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三石 知左子 院長の独自取材記事

日本赤十字社葛飾赤十字産院

(葛飾区/京成立石駅)

最終更新日:2019/08/28

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「葛飾赤十字産院」は葛飾区役所の正面にある産婦人科、小児科の専門病院。60年以上にもわたって多くの命の誕生を見守り、「葛飾区民の4人に1人はここ生まれ」と言われるほど。院長を務めるのは、現在赤十字病院で唯一の女性院長である三石知左子院長。小児科専門医でありながら産科中心の病院を支え、女性ならではの視点で数々の改革を行ってきた実力者だ。「出産、育児を経験すると、女性は強く優しくなれると思うのです。自分の子を産んでみて初めてわかったこともありますし、産科、小児科は女性の立場からの発言が有益であることも多い分野ですね」と語る三石院長の視線は、どこまでも穏やかで優しい。大規模病院を担い、より良い運営をめざす三石院長に、お産を取り巻く現状や、今後の展望などを聞いた。
(取材日2016年4月7日)

赤十字唯一の女性院長として、院内改革に積極的に着手

赤十字唯一の女性院長とのことですが、どのような経緯で院長に?

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前院長と出張病院で一緒に勤務した経験もあり、副院長として病院の立て直しを手伝って欲しいと声をかけていただいたのが、この病院に来たきっかけでした。当時の院内は薄暗く、怖いドクターにいばったナースと最悪の環境でした。患者数も減少の一途をたどり、運営も厳しい状態でしたが、前院長の働きかけもあり、分娩数も増加しました。その後、前院長のご退任に伴い、「次は君が」とご指名をいただいたのです。私の専門は小児科ですし、女性ということもあり「小児科の女医が産科メインの病院の院長を?」と初めは戸惑いました。しかし、愛育病院の山口規容子現名誉院長など、尊敬するロールモデルも身近にあったことから、思い切ってお引き受けしたのです。

小児科医として産科を運営することに困難はありますか?

病院というものは、各診療科にそれぞれエキスパートがいてギルドを形成しています。そうした専門職の集団を束ねるのが院長の務めだと思うのです。幸い、当院では各科に信頼してお任せできる先生方がいらっしゃいますから、特に困難を感じることはないですね。私は小児科医として大学の母子センターでハイリスク児の経過などを長く診てきたことと、切迫早産や妊娠高血圧症候群などのハイリスクの妊婦さんたちについて、いつ分娩に踏み切るかなどのケースカンファレンスにも参加していましたので、産科医療についての知識はありました。

院長になられて、院内で改革を手がけられたことは?

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職員の職場環境整備には力を入れました。特に看護スタッフについて、妊娠、出産でキャリア継続が難しく、いつまでも新人スタッフを補充し続けないといけないという状況がありました。経験を積んだベテランスタッフをいかに定着させるかを課題として、院内保育室などの案を検討、院内で実際に子育て中の職員にヒアリングをしたのです。結果、院内保育では近隣在住のスタッフしか恩恵が受けられない。さらに、子どもというものは地域の中で育っていくものだという意見を受けました。そこで、職員の子どもたちが、生活する場所で地域に溶け込みながら育つことを支援するためには、保育料の一部負担という形がベストという結論に落ち着きました。現在、男性女性を問わず、共働きで保育園に通う子どもがいる家庭には、上限を決めて保育料の半額負担を行っています。おかげさまで現在では、それぞれのできる範囲で頑張って勤務を続けてくれています。

産婦人科、小児科には「女性ならでは」のメリットが

女性の活用が大きなキーワードになっているようですね?

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現在、国家試験に合格する医学部生の3人に1人は女性です。また、若手の産婦人科医師の3人に2人が女性医師。若手小児科医も半数近くが女性医師だというデータがあります。女性医師の活用は医療全体にとって急務ですが、特に産婦人科、小児科では危機感を持って取り組むべき大きな課題だと思います。私自身、赤十字病院で唯一の女性院長として、初めのうちこそ男性社会で居心地の悪い思いもありました。しかし、女性医師の地位向上や女性医師のキャリア育成という観点から、私の立場も十分に活用していくべきだと考え、赤十字病院内での女性医師の職域環境調査などをお願いしたりもしています。まずは一歩ずつでも、現状を変えていくことが大切だと思うのです。

産婦人科、小児科では「女性である」ことがメリットにもつながりそうですが?

