鈴木 陽一 院長の独自取材記事
長後すずき内科クリニック
(藤沢市/長後駅)
最終更新日:2024/09/30
小田急江ノ島線長後駅から徒歩5分の住宅街に「長後すずき内科クリニック」はある。通りから十分にセットバックを取り、駐車場・駐輪場は広々。院内も、待合室・診察室・相談室など余裕を持った造りで、非常にシンプルな空間になっている。院長の鈴木陽一先生いわく「通っていただく患者さんにとって、居心地良く飽きがこない“普通のクリニック”を意識しました」。糖尿病内科と内分泌内科という診療科は、長期かつ定期的な通院が必要になるが、それが鈴木先生が実践していこうとしている医療。「一人ひとりの患者さんの人生に寄り添いたい」という思いを持ち、実現するため、8年間の会社員生活を経て、医師になった。できる限り長く医師として活動し、患者に向き合っていこうという鈴木院長のこれまでと今後のビジョンに迫った。
(取材日2024年8月30日)
大学院修了後、8年のエンジニア生活を経て医師に
会社員をされていたと伺いましたが、そもそも先生はなぜ医師になられたんですか?
もともとはメーカーでエンジニアをやっていました。理工学部を出て大学院の修士課程に2年行ったんですけれど、周囲が優秀すぎて、僕自身は研究者になるのを断念して就職したんです。入社して最初の5年は、写真屋さんで写真をプリントする機械のレンズの設計を担当していました。その後、医療機器の部署に異動になりました。丁度その頃に、社内で機械を設計する一人の技術者というだけではなく、社外でも、たとえ一人でも何かの役に立てる存在になりたいという思いが強くなってきました。8年間の在籍中、会社にはさまざまな形で成長させてもらう機会をいただいたと思っています。ただこれから定年退職するまで会社に居続けても、そのような存在になるイメージが湧かなかったんですよね。
獲得した技術がどこでも役に立つような人になりたかったのですね。
普段の仕事は社内での会議や設計、実験等が主で、開発に関わった機械のユーザーと接する機会はほとんどなく、成果ややりがいを実感できなかったんです。後に医療機器の部門に異動になってもそれは変わらず、そうした自分の日々の営みも踏まえて、「本当にやりたいことは何だろう」と考えて、最終的に「医学部受験にチャレンジしてみよう!」という決断に至りました。仮に医師になることができれば、気力体力次第では長く仕事ができるのでは、という思いもありました。そのときすでに30歳手前で、28歳の時に結婚していました。それで、妻に話してみたら「やりたいなら、試験受けてみたら?」って言ってくれたんです。それでスッと楽になって、駄目なら諦めてこれまでどおり働けばいいわけだし、「よし、やってみよう!」と思い立ちました。
日々仕事をしながら受験勉強されたのですね。
はい。とはいえ、思い立って妻に話した年は受験まで残り半年しかなかったので、当然のように不合格でした。それでもう1年勉強して合格することができたのですが、一度大学は出ているので「学士編入試験」という仕組みを利用して受験したんです。全国のいろいろな医学部が、大卒資格のある人を2年または3年に編入させることのできる枠を準備していて、それぞれ狭き門ではあるのですが、国公立の医学部でも複数並行して受験できるというメリットがあって、それで鳥取大学にご縁があって行けることになったんです。当時勤めていた会社に告げたときはすごく驚かれましたが、応援しつつ送り出してくれましたね。その時にはすでに娘もいたので、家族で鳥取県に拠点を移しました。
医師として「一人ひとりと向き合うこと」を実践したい
そもそも拠点は神奈川県だったのですか?
生まれは千葉県の市川市ですので、基本的に関東圏ですね。前職でも8年間神奈川県の足柄上部に職場がありました。鳥取県は非常に住みやすくて、そのまま向こうにいても良かったんですが、僕も妻も関東の人間ですし、親たちも住んでいますので、大学卒業後はこちらに戻ってきました。研修は横浜市立大学附属市民総合医療センターと藤沢湘南台病院で1年ずつ。小児科と精神科、内科で迷って、最終的には今の糖尿病・内分泌領域を選択したんです。
小児科と精神科、内科という選択肢が出てきたのはどうしてですか?
