青木 信生 院長の独自取材記事
GOOD CONDITION CLINIC 浅草橋駅前の心療内科
(台東区/浅草橋駅)
最終更新日:2025/12/02
浅草橋駅東口徒歩1分にある「GOOD CONDITION CLINIC 浅草橋駅前の心療内科」。院長の青木信生先生は、京都大学医学部を卒業後に精神科の医師として歩みながら、「組織になるとなぜ人の残念な面が現れるのか」という疑問から、神戸大学大学院で経営学も学んだ異色の経歴を持つ。「私をリブート(再起動)する場所」をコンセプトに、芸術家のデザインをヒントにした独創的な空間で、働く人のメンタルヘルスケアに注力。「火事は起き始めに消すほうが早い回復が望める」と早期受診の重要性を説き、我慢しすぎずに相談してほしいと語る青木院長に、精神医療への思いと独自のアプローチについて聞いた。
(取材日2025年11月4日)
人間への探究心から精神科医の道へ
医師を志し、精神科を選ばれた理由を教えてください。

医師をめざしたのは、人間に関わっていく仕事が一番楽しめると思ったからです。初期研修医時代、さまざまな科を回る中で、人間の体を精密な機械と見立てて修理していくかのような臓器別の医療に違和感を覚えました。一方で精神科はいろいろな分野につながりがあるのが魅力でした。大学在学中、メンタルの不調が原因で歩けなくなってしまった患者さんに遭遇したことも大きかったです。そのような不思議で奥深い領域であれば、一生興味が続き、やりがいが持てるのではと感じたのです。
大学卒業後に経営学を学ばれた理由と、その後の経歴は?
精神科の実情を見ていく中で、かつては精神疾患に対して今では考えられないような扱いが存在していた事実を知り、ショックを受けました。個人同士で付き合うといい人間であっても、「組織」になると差別などが起きたり怖いことをしてしまったりする。この疑問を解決したくて、神戸大学大学院で組織行動学を学びました。そして人間の良いところを引き出して、残念なところが引き出されないような制度の設計や建造物とは何かをずっと考えてきました。その後は神戸大学医学部附属病院で医学教育に携わり、兵庫県立光風病院で医長、北原リハビリテーション病院で院長を務めました。2014年には働く人のストレスに関する外来も開設し、働き世代のメンタルヘルスに力を入れるようになり、それが今のクリニックに結実したというわけです。
なぜ浅草橋という地域を選ばれたのですか?

浅草橋は下町ならではの温かみがあり、中央区・千代田区・墨田区・台東区の区境に位置する地域です。私は精神科医という職業について、医療の中で「ど真ん中」というより、少し周辺から全体を見渡す存在だと感じています。境界線という場所は、人々の気持ちやモードが切り替わる象徴的なところでもあります。そうした意味で、浅草橋という地はとてもふさわしいと考えました。仕事で疲れた人が、この近辺のお店や、場合によっては当院の空間で、ほっこりとした気持ちに切り替えて帰っていただけたら、という思いもあります。実は物件探しに2年ぐらいかかったのですが、この場所に出会えて本当に良かったと思っています。
標準治療と総合的視点での診療
診療ではどんなことを大切にしているのですか?

まず「標準治療」を大事にしています。先端の治療や私だけの特別な治療ということではなく、当院では科学的根拠に基づいた標準治療をきちんと行うことを重視しています。もちろん標準治療以外は行わないわけではなく、都度アップデートにも努めます。同時に「総合する」ということも大事にしています。目の前の患者さんの多面的な側面、その方の10年先や健康の延伸まで考えるよう努めています。例えば内科や神経内科、産業衛生分野、社会学、組織行動論といった数々の視点を取り入れながら、一人の患者さんを取り巻く現象の全体性に注目し、何がその方にとっていいことなのかを対話しながら考え、提案していくということですね。
働く人の心にアプローチする外来も設けられていますね。
可能な人はストレス状況を解消していただくのが一番の薬だと、まず申し上げます。ただ、わかっていても逃げられない人もたくさんいるし、休みたくない人もかなりおられます。そのため、ストレス状況が仮に解消しないとしても、回復に役立つ要素を増やしていくことができる方は、それもご提案します。また、ネガティブな出来事を繰り返し思い出す「ぐるぐる思考(反芻思考)」により、自滅の方向に向かってしまう方がいらっしゃいます。それにブレーキをかけるアプローチをお勧めすることも多いですね。薬も反芻思考にブレーキをかける目的で使用する面もあるし、うつ状態の方には抗うつ薬が適する場合もあるので、それらを組み合わせながらの治療法をご提案しています。
普段の診療で心がけていることは?

