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猪狩 和子 院長の独自取材記事

耳鼻咽喉科北川医院

(豊島区/池袋駅)

最終更新日:2021/10/12

猪狩和子院長 耳鼻咽喉科北川医院 main

池袋駅から徒歩5分の「耳鼻咽喉科北川医院」は1951年から続く老舗のクリニック。院内にはまるで美術館のように多くの絵が飾られ、池袋にいることを忘れてしまうほど、穏やかな癒やしの空間が広がる。耳鼻科の疾患は心因的な不安や悩みが症状に現れていることも多く、「目に見える疾患だけではなく、患者の心までを診ることが大切」と猪狩和子院長は話す。「ここに来てよかった」と精神的満足感を得られるような治療をめざす猪狩院長は、学校医や医師会といった地域活動などにも精力的に取り組んでいる。地域に根差す医院としての想いやマルチな活動の原動力などを聞いた。

(取材日2018年6月19日)

精神的な満足感が得られる“プラスαの治療”が目標

こちらは歴史ある医院だと伺いました。

猪狩和子院長 耳鼻咽喉科北川医院1

1951年に父がこの地で耳鼻咽喉科を開院し、現在は耳鼻科医師の妹と週半分ずつ担当を分けて、2人で診療を続けています。私の子ども時代を知る患者さんからは、今でも「和子ちゃん、よくここで遊んでいたね」と声をかけていただくんですよ。池袋は今では大きなターミナル駅ですが、昔は一面麦畑と菜の花畑で、明治通りには馬車が通り、周囲には牧場もありました。その一方で、子どもたちの遊び場だった雑司が谷の鬼子母神※など、浮世絵にも描かれる歴史や文化の香りが感じられる魅力的な町です。この医院を継承して、移り変わりの激しい世の中だからこそ、ずっと変わらないものが地域にあることの大切さを改めて感じています。2人とも結婚して、現在池袋には住んでいませんが、3代・4代で通ってくださる方のためにも、地域に根差した診療を続けていきたいですね。

※「鬼子母神」の「鬼」の字は1画目のツノがない字を用います。

どのような方が多く来院されますか?

会社員や学生、昔からこの周辺に住んでいるお子さまからお年寄りまで、幅広い年齢層の方がいらっしゃいます。最近では、豊島区の待機児童ゼロ対策により子育て世代の人口が増えた影響で、当院にも若い子ども連れの患者さんが増えてきました。また、当院は交通の便が良いので、会社帰りに診察を受けに寄られる若い独身世代も増えています。ネット検索のほか、クチコミで来院される方が多いことも当院の特徴です。鼻水やくしゃみ、鼻づまりのほか、咳が止まらない、痰が出る、喉のつかえや異物感など、喉や鼻の違和感がある方、最近は風邪が長引いて、喉の炎症が治りきらないといった、喉の症状を訴える方も多くなってきています。

先生の診療ポリシーをお聞かせください。

猪狩和子院長 耳鼻咽喉科北川医院2

耳鼻咽喉科で扱う器官は感覚器なので、心の悩みなどメンタルが原因となる症状が出やすいといった特徴があります。例えば、心因性のめまいや喉の詰まりといった疾患は、薬で治療しただけでは治りません。そういう患者さんは話をよく聞いてもらったり、優しい言葉をかけてもらったり、精神的に満たされることが必要なのです。昔は家族や友人、近所の人など誰かしら相談相手が身近にいたものですが、今は一人暮らしの方が多く、誰にも相談できずに、一人で思い詰めてしまう方が多いように感じます。そんな“孤”の時代だからこそ、耳鼻科本来の治療に加え、精神的な満足感が得られる“プラスαの治療”をめざしています。傾聴や声がけなど「ここに来て心配事がすっきりした」「先生と会うと元気になる」と患者さんに思ってもらえるように日々心がけています。

学校医としてがん教育にも本腰

先生がいらっしゃる豊島区学校医会ではどんな活動をされているのですか?

