増田 理枝子 院長の独自取材記事
増田小児科
(墨田区/本所吾妻橋駅)
最終更新日:2025/04/25

本所吾妻橋駅から徒歩9分、下町の雰囲気が漂う町並みを半世紀にわたり見守ってきた「増田小児科」。小児科・アレルギー科・内科を標榜し、乳児から高齢者まで家族皆で通えるファミリークリニックとして、地域の健康を支えている。院長を務める増田理枝子先生は、アレルギー疾患の治療経験が豊富で、患者の悩みに寄り添う親身な診療がモットー。患者と専用アプリを介して日々の症状を共有するなど、コミュニケーションを軸にしたフレキシブルな対応を心がけている。アレルギー科では、夫でありアレルギー疾患が専門の増田敬先生と連携し、家族歴やアレルギー同士の関連を考慮した適切な診断に努める。「一人ひとりの方をじっくりと大切に診たい」と語る先生に、診療への想いを聞いた。
(取材日2025年2月20日)
3世代そろって受診ができるファミリークリニック
60年以上の歴史があるクリニックだそうですね。

はい。初代院長である義父が1963年にこの地で開業し、私も子育てをしながら副院長として診療をサポートしていました。義父の体調の悪化をきっかけに、2012年から私が院長を務めることになったのです。開業以来、小児科を掲げてはいますが、実際はお子さんのみならず、親御さんやおじいさま、おばあさまもご来院いただいています。赤ちゃんがやがて親となってお子さんを抱いて来られたり、お母さんだった方がお孫さんの手を引いて来られたり。それが当院での日常の風景となっていますね。小児科医師であり、アレルギー疾患が専門の夫は、勤務医を続けながら当院を非常勤医師としてサポートしてくれています。
どのようなクリニックをめざしていますか?
この地域の皆さんに、ご家族そろって受診していただけるような「ファミリークリニック」をめざしています。また、この地域の「お母さん・お父さんたちの相談相手」として、頼りにされるような信頼関係を築いていきたいです。同じ親として、あるいは地域の“世話好きなおばさん”として、病気のことだけではなく子育てや家庭の悩みにも寄り添って、さまざまな場面でお力になりたいと願っています。一方、地域の子育て支援などにも取り組んできたことから、医療の枠を超えて子どもたちを広い目で見守っていく存在になれたらとも思っているんです。
診療で心がけていることを教えてください。

どのような年齢であっても、お子さんに話しかけるようにしています。経過を知っていらっしゃる親御さんからの情報も大切ですが、やはりご本人がどういう気持ちなのかを一番確認したいと思っています。ですので、たとえ生後数ヵ月の言葉が話せない赤ちゃんであっても、初めに「今日はどうしたの?」と目を見て聞くよう心がけていますね。また、お子さんの病気のこと以外にも、ご家庭のことも把握するよう努めています。例えば、保育園に通うお子さんが病気になったら、当然親御さんたちのお仕事にも影響するでしょう。仕事は休めるのか、家事は分担できるのか、近所に頼れる方はいらっしゃるのかなどを伺い、ご家庭がうまく回るような配慮もしながら診療を行っていきたいと思っています。同時に「〇〇になったら保育園に行けますよ。〇〇の症状になったらまた受診してください」というように、先の見通しも必ずお伝えするようにしていますね。
豊富な経験を生かし、子どものアレルギー治療に尽力
貴院では、アレルギーの治療にも力を入れていると伺いました。