「シェアード・ディシジョン・メイキング」という診療スタイルを大切にしています。患者さんと対等な立場に立ちながら、こちらから複数の選択肢を提示します。各選択肢のメリット・デメリットを丁寧に説明した上で、一緒に治療を決めていきます。また、人によって何が「回復」であるかは違いますので、あなたにとって良くなるというのは何か、その結果何ができるようになりたいかなどの「回復像」も伺います。その過程にその方の価値観も現われてくるので、それを理解した上で治療を考えていきます。最初に回復像が明確化されていなくても、それはそれで良しとし、信頼を築いていく中でだんだんとお互いで確認していくよう努めています。一方、限られた時間の中で診療の質を上げるために、患者さんには再診時の問診表などに、気になること、お困り事を何でも書いておいてもらうようアドバイスしています。
「私」らしく生きるため、つらさを我慢せず早期受診を
独特な内装や建造物にはどんな意図があるのでしょう?

このクリニックは建築家であり芸術家でもある方のデザインをヒントにデザインしています。コンセプトは「私をリブート(再起動)する場所」です。「ボトムレス」という斜めの壁が4面になるような構造をいろいろな所で再現しています。「他人の目から見た自分」という考えをできるだけなくせるよう、鏡面の場所を一切なくしました。トイレにもありません。自分が感じる身体感覚をしっかり味わうことで、補助線として立ち上がってくるものや再組織化する私を観察する。私と思っていたものが何によって貫かれていたかを知って、それを超えていくことができる空間をデザインしました。待合の大きな天命反転球体という球体の中は、実は空っぽで、この世の中のすべてのことを忘れられる空間を意識しています。ただしあくまでアートであるので、患者さんには自由に捉えてもらうといいのかなと思っていますね。
クリニックの目標や展望について教えてください。
繰り返しになりますが、人間というのはどうしても、良い面と悪い・残念な面が存在します。組織になると、人間のネガティブな面が出現してしまうことも多いのが事実です。当院に関わる人が、この美しくも残念といえる世界の中で、その人らしく生きていってもらうことが願いです。皆さんが困難から回復する力であるレジリエンスを高め、持っている可能性を発揮して、胸を張って生きていけるように精一杯支援をしていきたいと思っています。一方で医療の価値、つまり健康上のアウトカムをしっかり追求していきたいと考えています。患者さんには来院のたびに自分のコンディションに点数をつけていただくのですが、その良いコンディションにスタッフが寄与していたら、それは良い形で反映していきたいと思っています。
受診をためらっている人へメッセージをお願いします。

長くおつらい時期を過ごした方、絶望の淵にいたような方が無事に回復していかれる姿に立ち会えることが、私の医師としての喜びでもあり、一番のやりがいです。何か心の不調を感じたら、ぜひ我慢しすぎずにできるだけ早めに来ていただけたらと思っています。適応障害などを火事に例えてみると、火事の起き始めに来てもらうほうが当然火も消しやすいし、その後も早い回復が望めますよね。火が全体に広がってから消しても焼け跡が残るだけで、そこにもう人が簡単に住むことができません。そんなふうに著しくパフォーマンスが低下してしまう前に、我慢しすぎずに早めに相談していただきたいですね。まだメンタルクリニック行くまでの状態ではない、などと自己判断するのではなく、とにかく早めに来ていただきたい。それが一番の願いですね。

