杉原 徳彦 院長の独自取材記事
仁友クリニック
(中野区/中野坂上駅)
最終更新日:2024/11/28
1961年に開業し、60年以上の歴史を持つ「仁友クリニック」。3代目院長を務める杉原徳彦先生には、江戸時代から続く医師の家系の17代目として、常に「患者さんのために」という精神が息づいている。同院は、呼吸器内科、アレルギー科、一般内科を診療。中でも喘息などの呼吸器疾患を専門に診ることが特徴で、全国各地から患者が訪れる。同院は喘息と鼻炎を同時に治療するなど気道を一貫して診るスタイルを取り、鼻の奥の「Bスポット」へアプローチする治療や副鼻腔炎の治療も重視するのが特徴だ。ゆっくりとこちらの話に耳を傾け、落ち着いたトーンで答えをくれる杉原先生。随所にほほ笑みを見せながら、独自の診療スタイルや患者への思いを語ってくれた。
(取材日2024年10月24日)
喘息治療を専門に。鼻と喉を同時に診ることが特徴
開業して60年以上の歴史がありますね。
祖父がこの地で開業し、父に次いで私で3代目になります。私は1994年に杏林大学医学部を卒業後、同大学院の医学研究科を修了し、公立病院の呼吸器部門などで10年の勤務医経験を経て家業を継ぎました。当院は、呼吸器内科、アレルギー科、一般内科を診療し、特に喘息の治療を専門としています。さらに睡眠時無呼吸症候群やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の診断・治療にも積極的に取り組んでいます。より早く適切な治療を行うため、CTなど検査機器も充実させました。1週間かかることが珍しくないアレルギーの検査結果がその日のうちにわかり、迅速な治療へとつなげます。喘息と副鼻腔炎の合併の有無、さらに呼吸機能試験なども、すべて当日中に結果を出してお伝えしています。
どのような患者さんが来院されますか?
喘息をはじめとする呼吸器疾患の患者さんが大半で、多くの方が咳の症状に悩んでいます。お子さんから90歳代の方まで年代は幅広いですね。当院は開院して60年以上の歴史があり、地元の患者さんががやはり中心なのですが、中野坂上駅が最寄り駅なので新宿駅や東京駅からのアクセスが良いことや、駅から徒歩2分の場所にあることの相乗効果で、遠方からの患者さんも少なくありません。遠くは北海道や沖縄県からお越しくださる方もいるんですよ。
遠方からも患者さんが集まるのは、なぜでしょうか。
喘息治療が専門の医療機関として、60年以上の経験があることだと思います。喘息の治療・管理そのものについてはガイドラインが公表されていて、当院もそれに沿って診療しています。ただし特徴的なのは、鼻や喉を含めて気道を一体に診るという診療スタイルです。それが、多くの患者さんにご来院いただいている理由ではないでしょうか。鼻と気道は一続きですから、そこで起こる病気も一体で捉えたほうが理にかなっていると考えます。海外では定着していますが、国内では呼吸器内科と耳鼻咽喉科にまたがる領域ということもあり、それぞれ別の疾患として捉えられがちです。とはいえ、咳で悩んでいる方の多くに鼻の粘膜に炎症が見られることがあるため、当院では喘息や咳の症状がある場合、喉だけではなく鼻の検査も行っているのです。原因を徹底的に追究して治療に入り、必要であれば喘息と鼻の炎症の治療を同時に実施して症状の改善をめざします。
鼻の奥にある「Bスポット」や副鼻腔炎の治療にも注力
得意な治療について教えてください。
「Bスポット」と呼ばれる上咽頭の治療です。鼻の最奥部にあたるBスポットが炎症を起こすと咳や痰が出るので、炎症を鎮めるよう塩化亜鉛を塗布する治療を行っています。喘息専門のクリニックがBスポットの治療を行う例は珍しいのですが、当院では前院長である父が、喘息のある方に対しても有用な場合があることから、この治療法の専門家に直接学んで長年実践してきました。保険診療の範囲内で、実施できることも魅力です。Bスポットの治療は、激しい咳や、痰が絡む咳が出る方にお勧めしています。しかしながら、鼻穴から細い棒を通すため大人でも涙が出るほどつらいことがデメリットです。また、Bスポットの近くに集中する迷走神経は、喘息に関連しているといわれています。気道の炎症が起こり、その刺激に対して迷走神経が敏感になって、咳が出現する可能性も考えられています。点鼻薬や吸入薬などで、気道の炎症のコントロールを図ることもあります。