確かに女性であることのアドバンテージはあります。出産を経験できるのは女性だけ、育児についてもやはり女性の方が圧倒的に経験豊富になりますから。私自身、出産を経験して初めて分かった思いなどもあります。医師の立場から患者には気軽に「大丈夫よ」なんて言っていたのに、自分の子となると客観視できず、不安になってしまうお母さん方の気持ちにも共感できるようになりました。育児で大変なお母さんにとって「大変よね、自分も大切にしてね」のひと言がどれだけありがたいかということも。出産、育児を経験すると、女性は優しくなれると思うのです。産婦人科、小児科領域で、教科書には書いていない痛みや不安といったことを理解、共感し、医療に生かすことができるのは、女性スタッフならではのメリットですね。

こちらでのお産について教えていただけますか?

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分娩台で仰向けで産むだけがお産ではないというのが当院のスタンスです。母体が一番楽な体勢で、家族のサポートも受けながらその時を迎えることができます。助産師からの要望を受けて、院内助産システムと畳を敷いた和室の分娩室を新設しました。とはいえ、出産年齢の高齢化とともに、リスクを持つ妊婦が増加しているのも現実です。以前は1割程度だった帝王切開の割合も増えていて、現在では3割、多いと4割にも上ることも。満足の行くお産をめざされるなら、それなりの体づくりは必須ですね。さらに、出産はその後長く続く育児の出発地点に過ぎません、妊娠自体が目的になってしまうような不妊治療は、あまりお勧めしたくないという思いもあります。

新病院設立という新たな夢へ、職員一丸となって前進

院内に「マタニティー鍼灸ルーム」があるというのも珍しいですね?

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妊娠中に薬が飲めない、服用を嫌う妊婦さんや産後6~8週間までの褥婦さんの痛みや不調を取り除くための、選択肢の一つとして導入を決めました。産科知識を持った女性の鍼灸師さんとの出会いに恵まれたことも幸いでした。病院で鍼灸治療が受けられるということは安心感のあることですし、患者についての情報を共有できるという点で治療者、医師の側にもメリットがあります。まだまだ隠れたニーズもありそうだと感じるので、今後も啓蒙してご活用いただきたいと思います。

これまでで心に残っているエピソードがあれば教えてください。

NICUを卒業した子たちに会う時は、いつも驚きと喜びでいっぱいです。健診時などに顔を見せに来てくださる方も多いのですが、一番印象に残っているのは大学病院に勤務していた時に生まれた女の子です。ある日当院の看護職員採用面接に現れたのですから! 自分が小さく生まれて周産期医療を受けたことが助産師をめざす動機になったと面談で語ってくれました。担当した患者と将来一緒に働くことができる可能性があるというのは、小児科医の醍醐味であると、その後折に触れて話すようになりました(笑)

病院の今後について教えていただけますか?

前院長からいただいた宿題が「新病院建設」です。費用を抑えながらなんとか表面はきれいに取り繕い、スタッフの意識も良い方向に向けることができましたが、やはり本体は古いまま。規模にも不満が残ります。定年までになんとかという思いで、当院院長として初めて病院の向かいにある区庁舎にいらっしゃる葛飾区長にごあいさつも叶いました。用地確保に難航していましたが、区長から当院が「葛飾の宝」であるとのお言葉と、移転新設へのサポートをいただくことができました。まだ覚書を交わしただけの段階ですが、将来的に金町近くの図書センター跡地に新しい病院を建設する予定です。

新病院はどのようなものになるのでしょう?

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新病院については職員に「どんな病院にしたいか?」のアンケートをとってみました。心療内科を新設して死産などで悲しみに接した方のグリーフケアを行いたいというものから、映画館や体育館が欲しいという楽しいものまで、たくさんの意見が集まりました。もちろん、すべてが実現する訳ではありませんが、東京オリンピックの頃までに何かしらの形にできるよう、職員一同一体感を持って取り組んでいきたいと話しています。

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