早期治療でスムーズな社会復帰を
働き世代に多い精神疾患
江村精神科クリニック新宿
(新宿区/新宿駅)
最終更新日:2024/07/01


- 保険診療
日々忙しい働き世代。真面目に仕事に取り組むあまり、つい無理をしてしまうことはないだろうか。社会に出れば多少なりともストレスを感じる場面はあるが、そのほとんどは気持ちの切り替えで解決するもの。「もしそれが週単位で続いたならば、早めに相談にいらしてください」と語るのは、「江村精神科クリニック新宿」の山邊義彬(やまべ・よしあき)院長だ。精神疾患と診断された場合、ビジネスパーソンにとって重要な課題の一つに、治療を終えた後の社会復帰がある。不眠、イライラ、気分の浮き沈みといった症状の原因を突き止め、早期に治療を行うことでスムーズな社会復帰につなげたいという山邊院長に、30~50代の働き世代に多い精神疾患や、社会復帰までの流れについて話を聞いた。
(取材日2024年6月6日)
目次
働き世代が感じやすい、不眠、イライラ、気分の浮き沈み。「つらいな」と感じたら我慢せずに早めの相談を
- Q働き世代に多い精神疾患にはどのようなものがありますか?
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A
▲気になる症状があればまずは受診の一歩が大切
適応障害、うつ病、また最近では発達障害での受診も増えています。その他にも不眠症、不安障害、パニック障害、強迫性障害など。不眠、イライラ、気分の浮き沈みといった自覚症状が複雑に絡み合うこともあり、特定の症状が強く出ることもあります。また、働き世代で若年性認知症を発症することもあるのですが、脳梗塞など体の病気から認知症の症状が出ることも。これは不眠などに関しても同じです。脳内の機能の問題、他の疾患の影響、性格や過去の出来事など、精神症状の要因は多様なんですね。「気持ちの問題」と決めつけずに、血液検査やMRIなどの検査も取り入れながら、多角的に診ることが病気の早期発見につながります。
- Q適応障害とはどのような症状を指すのでしょう。
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A
▲大学病院や基幹病院で多くの臨床経験を積んできた山邊院長
大まかに言いますと、ストレスが大きな要因となって心身に不調を来した状態です。不眠や気分の落ち込みがあったり、いら立ちや不安を感じたり、あまりにストレスが大きい場合には出勤ができなくなってしまうこともありますね。これらの症状は「うつ病」とも似ているのですが、適応障害の原因がストレスが主であるのに対して、うつ病は脳内のホルモン分泌など生物学的な要因も大きいと考えられています。つまり同じような症状であっても、その要因はそれぞれに異なりますし、病名が同じであっても患者さんによって治療方法も変わってくるのです。
- Q最近受診者が増えているという「発達障害」について伺います。
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A
▲受診しやすい雰囲気づくりに工夫を凝らされた院内
幼少期から症状が見られるのが発達障害の特性なのですが、子どもの頃から集団生活になじめなかったり「少し変わった子」と思われても見過ごされることがありました。ですが大人になって社会に出ると、コミュニケーションが取れずに業務に支障を来したり、マルチタスクがこなせずにご本人も周りも困ってしまったりと、仕事上でさまざまな問題が生じます。最近ではメディアで「大人の発達障害」や「自閉症スペクトラム症」が取り上げられることが多くなり、「自分もそうなのではないか」と不安を感じたり、職場の上司から勧められたりして受診される方が増えています。
- Q治療法について伺います。
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A
▲適切な治療を継続できるようにサポート
薬が有用だと判断した場合には薬を用います。当院では、専門医師による処方が必要な、ADHD治療薬の使用も可能です。ただし、治療では必ずしも薬を使うわけではなく、例えば不眠症の患者さんなどは生活習慣を見直すことで改善が期待できる場合もあれば、カウンセリングが有用なケースもあり、どのようなアプローチが合っているのかを医師がしっかりと見極めます。また休職の提案や、企業への配置転換のお願い、また社会復帰の前にトレーニングを取り入れることも。苦手なことと得意なことがはっきりとしている患者さんもいらっしゃいますから、社会で無理なく能力を発揮できるようサポートしていきます。
- Q患者側でも心がけるべきことがあれば教えてください。
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A
▲自己判断せずに専門の医師に相談してほしいと話す山邊院長
何よりも「頑張りすぎない」ということ。仕事に対して真面目なのは良いことですが、自分を犠牲にしてはいけません。無理をしてストレスがたまり、そこから心身のバランスを崩してしまう方が働き世代には多いように感じます。「こうでなくてはならない」と固執せず、一歩引いて長期的に見てください。ご自身が長く続けられるような働き方を考える「セルフストレスマネジメント」が、働く皆さんには必要です。そして、いつまでも疲れが取れなかったり、生きづらさを感じたりする場合は、早めに精神科を受診することをお勧めします。