そうですね。私自身アレルギー治療の経験が豊富ですし、夫が現在アレルギー科のクリニックに勤務しているので、連携しながら治療を行っています。臨床の場に身を置いて感じるのは、アレルギーの発症が低年齢化しているということです。2~3歳くらいから屋外で花粉を浴びて、その翌年には花粉症の症状が出るお子さんも多いですね。乳児健診やワクチン接種の機会を通して、皮膚の状態や離乳食に対する反応など、アレルギー症状も細かくチェックするよう心がけています。当院では一般的な薬物治療の他、舌下免疫療法も実施しています。また、皮下注射を希望される場合は提携病院への紹介も行っていますので、お気軽にご相談ください。
舌下免疫療法について教えてください。
舌下免疫療法とは、アレルギーの原因物質(アレルゲン)を少しずつ体内に取り入れることで、アレルギー反応を弱めていくことをめざす治療法です。具体的には、1日1回、舌の下にアレルゲンを含んだ薬を置き、1分間放置した後に飲み込みます。現在はスギとダニのアレルギーのみ治療対象となっているので、当院では通年型のアレルギー性鼻炎やスギの花粉症で症状が重い子の治療に用いていますね。対症療法とは異なり根本から体質を変えていくのが目的の治療なので、終結まで4~5年と長い年月がかかります。また、スギ花粉症の場合、治療の開始時期が花粉の飛散終了から飛散前までと限定されているため、計画的に動かなければなりません。根気が必要な治療ではありますが、一般的な薬物療法よりも高い効果が期待できますので、お子さんのアレルギー症状に悩んでいる方は検討していただけたらと思います。
食物アレルギーの治療についてもお聞かせください。

食物アレルギーは離乳食の初期に、特定の食べ物を食べたら吐いた、口に含んだら顔が真っ赤になったなどのトラブルが起こって、アレルギーの疑いが出てくることが多いです。大切なのは、その反応がアレルギーかどうか、どれくらいまでなら食べられるのか、少しずつチャレンジしながら症状を見極めることだと考えています。特に保育園に行くお子さんの場合は日常的に給食に接するので、必要に応じて採血などの検査を実施し、本格的な負荷試験を行う場合は提携病院を紹介するなど、早めに症状の判断ができるよう積極的に働きかけています。
一人ひとりを大切にしたゆとりある診療をめざす
アプリを活用するなど、患者さんとのコミュニケーションを工夫されているとか。

保護者の方がどういった時にお子さんを受診させるべきか、タイミングや症状の目安がわからない際の判断の助けとなるよう、専用のアプリを活用しています。保護者の方がアプリ上でつけたお子さんの症状や成長の記録を、クラウドを介して私が拝見できる仕組みです。皆さんの育児ノートを私が覗かせてもらっているイメージというとわかりやすいでしょうか。「鼻水が出ている」「朝起きたら顔が腫れていた」といった症状を写真つきで記入していただき、私が内容を確認してその後の動きをアドバイスしています。アプリを導入してから、ひどくなる前に来院されるなど、タイミングが早くなったように感じますね。また、ネット環境とスマホがあれば海外でも使えるので、例えば旅行先で熱が出た、現地の病院に行ったけれど不安といった場合にも、ご連絡いただければ何かしらのサポートができるかと思います。
先生は地域活動も行っているそうですね。
近隣で4園の園医を務めています。その他にも、墨田区の子どもの支援を行う協議会で活動しています。さまざまな場面でこの地域の子どもたちを見守っていきたいと思い、取り組んでいるのです。また、区の子育て支援事業の一環で、年に数回公民館での子育て講話も行っています。当院の患者さん以外にも多様な方に出会えて楽しいですし、とてもやりがいを感じます。出会いといえば、朝の犬の散歩でもいろいろな人に出会います。あいさつを交わした方が当院に来られた時に「小児科の先生だったのですね!」と驚かれることもありますよ(笑)。私自身この街やそこに住まう方々が好きなので、この地域で子どもたちに関わる仕事や活動ができるのがとてもうれしいですね。
今後の目標と地域の方へメッセージをお願いします。

これからも患者さんとのコミュニケーションを大切にし、一人ひとりの方をじっくり診られるよう、もっとゆとりのある診療をしたいと願っています。当院はお母さんのみでご相談に来られる方もいますし、「何もないけど先生とお話をしに来た」という感じでも構いません。子どもたちとの交流ももちろんですが、親御さんたちとお話しするのもとても楽しいんですよ。世話好きな自分の性分も生かしながら、皆さんのさまざまなお悩みに寄り添ってお力になりたいと思っています。親御さんたちには、ぜひ何でも話せる小児科のかかりつけの先生を見つけて、子育てに役立ててほしいですね。それと、忙しい中でもぜひほっと一息をつく時間を持っていただきたいな、と。なるべくストレスをためずに、今しかない子育ての時間を存分に楽しんでいただけるよう、かげながら応援しています。