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坂本 泰二 病院長の独自取材記事

鹿児島大学病院

(鹿児島市/宇宿駅)

最終更新日:2020/12/02

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桜ヶ丘の丘陵に立つ「鹿児島大学病院」。病室や食堂から錦江湾に浮かぶ桜島の雄姿が望める同院は、県全体の医療を牽引するために日々努力している病院だ。2020年4月に就任した坂本泰二病院長は、同院が提供するすべての領域にわたって高水準の専門医療の提供をめざすとともに、「心豊かな医療人が、患者さん本位の安心・安全・高度な医療を提供していく病院をめざしています」と強調する。2020年には新型コロナウイルス感染症の患者も受け入れて対応をしてきた同病院の坂本病院長に、同院の特徴や最近の取り組みについて聞いた。
(取材日2020年10月1日)

鹿児島の医療の中心として、高度な医療の提供に努める

歴史ある病院と伺いましたが、鹿児島の地域医療でどんな役割を担っているのでしょうか。

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当院の前身は、1869年に設立された島津藩病院で、1943年に県立鹿児島医学専門学校附属病院として当院が開設されました。鹿児島県は、離島やへき地を多く抱える県です。そうした地域も含めて、当院は県全体の地域医療を守る役割を果たしています。まず、鹿児島県の大学病院として、地域で高度な専門医療を提供し、難治性疾患の患者さんにとっては「最後の砦」としての役割を担っています。都道府県がん診療連携拠点病院、肝疾患診療連携拠点病院、地域周産期母子医療センター、鹿児島県アレルギー疾患医療拠点病院、がんゲノム医療拠点病院として、幅広い領域で専門性高く医療を提供するとともに、離島やへき地には遠隔医療による支援も始めました。

がん医療では、さまざまな先進的な取り組みを行っているとか。

2006年に都道府県がん診療連携拠点病院となり、多数の診療科と職種が一体となって手術、放射線治療、化学療法を組み合わせた集学的治療を行っています。近年、特に力を入れているのは腹腔鏡や手術支援ロボットを用いた、患者さんの体への負担に配慮した手術です。当院では手術支援ロボットを導入し、泌尿器科では、ロボット支援前立腺がん全摘除術を行っています。他にも腎がんの部分切除術に対応していますし、2020年からは膀胱がんに対する膀胱全摘除術も開始する予定です。また、消化器外科では直腸がん、呼吸器外科では肺がんのロボット支援手術にも対応しています。

婦人科でもロボット支援手術を行っているのですね。

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生殖病態生理学分野教授の小林裕明副病院長が中心となって、ロボット支援手術を行っています。ロボット支援手術は、2018年4月に子宮筋腫など良性腫瘍と再発リスクの低い子宮体がんが保険適用になり、当院でも多数行っています。3D視野の下で細かな鉗子の動きが可能になるため、人の手だけでは難しかった手術手技が、ロボット支援下で精密に行えるようになります。また、若い患者さんでは妊娠の可能性を残していく手術にも取り組んでいますし、小林副病院長は、全国に安全なロボット手術を広げるための教育にも力を入れています。当院の産科・婦人科は腫瘍治療だけでなく、周産期医療、不妊治療、女性ヘルスケアと、各領域で専門性高く医療を提供していくための体制を整えています。

多数のがん遺伝子を解析し、治療に生かす

がんゲノム医療も行っていますが、どのようなものですか。

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当院は、がんゲノム医療拠点病院としての役割を担い、がん治療の中でも、ゲノム医療を必要とする方たちに向けて診療を行っています。ゲノム医療とは、がんの組織の遺伝子を調べて遺伝子変異を明らかにすることで、患者さん一人ひとりに合わせた治療方法を探っていくものです。がん研究は急速に進歩していますから、現在、標準治療として用いられている薬以外にも、患者さんによっては作用する薬があるかもしれません。がんゲノム医療は、標準治療で使える薬がないタイプのがんや、標準治療を行っても改善がなかった患者さんに対して行われるものです。当院では2018年7月から、がんゲノム医療部門を開設して、がんゲノムプロファイリング検査を行っています。また、がん医療では、患者さんの苦痛を和らげていく緩和ケアを、院内のチームと地域医療機関が連携して、シームレスに提供する体制も築いています。