そもそも小児科をめざしていたんです。子どもたちは、少子高齢社会で具体的に未来を担っていく立場で、彼らを健やかに育てるのは非常にやりがいのある仕事だと思いました。僕にもちょうど小さい子どもがいたこともあります。精神科については、患者さんの生き方、性格、育った環境等、さまざまな要因が病態に関わってくると思うので、患者さんとの向き合い方や信頼関係を作っていくのが重要になると考えていました。そこに魅力を感じて選択肢の一つとしていました。実は、糖尿病などの生活習慣病も、それまでの生活の積み重ねから生じる病気という点では同じです。その上で局面に応じた診療を行っていくことが大きく違っていて、それが僕自身のめざすところと合致したのです。
医師になられて12年目での開業ですが、どんなきっかけがあったのですか?
僕は仕事が好きですし、他の医師と比べると、医師として仕事をするようになるのはずいぶん遅かったので、その分、今後はできる限り長く仕事をし続けていきたいと思ってるんです。正直、病院勤め自体に大きな不満はありませんでした。そのまま勤務医でもいいかもしれないと思ったことはありましたが、どうすれば「長く仕事をすることができるか」を考えた時に、自分で働く場所を自分でつくるのが一番いいのかなと思ったんです。診察だけしていれば良かった勤務医時代と比較すると、今、別の大変さを実感していますが、同時にすごく自由に患者さんと接することができる喜びも強く感じています。
それぞれの「生活」に適した生活習慣病診療を提供
あらためて、こちらのクリニックではどのような医療を提供していこうと考えていらっしゃいますか?
生活習慣病の大きな特徴は、検査の結果だけを見て治療方針が決まるものではない、という点です。患者さんの生活スタイルによって大きく変わるんですね。「糖尿病でこの数値だから、この薬を処方しておけば良い」では済まないんです。例えば一人暮らしの高齢の方と、30代で家族と一緒に暮らしている方とでは、治療のアプローチがまったく異なってきます。妊娠を考えている方と、そうではない方でもまた違います。それぞれの生活に沿うことを重視しながら、普段どんなものを食べて、どういう生活を送っているのかなど、しっかりヒアリングしています。例えば、通常の問診では、患者さんの出身地はあまり聞かないと思いますが、当院ではそのあたりも聞きます。育ってきた環境によって家庭料理の塩分量なども違いますからね。
そのあたりのことは、初診のタイミングでしっかり時間を取って聞かれるのですか?
もちろんそれに越したことはないですし、時間がある限りはしっかりヒアリングしますが、患者さんお一人お一人にかける時間も限られています。生活習慣病の患者さんとは長いお付き合いになりますので、その都度少しずつお話をするようにしています。最初は病気を軸にだけお話ししていたのが、2度3度と通院されることで、お互いに心を開き、雑談ベースでさまざまな生活の背景を聞くこともできます。そうしていくうちにだんだん患者さんとも仲良くなり、当初はこちらの質問にポツポツと答えるだけだった方が、ご自身のことを語っていただけるようになることもあります。
どのようなことを重視して診療にあたられていますか?
当然のことですが、生活習慣病と言っても、患者さんそれぞれで生活習慣のどこに問題があるかは異なります。患者さんとの信頼関係を作りながら、その問題点を明らかにすることを意識しています。糖尿病にせよ、内分泌系の甲状腺などの疾患にせよ、病気と長く付き合いながら生活の質を上げていくことが重要です。そのためには、患者さんお一人お一人に適した治療を行っていくことが大切です。それを具体化するために、患者さんとのコミュニケーションがたいへん重要であると思っています。
では最後に、近隣の皆さんにメッセージをお願いします。
糖尿病内科・内分泌内科を専門的に診るクリニックは、特に藤沢市北部のエリアでは多くはないと思います。長らく付き合い続けることになるこうした病気は、通いやすいクリニックにきちんと通い続けることが重要だと思います。何か気になる点がありましたら、気軽にお越しください。