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初期症状なく進行し得る胃がん
腹腔鏡手術でなるべく全摘出回避を

東京大学医科学研究所附属病院

(港区/目黒駅)

最終更新日:2021/01/06

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日本人のがん罹患率の上位に入る胃がん。患者が多い分、治療法も洗練されてきているが、一方で「胃がんの高齢化」が進んでいる。そう指摘するのは「東京大学医科学研究所附属病院」の愛甲丞(すすむ)先生。東京大学医学部附属病院にて胃がん手術、中でも腹腔鏡手術を数多く手がけてきた日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医だ。日本肥満症治療学会評議員も務め、重度肥満に対する胃切除術の豊富な実績も有する。それだけに胃切除が与える術後の患者、特に高齢者へのインパクトを熟知しており、だからこそ「残せる胃はできる限り残す」ことにこだわっている。その具体的な取り組みについて、胃がんの基礎知識を交えて解説してもらった。 (取材日2020年11月26日)

ピロリ菌の除菌で予防、内視鏡検査で早期発見、腹腔鏡手術で完治をめざす

Q胃がんの初期症状にはどのようなものがありますか?
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▲胃がん腹腔鏡手術を得意とする愛甲先生

初期症状はほぼありません。胃もたれ、吐き気、みぞおちの痛みなどが現れても、胃炎や逆流性食道炎など別の病気が原因であることが多く、これらの症状をきっかけに内視鏡検査を行ったら胃がんが見つかった、というケースが大半を占めます。胃の出入り口付近にできたがんが進行すると、もともと狭い部分がさらに狭まって食欲不振や胸焼けなどの症状が起こることがあります。しかし無症状のまま進行することもあるので、早期発見のためには定期検診を受けることが重要です。50歳以上は2~3年に1度、50歳未満の方は5年に1度でも良いので内視鏡検査を受けましょう。また、胃がんの発症リスクを高めるピロリ菌の検査も一度は受けてください。

Q胃がんの治療法を教えてください。
A
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▲看護師ともしっかりと連携を取りながら診療を行う

病理検査を経て胃がんが確定したら、進行度を調べて治療方針を決定します。治療法には切除、放射線療法、化学療法などがありますが、胃がんに対する放射線療法や化学療法は、現状は完治を期待できません。従って、多くの場合はどの段階でも切除が第一選択になります。切除方法には内視鏡的切除、腹腔鏡手術、開腹手術があり、粘膜の表面にとどまり、リンパ節転移の危険性がない腫瘍は内視鏡的切除、それ以上は腹腔鏡下、開腹手術が適応されます。口から内視鏡を入れ、腫瘍を切り取る内視鏡的切除に対し、腹腔鏡手術は腹部に開けた数ヵ所の小さな穴からスコープと器具を入れて、モニター越しに胃を部分切除、あるいは全摘出します。

Q腹腔鏡手術は開腹手術とどう違うのですか?
A
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▲ロボット支援下手術も取り入れている

開腹手術では腹部を20cmほど切開しますが、腹腔鏡手術は5~12mmの穴を5~6ヵ所開けるだけです。傷口が小さい分、術後の痛みが軽減され、癒着を起こしにくくなります。内視鏡を使うことで微細な層構造が見えて、がんの組織をより精密に切除できるのもメリット。ただし操作可能な範囲に限界があり、高度の進行がんには向いていません。手術時間は開腹手術が3~4時間として、腹腔鏡手術はそれに加えて1時間ほどかかります。肥満の方は、脂肪に埋まった膵臓を傷つけないよう進める必要があるため、さらに長い時間を要します。しかし合併症を起こすとがんが再発しやすいため、そうならないよう当院では安全性を重視して手術を行います。

Qこちらの病院での手術にはどんな特徴がありますか?
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▲胃がんの腹腔鏡手術の様子。より低侵襲な治療で早期回復をめざす

リンパ節転移の可能性がわずかでもあると、胃を全摘するのが標準治療の考え方です。しかし胃全摘後は体重や筋肉が減りやすく、高齢者はそれが寝たきりや肺炎など別の病気を招くことも。そこで当院では「残せる胃は残す」を方針に掲げ、患者さんの年齢や体力を見極めながら、胃の出口側を残す「噴門側胃切除」、胃の上部3分の1と胃の出口を残す「幽門保存胃切除」などの縮小手術を行っています。また、希少がんの消化管間質腫瘍も腹腔鏡を用いた局所切除で対応できることが多く、私自身は豊富な実績があります。いずれも当院では、たいてい診察後2週間で手術を行い、翌週末には退院が可能なので、スムーズに治療を進めたい方はご相談ください。

Q胃の切除手術を受けた後は、食事や職場復帰はどうなりますか?
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▲病棟からはきれいな夕日を見ることができる

基本的に食事制限はなく、飲酒もできます。ただし全摘出でも、部分切除でも、手術後は胃の容量が減って多くは食べられなくなるので、少量を、時間をかけて、よく噛んで食べることを心がけましょう。噛まずに飲み込みがちな麺類は特に注意が必要ですね。なお、当院では栄養士による食事指導によって、新しい食生活に慣れていただくためのサポートを行っています。食事量が減ることで栄養が不足する場合は、栄養補助食品の取り入れ方をアドバイスしたり、内服薬を処方したりもしています。職場復帰のタイミングは、力仕事の有無、職場のサポート体制、間食ができる環境かどうかにもよります。退院1ヵ月後の診察時に判断するのが望ましいです。

ドクターからのメッセージ

愛甲 丞先生

日本人に多い胃がんですが、手術に至る症例は減ってきました。これには、胃がんの発症リスクを高めるピロリ菌の除菌が、保険診療になったことも影響していると考えられます。感染者は除菌を行うことが胃がん予防につながりますから、一度はピロリ検査を受けてください。たとえ感染していなくても、定期的な内視鏡検査は必要です。スキルス胃がんのように発見が難しいがんもあるので、内視鏡に精通した医師に診てもらうと良いですね。腹腔鏡手術も、歴史が浅い治療法ゆえにまだ術者によって技術に差があるとされていますので、経験豊富な医師に相談することをお勧めします。消化器内視鏡専門医の資格の有無は、一つの基準になるでしょう。

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