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志田 大 先生の独自取材記事

東京大学医科学研究所附属病院

(港区/目黒駅)

最終更新日:2020/12/29

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白金台駅から出るとすぐ、木々や緑に囲まれた、落ち着いた雰囲気の施設が見えてくる。設立120年以上の歴史を誇る「東京大学医科学研究所附属病院」だ。同院は質の高さを重視した医療を提供するとともに、基礎研究の成果を実用化するための橋渡し研究(TR:トランスレーショナル・リサーチ)を行ってきた。現在は2020年9月に外科教授に着任した志田大先生のもと、大腸がん・胃がんの臨床をさらに強化すべく、近隣の病院やクリニックとの連携に力を入れている。そこで今回、まさに変革を迎える同院の現在と未来、志田先生の専門である大腸がんの腹腔鏡手術や、チームワークが光る術後の回復力を強化するための取り組み、そして医師としての原動力などたっぷりと語ってもらった。
(取材日2020年11月18日)

「退院まで1ヵ月」を掲げ、進行大腸がんも完治めざす

こちらの外科の特色を教えてください。

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当科には腹腔鏡手術のエキスパートが多数在籍しており、特にがんに対する腹腔鏡手術に強みを持っています。腹腔鏡手術は、おなかに5~12mmの穴を開け、そこから腹腔鏡や鉗子などの器具を入れて、モニターで観察しながら手術を行うので、傷が小さく患者さんの負担が少ないのが特徴です。外科医としては画面を共有しながらチームで議論しつつ手術できること、カメラを近づけて術野を拡大することで繊細な操作が可能になることが魅力です。当科ではこれまでの数多くの経験に基づき、「確実」そして「安全」な手術を行い、患者さんに「安心」を提供することをモットーとしています。また、エビデンスに基づく治療である「標準治療」が記載されているのが各種の“治療ガイドライン”ですが、それに引用されているわれわれの複数の論文や近年の成果をふまえて、個々の患者さんの病状に合わせて適切な治療法を採用しているのが当科の特徴です。

どのような治療を得意としているのでしょうか?

私自身は、消化器がんの治療を専門とし、その中でも大腸がんの手術療法を得意としています。大腸がんは、手術前にきちんと検査をして、進行具合に応じた適切な手術を行えば、たとえ進行がんであっても多くの患者さんを治癒させることが望めます。患者さん一人ひとりと力を合わせて、がんを克服していきたいと思っています。当院は手術用ロボットを2020年11月に購入しており、2021年度からは直腸がんに対するロボット手術を当院でも保険診療として実施できる見通しです。また、愛甲丞准教授は胃がんの腹腔鏡手術や、食道がんの治療を得意とし、篠崎大准教授は潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患の治療、中でも手術による外科治療を得意としております。このように、消化器の中でも特に「消化管の外科治療」を得意としております。

チーム医療も盛んに行われているそうですね。

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大腸がん手術の治療において、外科医、麻酔科医、病棟看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士などの多職種で取り組む「ERAS(イーラス)」を実践しています。ERASは術後の回復力を強化を目的とした、術前・術中・術後の一連のプログラムです。例えば、手術前後は絶飲食、絶対安静というイメージが根強いですが、ERASでは手術当日の早朝までは経口補水液を飲むことや、手術の翌日には立って歩くことが推奨されます。他にも医学的にエビデンスのある項目が全20項目ほどあり、包括的に実施することで術後の早期回復が期待できます。私は日本にERASが紹介された2010年当時に在職していた東京都立墨東病院でチーム医療としてERASを始めたのですが、その絶大なる効果を身をもって感じました。ですので、その後に異動した国立がん研究センター中央病院、そして当院でも実施しています。

臨床と研究の両面から患者の健康と医療の発展を追求

絶飲食期間の短縮や早期離床が早期退院につながるというのは、患者さんも驚かれるのではないでしょうか?