高齢者に多い運動器疾患ではどのような医療を行っているのでしょうか。

当院の整形外科・リウマチ外科は、脊椎、腫瘍、関節の3グループに分かれ、それぞれの診療に精通した医師団が医療を提供しています。運動器疾患は患者さんの年齢、仕事や生活の背景、活動性などによって求めるゴールが違いますから、それらを踏まえて一人ひとりに合った治療を提供することを心がけています。県内一円から患者さんが来院されますが、手術だけで完治が見込めるケースは少なく、継続的なリハビリテーションが重要になります。当院は鹿児島県の医師育成の中心でもあり、整形外科は県内の病院に常勤医師を派遣しています。各地の病院と密に連携し、手術後は地域の病院で安心してリハビリを受けていただけるように体制を築いていることも強みです。

整形外科の治療の特徴を教えてください。

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脊椎グループは、脊柱変形など難易度が高い疾患や腰椎椎間板ヘルニアなど頻度の高い疾患まで、神経を傷つけないように見守る術中脊髄モニタリング、手術精度を上げていくための術中画像診断といった技術を用いた手術が特徴です。腫瘍グループは、骨・軟部腫瘍を中心に診療し、特に広範囲の腫瘍を切除した後の運動器の機能温存に力を入れています。また関節グループは、内視鏡下の手術、人工関節置換術や自分の骨を残す骨切術などを、仕事やスポーツに復帰するなど患者さんが望むゴールに合わせて選択しています。最近では、新しい人工関節が使えるようになったほか、さまざまな部位で内視鏡手術が可能になり、手術の傷も小さく、リハビリの期間も短くて済むようになってきています。

今後も鹿児島の医療を守るために、常に進化を続ける

脳神経外科は技術の進歩が著しい分野ですが、どんな医療を展開していますか。

脳神経外科についても、脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷、てんかんなどの機能的脳神経疾患、ヘルニアなどの脊柱・脊髄疾患、末梢神経疾患、先天奇形など、すべての領域に専門家がいることが大きな強みです。特に脳腫瘍は非常に多くの種類があり、正確に鑑別診断していくことが重要なのですが、これまでの病理診断に加えて遺伝子検査が進歩してきました。当院はこの脳腫瘍の遺伝子解析を早期から取り入れて迅速に診断していく体制を構築していますが、さらに次世代技術を用いた「統合的病理・遺伝子診断システム」の開発も進めています。血管内治療や神経内視鏡手術といった低侵襲治療、他の診療科との協力体制づくりにも力を入れています。

診療科の壁を越えて、しっかり連携する体制を作っているのですね。

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そのとおりです。従来から複数の診療科、職種が協働する部門として、救急科や、がん治療専門の部門、周産期母子医療専門の部門などがありましたが、最近では2017年に下垂体疾患センター、そして2019年にてんかんセンターを設立しました。下垂体は脳の一部位ですが、いろいろなホルモンを分泌するので、脳神経外科、糖尿病・内分泌内科、小児科、産科・婦人科、泌尿器科などが協力して診療します。てんかんも脳の疾患ですが、年齢や症状が多岐にわたるため、小児科、脳神経内科、神経科精神科、脳神経外科が協力してこの病気を診るようにしました。窓口も一本化しましたので、受診や紹介がしやすくなったのではないでしょうか。

今後の展望をお聞かせください。

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2005年度から病院再開発計画を進めています。すでに新中央診療棟と新病棟は完成して、C棟の屋上にはヘリポートを整備しました。現在は、2023年の完成をめざして外来診療棟の建設が進行中です。2020年は第一種感染症指定医療機関として、新型コロナウイルス感染症により重症化した患者さんや基礎疾患などで専門的治療が必要な感染患者さんを受け入れてきました。もちろん院内感染防止に徹底した対策を取り、県と共同で他の病院の感染対策指導も実施するなど、職員が一致団結して県民を感染症から守る行動を実践しています。これからも、心豊かな医療人を育成し、地域の医療機関との協力体制を強化し、どんな人も安心して暮らせる社会に貢献できるよう力を尽くします。

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