腹腔鏡で行う
大腸がん手術
東京慈恵会医科大学附属病院
(港区/御成門駅)
最終更新日:2021/02/01


- 保険診療
罹患数、死亡数ともに高く、「注意すべきがん」の筆頭に挙げられる大腸がん。高齢化や生活習慣の変化などが背景にあるといわれるが、検査技術の発達で以前よりがんを発見しやすくなったことも患者数の増加に影響していると考えられる。検査技術と同時に治療技術も年々向上しており、早期に発見して適切に治療を行っていくことで治療への期待も高められるようになってきた。近年は腹腔鏡手術の発達により、術後の痛みを抑え、早期社会復帰へとつなげられるようにもなった。大腸がんの特徴や検査方法、腹腔鏡を含めた治療の選択肢、腹腔鏡のメリットについて、下部消化管外科の診療部長、衛藤謙先生に聞いた。 (取材日2020年11月27日)
目次
早期発見が重要な大腸がん。腹腔鏡手術で早期離床・早期社会復帰をサポートしていく
- Q大腸がんの特徴について教えてください。
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A
▲大腸がんの外科診療や腹腔鏡手術を専門とする衛藤先生
大腸がんは、40歳代から増え始めるがんです。過度の飲酒や偏った食生活はリスク要因の1つですが、遺伝性のものもあるため、家族歴がある方は40歳前から検診を受けておくといいでしょう。発生経路は大きく2つあります。1つは、腺腫という良性のポリープからがん化するケース。もう1つは、大腸の正常粘膜細胞から直接がんになるケースです。大きな腺腫や、悪性が疑われる病変は、内視鏡的に切除を行います。進行した大腸がんでは、血便や便通異常などの症状を有することがありますが、無症状の場合も多いため、定期的な検診が鍵になるでしょう。
- Qどのような検査を行うのですか。
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A
▲がんのできた場所や状態によって、適切な治療方法を選択していく
自治体の検診などでは、便を2日分採取して行う便潜血検査の2日法が一般的です。検査の陽性が大腸がんに直結するわけではありませんが、「たぶん痔のせいだろう」といった自己判断は禁物。大腸がんは早期に発見できれば治療にも期待できるようになってきていますので、年に1度の検診は必ず受け、陽性が出たら速やかに詳しい検査を受けてください。一般的に精密検査として、大腸内視鏡検査を行います。大腸内視鏡で腫瘍が見つかったら、細胞を採取して詳しく調べる生検を実施し、がんの確定診断が出ればCTやMRI検査でステージ、遠隔転移の有無などを見極めていきます。
- Q治療法にはどのようなものがありますか。
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A
▲腹腔鏡手術の様子。スタッフ同士が連携して治療を行う
大腸がんの治療には、内視鏡治療、手術治療、抗がん剤による化学療法、放射線療法などがあります。がんが粘膜内に留まっている場合は、内視鏡での治療を選択します。一方、粘膜の下までがんの浸潤が疑われリンパ節転移の可能性がある場合は、外科的に切除する手術治療が第一選択となります。遠隔転移を認め、切除困難などの理由がある場合は、抗がん剤による化学療法を行うことになるでしょう。がんができた場所が肛門に近い場合は、腫瘍を縮小させてから手術を行うため術前化学放射線療法をお勧めすることもあります。これにより、がんの根治性を高めることを図るとともに、極力肛門を温存し術後の患者さんのQOL向上にもつなげていきます。
- Q腹腔鏡手術のメリットや、治療期間の目安を教えてください。
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A
▲衛藤先生は患者の体に優しい手術をめざしてまい進する
腹腔鏡は、開腹手術より手術の傷が小さい点が、患者さんにとって最大のメリットでしょう。傷が小さいことで術後の痛みが軽減し、早期離床を可能とします。さらに術後の肺炎や腸閉塞などの術後合併症リスクを低下させる、お勧めできる治療法といえます。特に高齢の患者さんの場合、呼吸器合併症の影響は大きいため、このリスクを軽減することはとても重要です。手術後の平均入院期間も、開腹手術に比べて短縮されています。術後は1週間前後での退院を見込んでおくと良いでしょう。
- Q病院選びの基準はありますか。
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A
▲豊富な経験をもつ下部消化管外科のスタッフたち
患者さんによって症状が異なるため、今どのような状態にあるのか、どんな検査を何のために行うのか、さらには治療の選択肢とそのメリット、デメリットについても丁寧に説明してくれる病院が望ましいと思います。他の疾患を持っている場合もあるため、全身を総合的に診てくれる病院であることも重要ですね。かかりつけ医の先生の紹介から入院、退院に至るまでの流れがスムーズに行われるよう、入退院支援の仕組みがしっかり整えられていることもポイントの1つかと思います。