甲状腺疾患の症状・検査と治療方法
知っておきたい基礎知識
山内クリニック
(さいたま市大宮区/大宮駅)
最終更新日:2021/10/12
- 保険診療
喉仏の下でチョウが羽を広げた形の甲状腺。なじみがない人も多いだろう。しかし、甲状腺から分泌されるホルモンは各器官の働きを活発にし、体温や心拍、新陳代謝を良くする重要な役割を持つ。甲状腺疾患は「ホルモンの過不足」と「形や大きさの異常」の2つに分けられ、女性に多い疾患だ。典型的な症状がないため、更年期の症状や一般的な体調不良と判断され、病気に気づかず放置している人が多いのが現状。そこで、豊富な治療経験と日々の研究のもと、地域のクリニックでありながら大学病院レベルの診断・治療を行う「山内クリニック」の山内泰介先生に、甲状腺疾患の検査や治療方法などの基礎知識を聞いた。
(取材日2017年9月11日)
目次
甲状腺疾患の症状・検査に関わる疑問を解消
- Qどんな症状のときに甲状腺疾患を疑う必要がありますか?
-
A
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるバセドウ病などの場合は、代謝を必要以上に高めるため、動悸、脈が早くなる、汗をかきやすい、手が震える、疲れやすいといった症状が起こります。また、橋本病(慢性甲状腺炎)などの甲状腺ホルモンが低下するケースでは、疲れやすい、便秘、皮膚が乾燥しやすいなどの症状が出ます。どれも身近にある体調不良の症状に似ていますが、それぞれいくつかの症状が重なったときには甲状腺疾患を疑ったほうがいいでしょう。甲状腺の形状を確認する方法として、喉仏の2センチ下を指で触ってみてください。甲状腺が大きい、腫瘤(こぶ)が触れるといった場合には詳しい検査をすることをお勧めします。
- Q検査の具体的な内容について教えてください。
-
A
問診で自覚症状、病気の経過、既住歴、家族歴、ヨードの取り過ぎがないかを確認し、触診によって甲状腺のしこりの大きさ、形の異常などを調べます。その後、血液検査、超音波検査、細胞診検査などを行います。血液検査では甲状腺ホルモン値、甲状腺自己抗体、甲状腺機能異常がもたらす肝機能の検査、コレステロール値を測定。特殊な場合を除き約1時間で結果が出ます。超音波検査では甲状腺の大きさ、しこりの有無、性状などを調べます。腫瘤が良性か悪性か区別しづらいときは、細胞を採って顕微鏡で診る超音波ガイド下穿刺吸引細胞診を実施。動脈硬化を調べる頸動脈超音波検査によって甲状腺に病気が見つかることもあります。
- Qヨードはどんな食品に含まれていますか?
-
A
昆布やひじき、わかめなどの海藻類に豊富に含まれます。ヨードは甲状腺ホルモンの原料ですので、人が生きていく上でなくてはならないものです。しかし、過剰に摂取すると、かえって甲状腺機能低下症を招いてしまいます。ヨードは普通の食事をしていれば十分に摂取できますので、健康にいいからと海藻類を取り過ぎることは控え、適量を食べるようにしてください。
- Q治療方法にはどんなものがあるのでしょうか?
-
A
甲状腺ホルモンが過剰分泌されるバセドウ病は、抗甲状腺薬による治療を行い、薬を飲まなくてもホルモン値が正常になる「寛解」の状態をめざします。約9割の患者さんが薬による治療を行いますが、状態によっては手術や放射性ヨード治療に移行する場合もあります。病気の程度や生活スタイルに応じて、ご自身に合った治療法を検討することが大切ですね。一方、ホルモンが低下することのある橋本病では、足りないホルモンを薬で補充することで、普段どおりの生活に戻すことが期待できます。甲状腺に腫瘤が確認できる場合は、良性であれば病状の変化を診るだけで治療の必要がないことが多く、悪性の場合は大学病院や専門病院で手術などを行います。
- Q治療にかかる期間が気になります。
-
A
バセドウ病に対する抗甲状腺薬は、肝機能や白血球数の低下を招くことがあります。また、かゆみや発疹などのアレルギーにより体に合わない方もいますので、最初の2〜3ヵ月は2週間に一度検査を実施し、その後、通院間隔を1〜3ヵ月空けます。甲状腺ホルモンを補充する場合は、少量から開始し少しずつ増量して、必要量を決定。その後状態を診ながら、1ヵ月に一度の受診から、安定すれば数ヵ月に一度、半年に一度と延ばしていきます。