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楠崎 滋 院長の独自取材記事

実籾診療所

(習志野市/実籾駅)

最終更新日:2021/10/12

楠崎滋院長 実籾診療所 main

実籾駅から線路沿いを3分ほど歩いたところにある一軒家が「実籾診療所」である。父から引き継いだ同院で一般内科と循環器内科の診療にあたっている楠崎滋院長は、大学卒業後に、大学付属病院や総合病院の循環器科・心臓外科で経験を積んできた。「自分の家族を診るように患者を診ていきたい」と気さくに語る楠崎院長だが、インタビューの最初から最後まで、その口調が情熱的だったのがとても印象的である。「今でも患者さんに教わることばかり」と言う楠崎院長に、これまでの歩みやエピソード、そして小さな子どもを持つ親へのアドバイスなど、さまざまな話を聞いた。

(取材日2017年6月12日)

父の思いを引き継いだ地域に根差した診療

こちらで医院を開業している経緯を教えてください。

楠崎滋院長 実籾診療所1

僕はずっと病院勤務だったんですけど、父親が急に亡くなりまして。それで急遽引き継いだのです。父の時も今の当院と同じように、内科で町のかかりつけ医、何でも屋でした。父は、僕が生まれる前からここでやっていましたし、詳しい話は知らないのですが、何か勲章をもらったこともあったそうです。2017年4月までは、ここでの診療の他、静岡赤十字病院で週に1日診療していました。ここを引き継ぐ時に向こうを辞めようとしたら、結構な騒ぎになってしまったんです。週に1日でも良いから、ということで先日まで続けていました。今後はこちらでの診療になお一層専念していきます。

どのような患者さんが多いのですか?

いわゆるかかりつけ医なので、何でも診ています。調子が悪い方や検診で引っかかったので来たという方など。僕は循環器が専門だから、生活習慣病の患者さんは多いですね。高血圧とか糖尿病、高脂血症の方は、眼科や整形外科みたいに明らかな症状がないので、結構無関心というか、我慢している場合が多い。でもそれが一番危ないので、風邪の症状で来た人でも、他のそういう部分にも気をつけるようにしています。僕はよく、「何かしらで医者にかかっている人のほうが長生きするんだよ」って言います。医者が勝手に、病気を見つけますからね。

診療の時に心がけていることは何ですか?

楠崎滋院長 実籾診療所2

自分の家族を診るように診察するということですね。よく患者目線でなんていいますけれど、自分がその病気になっているわけではないので、それは難しいと思うんです。だから自分の子ども、家族を診るようにするのが良いんじゃないかって思っています。それに同じ病気であっても症状は全部異なりますし、その患者さんが何を言いたいのかを、診察室に入ってきてから目の前に座ってもらう間に判断をしなければならない。ファーストタッチが大事なんです。そして、こんな治療法がありますとかこんな検査をしましょうと話して、承諾をいただいた時、つまり患者さんの気持ちがこっちに向いてくれたら、治療はスムーズに進みますよ。こちらから押し付けても駄目なんです。上から目線では絶対に駄目で、話をして理解してもらって、患者さん自身の意思で、一緒に治療に取り組まなければいけません。

戦略をしっかりと立てることが大切

先生が医師を志したのは、お父さまの影響ですか?

楠崎滋院長 実籾診療所3

そう思うでしょ? 違うんです(笑)。最初は医者になろうなんて、まったく思っていませんでした。他にどうしてもなりたいものがあったわけではないのですが、父親を見ていて、休みもなければいつも忙しそうにしている。こんな馬鹿な仕事はないって思って、他にもっと、自分に合った仕事があるだろうと思っていました。でも将来、自分が何になろうかって真剣に考えた時に、こんな僕でも世の中の役に立てることがあるんじゃないかって思って、そう思って周りを見渡したら、目の前に医者があったんです。だから今も、本当にやりたいのは無医村での医療。必要なところに誰もいないのはおかしいじゃないですか。都会なら、周りにお医者さんがゴロゴロしている。でも医療過疎で医者がゼロのところもありますし、一次救急さえできないところだってたくさんあります。いつかはって気持ちはずっと持っています。

忘れられないエピソードはありますか?

