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文元 秀雄 院長の独自取材記事

神谷町ヒルサイドクリニック

(港区/神谷町駅)

最終更新日:2021/10/12

文元秀雄院長 神谷町ヒルサイドクリニック main

東京メトロ日比谷線・神谷町駅から徒歩4分、オフィス街の喧騒を抜け、住宅と神社が混在する静かで落ち着いた街並みの一角にある「神谷町ヒルサイドクリニック」を訪ねた。院長の文元秀雄先生は大学病院勤務を経て、神谷町の地に開業して17年。この街に集う働き盛りの人々のメンタルヘルスを支えたいと願い、クリニックを訪れる患者の心の不調に寄り添い続けてきた。その穏やかなで丁寧な話しぶりと柔和な笑顔から、優しさと包容力にあふれた人柄がうかがえる。木目調の温かみのある雰囲気の院内で、文元先生にクリニックを訪れる患者の傾向や新型コロナウイルス感染症の流行が患者にもたらした変化、実際の診療の進め方、心療内科を受診すべきタイミングなどさまざまな角度から話を聞いた。

(取材日2020年12月9日)

その人らしいあり方を保てるような診療を

開業から17年、移転して新たなスタートを切られましたね。

文元秀雄院長 神谷町ヒルサイドクリニック1

この街で開業したのが2003年。オフィス街で職場のメンタルヘルスに貢献したいという思いで、この界隈にお勤めの会社員や住民など男女問わず多くの患者さんの診療に携わってきました。以前クリニックのあったビルは神谷町の中でも特に古いビルだったのですが、その建て替えが決まったことを機にこちらに移転しました。以前は地下鉄の出口のすぐ目の前で人の往来も多い場所だったのですが、現在の場所は表通りから一本路地を入ったところで、近くに神社もあったりと、落ち着きがあって静かな雰囲気が気に入っています。

来院する患者さんの年齢層や傾向について教えてください。

開院当初は比較的女性が多かったですね。年々女性の管理職も増えてきて、同僚や部下との人間関係に悩んでいる方が多くいらっしゃいました。心療内科を受診することへのハードルの高さといったことがよくいわれますが、女性のほうが男性よりも前向きに「まずは受診してみよう」と考える傾向が強いのかもしれませんね。最近では男性の患者さんもだいぶ増えてきて、年齢でいうと、社会に出て適応に苦労する20代から、部下ができて仕事上の責任が重くなる30~40代の方が多いですね。近年はメンタルヘルスについてメディアで取り上げられる機会が格段に増えたことで、心の不調に対する関心も高まってきました。患者さんの中にはあらかじめインターネットで症状を調べて、具体的な病名を挙げて相談される方も目立ちます。

診療はどのように進めていくのでしょうか?

文元秀雄院長 神谷町ヒルサイドクリニック2

うつ病や統合失調症、パニック障害をはじめ、社交不安障害、またアスペルガー症候群、ADHDといった、いわゆる自閉スペクトラム症など、診断した病名を挙げると多岐にわたりますが、例えば自閉スペクトラム症でいうと職場で「パフォーマンスが悪い」「コミュニケーションがうまくいかない」と挫折感を抱えている方や、場の空気が読めず人に合わせられないといった具合に、対人コミュニケーションにおいてつらさを感じている方が多いです。診断にあたっては、本来は画像診断や血液学的診断のような精密検査を経て総合的に診断すべきなのですが、「そこまでしなくても…」と消極的な患者さんが多いのも事実。ですから、初診の段階で病気の疑いがある場合は正直にお伝えし、簡易な検査から始めたり、うつ症状や不安が強い方に対しては必要に応じてお薬を処方し、できるだけその人らしいあり方を保てるようにサポートするという姿勢で診療にあたっています。

患者の表情や言動、空気感など総合的な観察が重要

新型コロナウイルス感染症の流行による影響も大きかったのではないでしょうか?

文元秀雄院長 神谷町ヒルサイドクリニック3

そうですね。春先の緊急事態宣言で外出自粛になった時期は「気が楽になった」「ホッとした」と言って少し落ち着かれる方が増え、それまでいかに職場の対人関係に苦しんでいたかということがうかがえました。しかしいわゆる「コロナ禍」が長引き、マスクやソーシャルディスタンスなど新しい生活様式への適応が新たなストレス要因となる上、仕事だけでなく子育てや勉強など多方面で先の見通しが絶たれるつらさ、将来に対するマイナスの予測ばかりが蓄積され、一層つらい状態に陥っている方が目立つようになってきました。その傾向は人と交わることを好む人、つまり対人接触の希求性の高い人ほど強く見られ、これまで心の不調とは無縁だったという方も初診でちらほらおみえになっています。

そうした状況下でも、やはり心療内科に抵抗があって受診できない方もいるのではないでしょうか?

