブルを引き起こすこともありました。今は社会的にも休みやすくなったことで、ゆっくり病気の治療に取り組めるようになったのではないでしょうか。

今後の展望について教えてください。

現在は医療も細分化し、どんな症状も診るという診療所が少なくなってきていると感じます。私もこれまで、専門性を深めてきましたが、気軽に相談できる場を求める人が多いことに気づきました。いろいろな症状に対応するために私自身、常に新しい情報にアップデートしていかなければならないと思っています。また、かかりつけ医として、地域の相談窓口になれればと思います。例えば手術が必要な場合には、専門性の高い病院にきちんと患者さんを導くなど、医療連携も大切にして、地域医療の一端を担っていきたいと考えています。私の夢は地域の方とよく会話し、自分の専門性を生かして地域貢献ができるようになること。今一度、育ててくれたこの地についても学びたいと思います。

読者にメッセージをお願いします。

坪井声示院長 坪井整形外科6

私の診療スタンスは時間をかけて、患者さんと一緒に治していくこと。残念ながら現状は、時間をかけてお話しできる機会はあまりないのですが、少しずつ信頼関係を築いていければ幸いです。また、当院が若者と高齢者の交流の場となり、地域活性に貢献できるのが理想ですので、将来的には催しも考えていきたいですね。この地域には山車が出るお祭りもあります。せっかく帰って来たので、新型コロナウイルス感染症の流行が落ち着いてきたら、ぜひ参加させていただきたいと思っています。

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