猪狩和子院長 耳鼻咽喉科北川医院3

私は幼稚園・保育園から高校まで、耳鼻科の学校医を長年続けてきました。豊島区の学校医が集まる豊島区学校医会では、中学生の骨密度測定という全国的にも珍しい取り組みも行っています。これは成長期に丈夫な骨を作っておかないと、その後にいくら薬を飲んでも骨は強くならないことが近年の研究で明らかになったことから、将来の骨粗しょう症を予防する目的で、9年前に開始した活動です。区内の中学校では骨密度を毎年計測し、養護の先生が骨密度の上げ方について、食育・生活習慣など具体的なレクチャーを行っています。その結果、現在では低骨密度の生徒の割合が減少するなど、教育の効果が数字にも表れており、成長期の大事な時期に自分の健康や生活習慣について学ぶことは、予防医学の観点からもとても大事だと実感しています。

がん教育にも取り組んでおられると伺いました。

豊島区では2012年から小中学校でがん教育の授業を行ってきました。2020年の小学校を皮切りに、中・高校でもがん教育が全国展開されることを受け、学校医もがん教育に積極的に関わっていこうということで、今年から動き始めました。若い世代にがんの正しい知識を届けること、「がん=死」ではなく、がんには予防法があること。早期発見・早期治療をすれば、がんは治る病気であることを子どもたちに正しく伝えるため、学校医がどのように関わっていくべきかを、教育委員会と一緒に相談しながら進めているところです。東京女子医科大学の林和彦教授や、末期がんから職場復帰し、現在はがんを学ぶ公開授業を行っている豊島区明豊中学の小林豊茂校長らとともに、今後はがんについての講演会なども行っていきたいと考えています。

活動のフィールドが医師の枠を超えていますね。

猪狩和子院長 耳鼻咽喉科北川医院4

昔から枠にはまらない人間なんです(笑)。他にも、女性医師を支援する団体「日本医師会女性医師バンク」の活動に長年携わっており、妊娠・出産を機に仕事を辞めざるを得なかった女性医師が、再び職場に戻るサポートや、こうした女性医師を持つ病院の院長へのレクチャーなども行っています。月1回のペースで地方の会議にも出席しますし、講演活動なども続けています。他にも、巣鴨にある障害者福祉作業所・生活実習所の施設医としての活動や、都立大塚病院での診療、月・金曜日は往診にも対応します。耳鼻科で在宅をやっている医院がとても少ないので、豊島区内だけでなく高田馬場や上野、新宿エリアからの依頼が入るため、できる限り対応するようにしています。

人との関わりがマルチな活動の原動力

絵画への造詣も深いと伺いました。

猪狩和子院長 耳鼻咽喉科北川医院5

芸術的なことが好きな母の影響で、子どもの頃からよく絵を描いていました。医師会の絵画部に入っていて、会報誌などで作品を発表し、表紙に掲載していただくこともあります。数年前に貼り絵やちぎり絵に出会って以来、日本の和紙のすばらしさに気づいたことが作品の転機になりました。それらを駆使した作品を完成させ、リオデジャネイロで行われた世界芸術競技に出展したところ、第4位となりクリスタルアワードを受賞したのです。すると、海外の展覧会への出展オファーが舞い込み、ミュンヘンに送る準備をしているところです。大塚病院のやすらぎ合唱団にも所属していて、声を出して唄うこともよいリフレッシュになっています。絵や音楽は何も考えずに集中して、無心になれるのが魅力です。

マルチに活躍される先生の原動力はなんですか?

治療も絵や音楽にも共通しているのは、人に元気や感動を与えられるような活動をしたいという想いです。医師として患者さんの病気を治すことはもちろん大事ですが、人間って心が満たされていないと本当の意味で元気にならないんですよね。ですから、人の心を元気にして、安心や感動を与えられる人になることが私の目標なんです。学校医の仕事をして痛感するのは、学校だけで子どもを育てるのではなく、社会や地域で子どもを育てることの大切さです。それは決して私一人でできることではありません。みんなで力を合わせて物事を進める、連携の重要性を改めて強く感じています。人との関わりがあるから、自分の人生も豊かになる。それがまた原動力となっていい仕事ができる気がしています。

読者にメッセージをお願いします。

猪狩和子院長 耳鼻咽喉科北川医院6

現代はストレス社会なので、一つの世界だけになってしまうと行き詰ってしまいます。職場だけ、ママ友の世界だけではなく、趣味や学生時代の仲間など、必ず別の世界を持つように心がけてみてください。苦しいと感じる世界から別の世界に入ることで、心が解放されることでしょう。人生を生き抜くうえで大切なのは、何でも話せる友達をもつこと。健康や友達はお金では買えませんし、いざという時に助けてくれるのは会社ではなく友達です。メンタル面の不調が体の症状として現れることも多いですから、気になることがあれば、忙しくても一度医療機関を受診することをお勧めします。

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