病気に対する理解が多少進んできたとはいえ、その先にどんな治療があるかわからないということが抵抗感の原因になっているかもしれません。当院の場合、問診表でどんなことに困っているのかをご自身の言葉で書いていただき、その方のバックグラウンドや訴えを把握します。精神医学の領域は生物学的な検査だけで診断できるとは限らず、患者さんの立ち振る舞いや話しぶりなどを総合的に診ることが大切ですから、その医師の経験と技量によるところも大きくなります。まずはじっくりお話をさせていただいて、患者さんがどのような支援を求めているのか、薬の処方なのか、環境の調整なのか、心理療法やカウンセリングなのか見極めた上で、患者さんの同意のもとで治療の方向性を決めていきます。一方的に薬を飲むことを強要するようなことは絶対にありませんからご安心ください。

精神科・心療内科の診療は他科とは異なる難しさがあるのですね。

文元秀雄院長 神谷町ヒルサイドクリニック4

コロナ禍で受診をためらう人が増える中で、オンライン診療が注目されていますよね。私自身も以前、場所を選ばすに診療できる点に大きなメリットを感じ、オンライン診療を実践したことがあるのですが、長くは続きませんでした。精神科の診療は、診察室の入り口からどんな声で入ってくるのか、あいさつや歩き方、表情、言葉の発し方、座っている時の様子など総合的な観察が不可欠です。例えば患者さんが無言でいる5分間があったとして、話し出しそうなのに話さない、小刻みに震えているといった細かな様子や空気感は、オンラインではどうしても把握しづらいものですよね。やはり声や画像だけから得られる情報では不十分で、患者さんと対面することの必要性を痛感しました。

困ったことがあったら、ためらわず相談を

先生が精神科、心療内科の医師を志したきっかけは?

文元秀雄院長 神谷町ヒルサイドクリニック5

小学生の頃は誕生日のたびに全集ものの本を買ってもらうほど、本が大好きな子どもでした。作家に憧れていたのですが、たとえ物書きになっても大きな文学賞でもとらなければ食べていけないと現実的に考え、まずは地道に手に職をつけたいと、当時周囲からも勧められていた医学の道に進むことを考えました。その時に、医師と作家を兼業されている方々のように、文学的な思考と医学を融合できるライフスタイルに憧れ、精神科医をめざしてみようと思ったんです。

どんなときに心療内科にかかればいいでしょうか?

ご家族の事情や職場、学校での交友関係、仕事の内容や進路など何か困ったことがあったら「この程度のことで」などと考えずに、まずは相談に来ていただきたいと思っています。もし体の不調がある場合は、まず内科や整形外科、脳外科など他の診療科に相談されてもいいと思いますが、そこで異常が見つからず、なおかつ不調が改善されないのであれば、心療内科の領域で何か解決の糸口が見いだせるかもしれません。家族や友人など身近に相談できる人を頼ったり、かかりつけの医療機関に行ってみて、最後に心療内科にたどり着くというのでも構いません。まずはお話を聞かせてください。

最後になりますが、読者に向けてメッセージをお願いします。

文元秀雄院長 神谷町ヒルサイドクリニック6

コロナ禍でもあり、私たちを取り巻くストレス要因はますます増え続けています。ストレスは人を鍛える部分がある反面、「これくらいは耐えなくちゃ」と人に思わせるところがあります。たまには、過度なストレスがかかっていないか、自分らしい考え方が保てているか、好きなことができているかなど、客観的にご自身の生活を振り返ってみてください。ご自身でわからないようなら、ご家族や友人に「私って疲れて見えてないかな?」「他の人と比べてどう見えてる?」といった具合に尋ねてみてもいいでしょう。今まで好きだったことに興味が持てない、子どもがかわいいと思えない、好きだった夫や妻がひたすら邪魔だと感じるなど、軽重はあると思いますが、それまでの自分と違う考え方や行動パターンを少しでも感じたら、それは黄色信号もしくは赤信号かもしれません。どんな些細なお話でも構いませんので、まずは気軽にお電話をいただければと思います。

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