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油座利貴 院長の独自取材記事

柴垣医院 久が原

(大田区/久が原駅)

最終更新日:2021/10/12

油座利貴院長 柴垣医院 久が原 main

早くから人工透析に特化した医療を提供し、腎臓の病気を抱える人たちに安らぎを与え続けている柴垣医院が2014年1月に新たなクリニックをオープンした。開院直後の忙しい合間を縫ってお話を聞かせてくれたのは、「柴垣医院 久が原」の院長、油座(ゆざ)利貴先生。やわらかい口調で、一つ一つ丁寧に答えてくれる姿勢が、なぜだかとても心地いい。理事長・柴垣圭吾先生の話によれば、油座先生は診療の際、床に膝をついて、ベッドに横になった透析患者と同じ目線になって話をするという。「当院では患者目線の医療で地域医療に……」とうたうクリニックは多いが、油座先生ほど「同じ目線」を実践できる医師は少ないのではないだろうか。柴垣理事長はさらにこう続ける。「もし僕に妹や娘がいたら、彼に嫁がせたい(笑)」と。理事長にそう言わせしめるほどの油座先生の魅力に迫る!

(取材日2014年3月11日)

町のクリニックのレベルを超えた充実した設備、組織体制で患者も安心!

2014年1月開院の新しいクリニックだそうですね。まず最初に、意気込みをお願いします!

油座利貴院長 柴垣医院 久が原1

ここ久が原はオープンしたての新しいクリニックですが、柴垣医院にとっては自由が丘、戸越に次いで3施設目になります。久が原は3院の中でも最も敷地面積が広く、設備も一番充実しています。まだ開院したてなので稼動しているベッド数は28台ですが、今後は40台まで増やしていく予定です。住宅地にあるクリニックということもあり、クリニックがある西嶺町を中心に、久が原、緑が丘付近から来られる方もいらっしゃいますので、無料の送迎サービスも提供しています。このあたりの地域の方の透析を担うという使命のもと、スタッフや基幹病院の先生たちと協力しながら日々、全力でやっていきたいと思っています。

では、このクリニックの特徴とは?

特徴はHPにも載せているようにいろいろありますが、例えば、「オンラインHDF」といって倦怠感やレストレスレッグス(むずむず脚)症候群を軽減する治療法については、40台すべてのベッドで対応することが可能です。ほかにもさまざまな特徴がありますが、理事長が一番力を入れているのは「IT化」だと思います。5年ほど前に「Dr.HEMODY〈ドクター・ヘモディ」という透析支援システムを導入して以来、電子カルテでペーパーレス化を進めるなど、臨床工学技士が中心となって院内におけるあらゆるデータを一元管理するようになりました。それらのデータはスタッフ全員に支給されているiPadとリンクしていますので、あらゆる場面で役立っています。

具体的にはどのような場面で役立つと感じますか?

油座利貴院長 柴垣医院 久が原2

例えば、患者さんごとにIDが割り当てられていて、それを画面に入力すると、患者さんの基本情報や透析スケジュール、ベッド管理、アレルギーやフットケアなどの診療情報、レントゲン写真や各種検査結果なんかがパッと表示されます。ミーティングの際も、スタッフ全員が1台ずつiPadを持って、それを見ながら申し送りをするので、情報を共有しやすいのが利点です。口頭で患者さんの申し送りするのとは違って、実際に手元に画像があって、データがあって皆で情報を共有できれば、チームとして連携体制をとれやすくなりますから、やはり全然違いますよね。あとは、Chatter(チャター)と呼ばれるある種のSNSを活用して情報を共有しているんですが、自分が休みをとったりしても、自宅に居ながらにして「ああいうことがあったんだ」ということが分かります。医師をはじめすべてのスタッフが24時間365日患者さんのことを把握できることによって、結果として患者さんからの信頼感に厚みが出てくると考えています。一般のクリニックレベルで、なかなかここまでできるところは少ないんじゃないでしょうか。

腎機能を失われないように管理してきた経験が今の診療に生きている

柴垣医院で勤務を始める前はどちらにいらしたのですか?