副鼻腔炎の治療にも注力されていると伺いました。
通常の咳や鼻水が喉に垂れて痰と一緒になって出る咳は、副鼻腔炎が原因のことが多いのです。たいていは軽症なので、患者さん自身が副鼻腔炎であることに気づいていないことも少なくありません。ただし、放っておくと慢性気管支炎に発展する可能性があるので注意が必要です。副鼻腔炎の疑いがある場合、当院ではCTを撮影して確認します。現在ヨーロッパでは、喘息、慢性気管支炎、気管支拡張症といった慢性的な気管支の疾患は、副鼻腔炎が原因の可能性があるという認識が広がっていると聞きます。日本にも喘息のお子さんもたくさんいらっしゃいますが、副鼻腔炎を抱えているケースが目立ちます。親御さんは、咳の症状緩和と同時に鼻のコンディションを整えることにも配慮してあげてください。
自分では気づきにくい副鼻腔炎ですが、注意したほうが良い人は?
一冬に何度も風邪をひく、寒い場所にいる時や熱いスープをすすった時、強い香りをかいだ時にむせる、エアコンの風で鼻がむずむずする人は注意してください。また、患者さんの訴えで多いのは、部屋を移動した時や電車に乗った時など、空間が変わると咳が出る、話し出すと咳が止まらないといったケースです。そのような方たちも、副鼻腔炎かもしれません。長く放置していると喘息を発症する原因になることがあります。症状で困っているなら、一度医師に相談することをお勧めします。
自身も喘息のつらさを経験。気持ちに寄り添う診療を
ところで先生ご自身も、小児喘息だったそうですね。
はい。小児喘息があったので、剣道を諦めた経験があります。喘息のつらさは身にしみて感じているので、医師になってからは患者さんのお悩みも理解できます。喘息がどういう病気か体でわかっていることは、とても役立っています。喘息と鼻炎をまとめて診るようになったのも、多くの喘息患者さんと同様に、私の鼻の調子の経過が少なからず関係しています。特に点鼻薬の使用が大きなヒントとなりました。また、当院は3代にわたって喘息に特化した診療を続け、しかも医師としては江戸時代から17代続いている家系。患者さんに寄り添う精神も、受け継がれています。
診療で大切にしていることを教えてください。
咳は体に負担が大きく、つらい症状です。一人でも多くの方の症状が改善するように、原因を徹底的に探ることから始め、適切な治療へと進めます。咳に悩む方は、何十年もつらい思いを抱えることも。そのような方の一助になれることを願っています。何でもご相談いただけるように、コミュニケーションも大切にしています。近年、外国籍の患者さんも増えました。スムーズな診察に結びつくように英会話の先生に指導していただき、症状や治療の説明ができるレベルの英会話を勉強しています。おかげで地元や旅行中の外国籍の患者さんが増えて、何とか英語で対応できています。日本語に自信がない方でも、遠慮なくご相談ください。
今後の展望についてお聞かせください。
鼻炎と喘息を同時に扱う治療や、鼻と喉を一体的に診るスタイルは、受診される方に大きなメリットがあると考えます。当院としてさらに推し進めていくだけでなく、他院の先生方にも広めていきたいと思っていますので、参考になりそうな情報は惜しみなく公開していくつもりです。また、さらなる強みにするために、将来的には耳鼻咽喉科を専門とする医師をスタッフに招き、私の専門とする呼吸器内科と連携していければ理想的だと考えています。咳は誰もが経験する症状なので、粘膜を乾燥から守るためにも、空気が乾燥している冬期の就寝中は、加湿器を利用するなど対策を心がけましょう。2週間以上咳が長引くようなら、医療機関受診のサインです。咳が長引く病気の典型である咳喘息のほか、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎の可能性もあります。これまでの症例を参考に、複数疾患の併発も念頭に置いて診断・治療をしています。どうぞお気軽に足を運んでみてください。