患者と家族の生活を支える
地域医療と介護の連携
井上病院/井上クリニック
(足立区/竹ノ塚駅)
最終更新日:2017/08/23


- 保険診療
介護する側もされる側も高齢者という「老老介護」が珍しくない現代の日本社会。高齢化がますます加速する今、医療や介護において各種支援をうまく活用しながら高齢者の命を支えていくことが提言されている。しかし、どのような視点で医師やケアマネジャーを選び、どのように相談すればいいのかわからずに困っている人も多いのではないだろうか。竹ノ塚にある「井上病院/井上クリニック」は、グループホームやデイサービス、介護老人保健施設、特別養護老人ホームなど複数の施設を持つ「社会福祉法人 星風会」と連携し、医療だけでなく介護分野においても、あらゆる人々がより良い生活を送るためのサポートを実践している。同院の早川貴美子理事長に、地域医療と介護の連携について詳しく話を聞いた。(取材日2017年6月8日)
目次
地域医療と介護のスムーズな連携で患者や家族の負担を軽減
- Qこちらは地域でどんな役割を担っていますか?
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A
▲サービス付き高齢者向け住宅 カーサ・ラ・ヴィーダ 保木間
例えば、がんなどの専門的治療は基本的に大学病院で行いますよね。でも大学病院での受診を待っている人は大勢いますので、治療を終えた人は速やかに家に帰るのが望ましい。ただ、体力を回復するため地域の病院でもう少し治療を続けましょうと、そのために国が地域包括ケア病棟を新設したわけですが、まさに私たちはその役割を担っています。ご家族が患者さんにすぐ会いに行ける近さで、たとえ意識がなくても患者さんに添えるような、そういう病院であるべきとつくづく感じています。それから当院は大学病院と同じくらいの機器もあるので、疾患を早期発見することと、地域の方々の安らかな最期をお看取りすることも、当院の役割だと思っています。
- Q星風会の成り立ちについて教えてください。
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A
▲井上病院・井上クリニックの理事長である早川貴美子先生
実を言うと、私の結婚相手がたまたま星風会の理事長だった、というわけなんです。星風会は今から40年以上前、介護施設が日本でまだそれほど広まっていない時代に設立されました。もともとは栃木県で産婦人科の医師として診療していた義父が、ハンディキャップのある子が生まれた後なかなか行き場所がなくて困ることから、重症心身障害児病院を作ったのが出発点。それから介護施設も手がけ始め、施設で働く看護師が子どもを預ける場所がないと、保育所も作りました。一方、私たち病院も、高齢化が進んできて医療と介護が一体化しなければいけないと早期に感じていたので、夫の助けを借りてグループとしてやっていこうということになったのです。
- Q星風会の介護の特徴はどんなところにありますか?
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A
▲患者との対話を大切にしている
医療に根差している点ですね。例えば、当会では「カーサ・ラ・ヴィータ保木間」というサービス付き高齢者向け住宅を運営していますが、医療度の高い方も受け入れられるように、24時間看護師を配置しています。また1階にはクリニックがあり、通所リハビリテーションとショートステイも併設しているという、医療と介護が一対になった施設です。ですから、胃ろうや中心静脈栄養(IVH)を受けている方なども入居できますし、何かあったときには井上病院で診断・検査が可能。あくまでも住宅なので、「病院ではなく自宅で看取りたい」というご希望もかなえられるのが特徴です。ここに住んでいれば安心できる、そう感じていただけると思います。
- Q医療と介護の連携のポイントはどんな点にあるとお考えですか?
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A
▲「医療・看護・介護」でサポート
ケアマネジャーをはじめ、看護師、薬剤師、ヘルパー、施設スタッフなどから成る医療と介護の「多職種連携」を、頂点で見ているのが医師。多職種連携には医師のスパイスが欠かせません。ですから、患者さんのケアプランを立てるケアマネジャーとドクターとのコミュニケーションがよく図れていることがポイントといえるでしょう。当然のようですが、患者さんの担当医をきちんと把握していたり、医療の土台を理解していたりするケアマネジャーならば、医師とのコミュニケーションもスムーズにいくと思います。ご家族はケアマネジャーに「先生に聞いてみてください」とひとこと言うと、2人が関係をきちんと築けているかわかると思いますよ。
- Q介護するご家族へアドバイスをお願いします。
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A
▲「今後も医療と介護の連携を強化していきます」と早川理事長
例えば「薬が効かない」という一言でさえ、患者さんはドクターに言えなかったり言いたくなかったりするもの。でもそうしたマイナス的なことや、「1日2回も薬を飲みたくない」など患者さん側の希望を率直に言えることこそが、信頼関係が築けている証拠ですよね。不満なときこそ素直に言えるドクターが、本当に相性のいい先生だと思います。それが、患者さんとご家族にとっていいドクターを見つけるコツ。そういうかかりつけ医を見つけたら、医師を信頼することが大切ではないでしょうか。そして医師側は、表現方法はそれぞれ違えど、「こういう理由で1日2回飲まないとダメなんですよ」と患者さんに理解と承認を求めることが一番だと思います。