全国のドクター9,295人の想いを取材
クリニック・病院 158,642件の情報を掲載(2024年4月20日現在)

  1. TOP
  2. 東京都
  3. 品川区
  4. 戸越駅
  5. 柴垣医院 戸越
  6. 平尾圭市 院長

平尾圭市 院長の独自取材記事

柴垣医院 戸越

(品川区/戸越駅)

最終更新日:2021/10/12

平尾圭市院長 柴垣医院 戸越 main

戸越駅から徒歩すぐの「柴垣医院 戸越」。駅チカの好立地だけあって、駅の利用者が誤ってクリニック専用のエレベータに乗って2階まで上がって来ることもあるんだとか。そう笑って話してくれたのは院長の平尾圭市先生。相手に安心感を与える、ゆったりとした語り口が印象的だ。院長就任前は、稲城市立病院の内科医長を務めるなど、腎臓内科のエキスパートとして腕を振るってきたそうで、透析治療と関連の深い高血圧や糖尿病といった生活習慣病に関しても知識・経験が豊富。透析治療の性質上、患者の多くは週に3回、年間で150日もの日数、クリニックを訪れる。一般的な治療とは違い、それだけの日数患者と顔を合わせる中で、医師が一人一人の生活に即したアドバイスを行い、患者に寄り添う姿勢を常に持ち続けるのには、医療に懸ける熱い情熱なくしては成り立たないはずだ。平尾先生のまなざしの先には一体どんなものが映っているのだろう。

(取材日2014年2月26日)

精度の高い医療をめざし、医院全体をIT化。アプリの開発などにも注力

柴垣医院は3つの医院を持つそうですね。

平尾圭市院長 柴垣医院 戸越1

当院は、自由が丘にある本院の分院として2010年9月に開院した透析専門のクリニックです。2014年1月には久が原にも新たに分院ができ、自由が丘・戸越・久が原、3つのクリニックはちょうどトライアングルを組むような場所に位置しています。品川区、大田区、目黒区といった広範囲の領域をカバーすることが可能になったのに加え、送迎サービスがありますので、それをうまく活用していただければ、より多くの透析治療が必要な患者さんに、負担なく質の高い医療を提供することができるようになりました。拠点が増えれば、患者さんのお住まいの場所によって、「あなたはこちらの医院が近いですよ」とご案内することもできますから、3院目ができたことで、患者さんにとっての選択の幅も広がったように思いますね。クリニックのコンセプトとして、「どんな患者さんにも対応できるように」という思いがありますから、今後も患者さんにアンケートをとりながら、より良い医院づくりをしていきたいと思っています。

アンケートですか! 患者さんのリアルなお声をもらって改善した、という具体例はありますか?

最近とったアンケートでいうと……、よくスタッフ間でお互いのことを○○くん、○○ちゃんとあだ名で呼んでしまうことってありますよね。ですが、サービス業の一環として考えた場合、いくら親しくてもそういうのは避けたほうがいいのでは、といったことが議題に上がったことがありました。医療の現場ですから、やはりメリハリを付けて○○さんと名字で呼ぶべきなのではないかと。患者さんの目線からみて、実際どのくらい気になっているのか、アンケートを取ってみたんです。そうしたら、結構厳しい評価を頂きました。患者さんがどのように感じているのかを随時いろいろと考えて、こうしたアンケートをとるなどして、スタッフの意識の向上化にも繋げていけたらいいなと思っています。特に透析は継続して通ってもらうことになりますから、どの方にとっても通いやすいということと、安心感を持って治療に臨める環境を整えることがとても重要です。病院とは違い、こういうクリニックだからこそ、「おもてなし」する気持ちが大事ですからね。そのために当院では各種委員会を設置しています。例えば、みだしなみの抜き打ちチェックをする「接遇委員会」のほか、災害時に取るべき対応を考える「災害委員会」などがあり、日ごろから患者さんに対して気配りのある対応ができるように心がけています。

では、このクリニックの特徴とは何でしょうか?

平尾圭市院長 柴垣医院 戸越2

そうした委員会のほかにも特徴はいくつかありますが、一番大きな特徴はIT化でしょうか。例えば、電子カルテの導入。普通、保険診療を行う上では、カルテの記載が非常に重要になってくるのですが、紙のカルテだとどうしても、書き損じや漏れといった人為的な問題が生じる可能性は否定できません。そういったことを極限まで減らすためにも、医療のIT化は大きな意味があります。また、診療データや透析データといった患者さんの基本情報をスタッフ全員が共有できることにも大きな意味があると考え、当院では、スタッフ全員に自分専用のiPadを配布して、コメディカルとの交流はすべて、ソーシャルネットワークシステムを利用して行っています。日々の申し送りにおいてもそうしたシステムを活用し、必要な情報がいつでも手に取るように見ることができるシステムを採用しています。臨床工学技士によるシステムやアプリケーションの開発にも力を入れています。なかにはIT機器を扱うのが大変というスタッフもいますが(笑)、皆、ちゃんとついてきてくれますので、そういう意味では、最新の連携で調和が取れているのかな、という感じがありますね。

専門性や人脈を生かしながら自分らしい診療スタイルで患者に寄り添う

では、平尾先生がこのクリニックの院長に就任されることになった経緯は?