油座利貴院長 柴垣医院 久が原3

福島県立医科大学附属病院で勤務をしていました。腎臓・高血圧内科という科に所属し、主に腎不全の患者さんの治療にあたってきました。そこでは、血液透析や腹膜透析治療はもちろんのこと、透析患者さんの体調管理をしていくことも、日々の診療では大事な仕事で、腎臓の病気にかかわりの深い、高血圧や糖尿病といったものに対して、生活習慣から改善していくというようなことにも携わっていました。あとは“保存期”といって、透析になる前の患者さんが、できる限り今ある腎臓の機能が失われないように管理して、透析治療が必要にならない状態を保つ治療にも力を入れていました。まあ、福島は東京の病院とは医師の数も設備の規模も違いますから、何でもやらなきゃいけないという場面が多かったですね(笑)。

現在の診療において、当時の経験が役立つな〜と感じる瞬間を教えてください。

ここに来られる患者さんは皆さん、基本的には透析が必要になった後の患者さんですから、透析が必要になる前の保存期とは少し状態が違います。でも、いずれの場合にも、血圧の管理であったり、生活の管理であったり、うまくご自分の腎臓とつきあっていかなければいけないという点では同じです。透析患者さんは多くの場合、残っている腎機能が10%以下ということがほとんどなんですが、それを管理していくという面では、保存期の患者さんを診療した経験を含め、大学病院での経験が何らかの形で役立っているとは感じますね。透析の患者さんは大体が週に3日通院して治療を受ける必要があります。そうした中で、困ったり不安に感じたりすることも多いと思います。僕の一番の仕事は、そうした方のそばにいること、一緒にいることだと考え、常に真摯な姿勢で皆さんと向き合っていきたい、という思いでいます。

そもそも先生が医師という職業を選ばれたのは?

油座利貴院長 柴垣医院 久が原4

家族とか親戚に医師がいたとか、僕の周りにはそういう人はいなかったので、あるとき突如思い立って……というのが正直なところです(笑)。ただ、身の回りの人の病気がわかるようになれたらいいな、なんて漠然とした思いは小学校の終わりぐらいには芽生えていて、いつかは医師になりたいなというふうには思っていました。僕は研究というよりも臨床向きなので、患者さんとお話をしながら、どんな症状があるのか、どんな病気があるのかを見つけていくことをしたい、そういう姿勢は昔から変わらずに持っています。特に腎臓の病気は、食事など生活習慣に関連の深い病気ですから、患者さんといろいろなお話をして患者さん側に立った医療を実践していきたいですね。

患者の話に耳を傾け、「かゆいところにも手が届く」細やかな診療を実践

クリニックレベルではまだ珍しい「腹膜透析」にも対応されていますよね。

油座利貴院長 柴垣医院 久が原5

そうですね。メリットが多い割にはまだ浸透していないんです(笑)。通常、週に3回通院する血液透析に比べ、腹膜透析では通院回数を大幅に減らすことが、まず一番に挙げられるメリットだと思います。腹膜透析は基本的には在宅での治療になるんですが、まずおなかのあたりにカテーテル(管)を挿入し、そこから透析液の出し入れをご自身でしていただくことになります。生活リズムに合わせて行うことができるため、そういう点でもメリットは大きいですね。ただ、カテーテルを体に挿すという意味では異物が入ってくるわけですから、感染症や合併症には気を付けなければいけません。それを防ぐためにも、メンテナンスや経過観察のために定期的にクリニックに来ていただく必要があるのですが、それでも2週に1回から月1回ほどのペースでクリニックに来ていただく程度で済みますから、かなり負担は軽減するのではないでしょうか。

腎臓の機能を長持ちさせるのにも効果的な治療法だとか。

はい。腹膜透析の大きな特徴として、残存している腎機能をできるだけ長持ちさせるという点が挙げられます。血液透析を行っている患者さんで、血圧の変動が多い方の場合だと、一般的に2年ぐらいで残存腎機能が低下傾向に向かうと言われています。普通、血液透析に比べると、腹膜透析のほうが腎機能を長くもたせることができると考えられているのですが、これは生命予後、つまりこれからその方がどれくらい生きるかということにも大きく影響してきます。ですからできるだけ、血圧のコントロールをうまく行いながら腹膜透析を活用していくことも、腎臓の病気とうまくつきあっていくにあたって有効な手段のひとつだと思います。ただ、こうしたメリットが多数ありながらも、まだまだ腎不全の患者さんやご家族には浸透していないのが現状です。

では、最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします!

油座利貴院長 柴垣医院 久が原6

僕が柴垣理事長についていこうと思った決め手というのは、患者さんに対する真摯な姿勢です。その姿勢がクリニック全体の雰囲気にしっかりと反映されていて、柴垣医院は3院ともとてもアットホームなクリニックになっています。すごいのは、そういう一面がありながらも、ここでは例えばIT化についてもそうですし、治療機器についてもそうですし、あとは、安全管理面でいうとヒヤリ・ハットというインシデント(アクシデントまではいかないハプニング)が起こった時にもちゃんとピックアップして再発しないようにする体制もしっかり整備されているんです。どの点においても、大きな病院とは決してひけをとらないような環境です。大きな病院ではできないような、「かゆいところにも手が届く」、そんなふうに患者さんに寄り添う医療をこれからも実践していきたいですね。

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