長田 しをり 院長の独自取材記事
東京綾瀬腎クリニック
(葛飾区/綾瀬駅)
最終更新日:2022/02/01

東京メトロ・綾瀬駅から徒歩2分と、アクセス至便な立地に構える「東京綾瀬腎クリニック」は、腎臓病の外来と透析治療に特化した診療を行うクリニック。透析期の患者はもちろん、外来診療で透析導入以前の慢性腎臓病の患者や、腎機能の低下がみられる初期段階の患者まで幅広く受け入れており、患者一人ひとりのライフスタイルを踏まえた食事療法、生活指導などを組み合わせたオーダーメイドの医療を提供。また腎臓病の進行に伴う合併症を防ぐため、各種超音波や心電図などの検査機器を活用した全身管理の徹底ぶりも心強い。日本腎臓学会腎臓専門医でもある長田しをり院長に、慢性腎臓病の治療の進め方やクリニックならではの取り組み、腎臓を守るための生活改善のポイントなど、幅広く話を聞いた。
(取材日2020年3月26日)
患者の病状に応じた「処方透析」や栄養指導に注力
クリニックの特徴を教えてください。

当院は慢性腎臓病に特化し、透析治療の患者さんはもちろん、透析導入前の保存期の方、健診で尿たんぱくが出た、あるいはクレアチニンの値が高くなっているなど、腎臓機能が低下し始めた患者さんまで、外来で幅広く対応させていただいています。透析治療は週3回、1回あたり4~5時間を基本としつつ、患者さんの状態に応じて6時間超の長時間透析を一時的に組み込んだり、血液透析とろ過透析を週の中で併用したりといった「処方透析」を積極的に行って、少しでも全身状態の良い状態で元気に暮らしていただけるよう、柔軟に対応しています。また保存期、透析期を問わず、栄養指導も治療にあたっての大きな柱の1つ。一方的な食事制限でなく、患者さんとの密接な関わりの中で、適切な栄養摂取量を繰り返しお伝えして、腎機能を守る、あるいは栄養状態を高められるような食事療法に力を注いでいます。
あらためて、慢性腎臓病について教えてください。
腎障害が3ヵ月以上続くものが慢性腎臓病とされています。初期段階では尿が泡立つ、足がむくむといったわかりにくい症状だけで自覚症状がほとんどないため、早期発見が非常に難しい病気です。倦怠感や食欲不振、かゆみ、筋肉のけいれんなどが目立ち始めた頃には、かなり進行してしまっていますから、定期的な健康診断で早期発見、早期治療に努めることが何より重要です。当院にはかかりつけ医からの紹介でいらしゃる方が多いですが、近年はメディアや自治体の健診などを通じて、慢性腎臓病の概念が広く認知されるようになり、健診で再検査を促された方のほか、健診データを気にして自発的に受診される方も増えています。
慢性腎臓病の治療はどのように進めていくのでしょうか?

治療は「薬物療法」「食事療法」「生活指導」の3本柱で行っていきますが、その前段として、腎臓が悪くなっている原因がどこにあるかを見極めることが第一。その上で、糖尿病や高血圧など原因となる疾患がある場合はその治療を優先的に行いつつ、腎機能の現状に合わせた薬剤を使って腎機能の低下を防いでいきます。食事療法では1日あたり6gの減塩と、患者さん一人ひとりの検査データをもとに必要なエネルギーとたんぱく量を算出し、専任の管理栄養士が腎臓病食の献立を患者さんと一緒に考えていきます。その際、一人暮らしで外食が多い、同居の家族が調理するなど個々の生活スタイルに合わせ、無理なく続けられるメニューや調理法をアドバイスしています。生活指導というのは、腎機能の維持や血管を傷めないために生活習慣の改善に取り組んでいただくもので、禁煙をはじめ、疲労をためない、適切な運動、脱水の回避、規則正しい生活などをお願いしています。
検査で全身管理を徹底し、合併症の予防へ
患者さんと接する上で心がけていることはありますか?