平尾圭市院長 柴垣医院 戸越3

自由が丘にある本院の院長で、柴垣医院全体の理事長を務める柴垣圭吾先生とは、慶應義塾大学病院で働いていた時代に先輩・後輩の間柄でした。柴垣先生は国際交流活動がさかんで、遅い時間帯に病棟に来られることが多く、すれ違うことすら少なかったのですが、当時からいろいろな意味でやり手だなあと思っていました(笑)。その後、僕は大学病院の関連施設で勤務医を続けていましたが、柴垣先生が自由が丘の透析クリニックで実績を残しているという話は人づてに聞いていました。そして、医局の人事のタイミングが重なって偶然にも柴垣医院戸越でお世話になることになったのですが、柴垣先生のもとで働くことについて、ある種の“運命の出会い”を感じていました(笑)。それに、自分の医師としての経験や人脈を使って貢献できることにも、大きな期待感がありました。

具体的には、どのような点でご自身の経験や人脈が役立っているとお感じになりますか?

もともと柴垣先生も僕も同じ腎臓内科の出身で、主に高血圧や糖尿病の研究をしていました。腎臓内科というのは全身を診る科なので、循環器内科や消化器内科に比べて、頭の先から足の先まで本当に体の隅々までいろいろと検査をしないといけないんですね。透析は透析でごく限られた病態の治療ではあるんですが、実は、高血圧や糖尿病といった原疾患に対する根本的な治療のフォローも求められます。そのため、内科医の立場から生活指導を行いながら経過を見ていくことがとても大事で、そういった意味では、慶應義塾大学病院時代から、腎疾患に限らず幅広く生活習慣病まで担当させていただいた経験が、今この医院でも多くの患者さんにフィードバックできていると感じますし、そういった点が自分らしい点だと思います。

人脈という面ではいかがですか?

平尾圭市院長 柴垣医院 戸越4

このあたりでは、大きな病院というと、旗の台に昭和大学病院がありますが、実は僕は昭和大学の出身なんです。そのため品川区のあたりには昔、通った思い出もありますし、昭和大学出身という縁で、病院と医院の間にひとつのつながりをつくることができているかもしれませんね。当院だけで診断がつけられず、困った病態のときは昭和大学病院に頼みこんでしまいます(笑)。一方で、非常勤の先生として、昭和大学腎臓内科からもお力添えを頂いてもらっていますし、今後も良き信頼関係を築き上げていけたら、と思っています。もちろん昭和大学病院以外にも、NTT東日本関東病院、東邦大学医療センター大森病院、東京共済病院、慶應義塾大学病院などからもグループ全体で非常勤の先生に来てもらっていますので、さまざまな施設との連携を深めていくことができる体制が整っているのも柴垣医院の特徴の一つだと感じます。自分の人脈を生かしながら診療できるのはうれしいことです。今後も、そうした地域との連携を大切にした医院にしていきたいと思っています。

頭の先から足の先まで診る医師が考える最も大事な治療法。何と言っても食事!

では、診療でのこだわりを教えてください。

平尾圭市院長 柴垣医院 戸越5

透析治療の性質上、患者さんは週3回お会いしている方がほとんどで、年間でいうと150回ぐらい会うことになります。そういう中で、なるべく単調にならないように、いろいろな角度から訴えを導き出せるお話ができるように気を付けています。とはいっても、なかには疲れて熟睡されている方もいて、毎回違った内容でお声掛けをするのはとても難しいんですけどね(笑)。ただ透析の場合は、1回の治療が3〜4時間と長いですから、一般的な外来診療に比べると、じっくりとお話を聞き入れることも可能です。また、透析治療は生活習慣病にも大きく関連があることが多く、生活に即したお話をする必要もありますから、皆さんが「言いたいことが言えなかった」ということのないように、しっかりと耳を傾けることが大事。そうした点にはこだわりを持って診療しています。

生活習慣病に大きく関連しているとのことですが、では、生活習慣について先生ご自身が気を付けていることはありますか?

やはり食事が第一だと思っていますので、自ら塩分制限をはじめとして、いろいろなものをバランスよく摂るように心がけています。透析治療においても、食事はとても大事。実は、透析の患者さんのうち約4割の方が糖尿病を合併していますので、タンパクやカリウムを制限する以外に、カロリーコントロールへの配慮も必要になってきます。治療法には運動療法もありますが、僕は、食事ほど一貫したものはないと考えています。というのは、例えば運動の場合だと、患者さんによっては運動するためのスペースや時間が確保できないなどの問題があったり、個々の患者さんでADL(Activities of Daily Living =日常生活動作 食事、更衣、排泄、入浴など生活を営む上で欠かせない基本的な行動のこと)が異なり、運動の種類や量なんかも変わってきたりするため、「こうした運動が絶対にいい!」と断定して説明するのが難しいんです。最終的には薬物療法に至ることが多いですが、血液検査の結果を見るたびに、食の基本がなっていないと、いくら薬を増やしても意味がないなあ、なんて方も見受けられます。ですから、僕たちも勉強会などで栄養指導に関する知識をアップデートしつつ、患者さんに食事療法の大切さをお伝えできるようにと心掛けています。

では、最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします!

平尾圭市院長 柴垣医院 戸越6

僕がそもそもこの分野を専門として選んだのは……、猿田享男先生のもと、慶應義塾大学病院腎臓内科教室に籍を置いたことが最初のきっかけです。高血圧を中心に生活習慣病について学び、研究する機会を持ち、これから先もこの分野に関わるような医療をやっていきたいという気持ちが強まりました。この医院でも、その思いを忘れずに、頭の先から足の先まで全身を診るという思いで、自分がやってきたことを活かしながら患者さんと向き合っていきたいですね。また、全国的にメタボリック症候群の概念が浸透し、危険因子への注意が取り出たされていますが、透析患者さんの場合は一般の患者さんよりも、それほどメタボの方が多くはないんですね。むしろ、栄養障害や骨粗鬆症を抱えていたりするケースのほうが多いですから、一般の生活習慣病とはまた違った取り組みにも全力を注いで行きたいと思っています。

Access