病院勤務の時、重症の狭心症の患者さんが僕のところへ紹介されて来ました。状態が悪すぎるために3件も病院で手術を断られてしまったそうなんです。バイパス手術をしてもどうかなって状態の患者さんで、確かに難しいのですが、引き受けることを決めました。心臓カテーテルインターベンションという血管を拡張させる手術をしたんです。患者さんの家族へは、術前に2時間くらいはかかると話していたのですが、30分くらいで終わり、ご家族を呼んでもらいました。その時僕は手術着を着てマスクをしていて、ちょっと血が付いていたんですが、その格好で家族へ会いに行ったら、うなだれているんですよ。駄目だったんだって、思い込んじゃっていたんですね。それで「終わりましたよ。話もできますよ」って伝えたら、奥さんと娘さんが、安心してへたりこんじゃったっていうのがありましたね。とても印象に残っています。

難しい症例に取り組まれる上で大切なことは何ですか?

楠崎滋院長 実籾診療所4

要は何かをすることになったら、戦略をしっかりと立てることが大事なんです。何事でもそうですが準備が大切で、一手しか持たない人は、そこで終わってしまうんです。一つのことについて、常に三手以上を持っていないといけない。その先の一手にも三手以上を持っておく。将棋みたいなものです。でも将棋は詰んだら負けるだけで終わりだけど、人の体は詰んだら駄目。命ですから。だから研修医や若手の医者にも「手詰まりになったら駄目。そのためにはとにかく経験するように。机の前にいないで患者のところへ行ってこい」と言っています。僕らが研修医の頃は当直があったのですが、知識もテクニックも何もないから、患者さんが来ると上の先生に電話して。そうしたら「そんなことわかるだろ!」って怒られて。とにかくあたった症例は、何が何でも身につけようと思いましたね。

前向きに生きていきたい

こちらは、子どもの患者さんも受け入れているのですね。

楠崎滋院長 実籾診療所5

そうですね。でも専門じゃないので、対応しきれない場合はすぐに小児救急を紹介します。わからないことを中途半端に治療するのはよくないです。お子さんの場合は、親に教えることも多いですよ。例えば、インフルエンザの時には、適当な解熱剤を使うんじゃないよとか、熱を冷ます時には、おでこを冷やすのも良いですが、高熱の時には、脇の下や足の付け根とか、太い動脈が通っているところを冷やすんです。中途半端におでこだけを冷やすと、熱が下がったと体が勘違いをして、もっと熱が上がってしまうこともありますから。それに冷たいものを飲ませると戻しちゃいますから、生温かいものをスプーンで飲ませる。一気に飲めるはずもありませんから、スプーンを使って15分ごとに飲ませる。当たり前ですが、子どもの病気は親がどうするのかが大事です。

今後の抱負を教えてください。

抱負ってわけではないですが、前向きに生きていきたいと思っていますね。振り返っても、後悔しても何の利益もありませんから。反省しないから、後悔するんですよ。後悔は、嘘の塊みたいなものでしょ。自分に嘘をつく。でも人生は、真っ直ぐ生きないと駄目。反省して、よし頑張ろうって。飲みすぎちゃったっていうのは後悔。反省して、今日も適度に飲むぞっていうのは反省(笑)。後悔は文字どおり、引きずるんですよ。後悔してもやり直せないけど、反省すればやり直せる。仕事をしていれば、やらなければよかったなんてことは、誰にでも必ず、たくさんありますよ。でもやってしまったことだから、それを反省して次に生かせれば良いんです。

最後にメッセージをお願いします。

楠崎滋院長 実籾診療所6

少なくとも必要とされる存在でありたいと思っています。僕を必要としてくれている患者さんがいる限りは頑張ります。そんな大それたことはできませんが、検査設備もありますし、うちでは3ヵ月の赤ちゃんから90歳やそれ以上の方でも全部診ます。家族同様に診させていただきますから、困ったことがあったら迷わずに診察を受けに来てほしいと思っています。

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