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そうですね。ですから患者さんには入院前から手術の経過を説明し、術後の目標、例えば手術翌日には歩く、3日目に流動食を開始する、1週間をめどに退院する、といったゴールを共有します。これを手術前から繰り返し説明することで患者さんの理解が深まります。医療者と患者さんが一緒になって目標に向かうことが、ひいては早期退院、スムーズな社会復帰が可能になると考えられます。また、オリジナルの資料や、大腸がん治療ガイドラインから患者さんに該当する情報をお伝えしたり、動画を使うなどして、患者さんご本人や家族に自分の病気やその治療方法について理解してもらえるよう心がけています。

今後、取り組みたいことはありますか?

中長期的には、ガイドラインに引用されるような論文を継続的に発表してしっかりとしたエビデンスをつくっていくことです。すでに私が筆頭著者の論文が複数、日本や海外の大腸がん治療ガイドラインに引用されています。2020年に出した論文もいくつか引用されると思います。われわれが発信する臨床研究の成果が、世界中のガイドラインを書き換える一助になることができれば、目の前の患者さんを治すだけでなく、医療全体の発展へ貢献することになると信じています。それこそが、東大医科研の使命である橋渡し研究の本質だと思います。

短期的にはいかがでしょうか?

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まずは外科の臨床を充実させることが短期的な目標になります。私はこちらに着任してすぐ、地域のクリニックへのあいさつ回りを始めました。当院に入院された患者さんが手術を終えて退院されたら、その方をご紹介いただいたクリニックにご報告とお礼に上がることもしています。クリニックの先生方に信頼していただくことが第一ですし、そのためには顔を見せること、“顔の見える双方向の医療連携”が大切だと思うんですね。そして何より大事なのは、紹介していただいた患者さんの治療をきちんと行うこと。「大腸がん、胃がんなら医科研病院に紹介すれば大丈夫」と思っていただけるよう、日々全力で取り組んでいきたいと思います。

患者の笑顔を原動力に、病院の活性化に向けてまい進

先生が外科に進んだきっかけを教えてください。

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大学では応援部に所属し、4年時には主将も務めました。応援部は横のつながりが強く、学内はもちろん日本中に知り合いができました。人と関わる楽しさや喜びを知り、医者としてもみんなで一つのことに取り組める科に進みたいと考えるようになりました。外科は、常に内科医、麻酔科医、看護師らとのチームで治療していきます。そこに魅力を感じ外科に進みました。卒業後は、厳しいと評判の茨城県立中央病院で臨床研修を行いました。地方の病院は症例数が多いのが特徴ですが、当時は今ほど臓器別に分かれておらず、食道・胃、肝臓、胆のう、膵臓、大腸・肛門と、消化器全般の手術を数多く学びました。中でも大腸の手術は、術野がダイナミックに変わり、切除後に腸管を縫合してつなぐ再建が面白いと感じました。大腸を専門とする先輩方の豪快さや情熱にも惹かれ、大腸を専門に選びました。

外科の医師としてやりがいを感じるのはどんな時ですか?

やりがいを感じない日はありません。患者さん皆さん、初めは暗い表情でも、手術が終わるとほっとして、にっこり笑ってくれます。退院して帰るときも素晴らしい笑顔を見せてくれます。術後1ヵ月の外来診察では、生き生きとした表情で「ありがとうございました!」と言って入室してきてくれます。その笑顔を見るたび、外科医になって良かったと思います。私、毎朝の回診を終えると、なぜか自然に笑顔になっているんですよ。患者さんの力になりたいという思いで日々診療にあたっていますが、実は私のほうこそ、患者さんからたくさんの力を頂いているんですよね。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

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当科では患者さんが病気で悩む期間を1日でも減らしたいと考え、「ご紹介から手術、退院まで1ヵ月で完結」という方針を掲げています。クリニックで内視鏡検査を受けてがんが見つかったとしても、力を合わせてがんを克服しましょう。仕事が忙しくて休みが取れない方や、病気がわかって不安でなるべく早く治療を受けたい方は、特にご相談いただきたいと思います。当院は白金の高台にあり、病棟から東京を一望できる見晴らしの良さも自慢です。緑豊かな場所でのんびりと入院生活を送りたい方にも良い環境ではないでしょうか。ご満足いただける医療の提供をめざして尽力しますので、大腸がん、胃がんをはじめとする消化器診療はぜひ私たちにお任せください。

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