透析期ではない患者さんの病状の進行を少しでも抑えられるよう、毎回の通院時の採血と採尿で得た検査データに基づいて、薬剤や治療法を適宜細かく調整しています。腎臓病は進行するまで自覚症状に乏しく、進行具合がわかりにくいですから、患者さんご本人に病状を正しく理解していただくために、検査データをお示ししながら現状をしっかりお伝えすることも大切にしています。当院にかかっている患者さんも年々高齢化が進み、外来クリニックではありますが、治療行為と通院時の送迎はもちろん、生活面のサポートにも携わらなくてはいけない場面が増えてきました。患者さんごとに異なる症状、年齢、生活環境を踏まえ、一人ひとりと近い距離感を保ちながら、患者さんの心に寄り添っていきたいと考えています。
腎臓病は合併症を引き起こすリスクが高いそうですね。
腎臓病には、糖尿病などの生活習慣病を原因に引き起こされる合併症としての側面がある一方で、腎臓病そのものが進行することによっても、心臓や頭部の血管病変を引き起こし、命にも危険を及ぼす場合があります。ですから当院では、そうした合併症を未然に防ぐため、採血と動脈硬化関連の検査、心臓・頸動脈、腹部、甲状腺などの超音波検査を行い、合併症の兆候を早期に発見し、入院せずに外来対応で乗り切ることができるよう、徹底した全身管理に努めています。例えば透析期の患者さんの場合、肺炎などを起こしても発熱しないケースが多くみられますから、たとえ熱が出ていなくても重症化のリスクに備え、患者さんの体調に応じて全身に関わる検査も随時取り入れるようにしています。
患者さんの高齢化に伴い、治療の難しさもあるのでは?

血液透析は近年、ご高齢の方でも安全性に配慮して導入できるようになり、当院にも90代で通院で透析導入をされている方が何人もいらっしゃいます。ご高齢であっても栄養状態を悪くすることなく、毒素をしっかり抜くことができるよう、透析器の種類や薬剤、フィルターなどを選択して患者さんに応じた透析手法を心がけています。思うように食べられない方には、必要に応じて栄養補助点滴を活用することもあります。中には認知症で食事管理がうまくできないケースもありますが、できないのが悪いのでなく、ご家庭でできるだけのことに取り組んでいただいて、その先はわれわれが患者さんに合わせて一緒に考えていくというスタンスが大切だと思っています。
地域に少しでも貢献できるクリニックでありたい
透析期と保存期の双方で「運動療法」も取り入れているそうですね。

北里大学の先生方とコラボレーションし、透析中の運動指導を数年前から行っています。それだけで運動機能が上がることを期待するのは難しいですが、運動を継続することがご本人の励みや、運動意欲を後押しするきっかけになるようです。血圧が安定していてご本人の調子が良い時に、透析の前半30分程度、理学療法士が考えたプログラムに基づいて、簡易なベルトやボールなどを使って下半身を動かす運動を行います。年に1度の身体機能測定で、「今年もこれだけ頑張れました」といった具合に運動の成果を患者さんに還元していますから、多くの患者さんが前向きにやりがいを持って取り組んでいます。保存期の方に対しては、年齢や日頃の運動量、病状に応じて家庭での運動を具体的に指示。定期的に運動能力測定を行って、モチベーションを高めることに努めています。
かかりつけ医との連携も不可欠なのでは?
もともとかかりつけの先生がいらっしゃるなら、その先生と私による「併診」の形を取ることが患者さんの安心につながると思っています。その場合は、血圧や血糖、尿酸、脂質といった腎臓病を悪くしないための基本項目の管理をかかりつけの先生にお任せし、腎機能が低下してきた場合の特殊な貧血の治療や、酸とアルカリのバランスの治療、骨代謝に関する治療といったことはこちらで担当させていただきます。かかりつけが決まっていない場合は、すべてこちらでお引き受けすることももちろん可能ですから、ご安心ください。
最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

現在、成人の8人に1人が慢性腎臓病といわれ、500人に1人は透析が必要とされています。自覚症状のない病気ですから、一人ひとりが病気の存在を認識し、早期発見に努めるために毎年欠かさず健診を受け続けることを心がけていただきたいです。腎臓病は早期発見と適切な生活指導や食事療法、生活習慣病的疾患の管理によって進行を防ぐことにつながりますから、治療を続けながら長く元気に生活していいただきたいと思っています。これからも患者さんと二人三脚で病気と付き合いつつ、食や生活改善を入口に腎臓病予防の啓発活動にも取り組み、地域に少しでも貢献していけるクリニックでありたいですね。