小さな生活の改善を積み重ね
「考え方を変える」肥満症治療へ
芦屋まつおクリニック
(芦屋市/芦屋川駅)
最終更新日:2024/06/14
- 保険診療
さまざまな生活習慣病や循環器疾患、さらに関節痛など整形外科疾患の原因にもなる肥満症。豊かな食環境にあるわが国では食べ過ぎに陥りやすく、ストレスや運動不足から肥満症になる人が多いという。長く健康で過ごすためには減量が欠かせないものの、「芦屋まつおクリニック」の松尾俊宏院長は「患者さんの努力だけで肥満症を解消するのは、かなり難しいことです」と思いやる。松尾院長は、大学病院での勤務医時代には専門のチームにも参加していた、肥満症の治療経験が豊富なドクター。このため同クリニックでも、地道な生活指導を中心に薬物療法、大学病院と連携した手術治療など、専門的な治療選択肢をも視野に入れて治療を行う。取材では肥満と肥満症との違いや同クリニックでの治療内容、最近注目される手術治療や薬物治療についても詳しく聞いた。
(取材日2024年5月28日)
目次
多職種スタッフの生活指導から薬物療法、スリーブ状胃切除術も。苦しむ患者に伴走する肥満症治療を
- Q肥満と肥満症との違いや、治療が必要な理由を教えてください。
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A
肥満は体重が増え過ぎた状態で、体重kg÷身長mの2乗から導き出されるBMIで25kg/m2以上が肥満とされます。さらに、肥満が健康に悪影響を及ぼしている状態、つまり合併症がある肥満を、肥満症といいます。合併症としては高血圧や脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症や痛風、脂肪肝などのいわゆる生活習慣病や心筋梗塞・脳梗塞などの血管病変、気道が狭まる睡眠時無呼吸症候群、月経異常、さらに骨や関節に負荷がかかり関節痛や変形性関節症などを引き起こすこともあります。命に関わる病気を回避して長生きするためには減量が必要ですし、動きにくさや精神的な落ち込みから生活の質が低下する場合にも、やはり治療を考えるべきでしょう。
- Q具体的には、どのような治療方法があるのでしょうか。
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A
基本は生活習慣の改善であり、食べ過ぎや運動不足の見直しから始めます。患者さんの生活を詳しくお聞きして、取り組めそうな小さな目標を掲げ、達成できたら次のステップへ進むという繰り返しになりますね。また、痩せにくい病気がないかどうかの検査も行って、病気が見つかればその治療を優先することもあります。より高度の肥満症であれば、当院では保険診療の範囲で治療薬であるGLP-1受容体作動薬を使うこともあります。さらに高度の肥満症を改善するために、胃を小さくする目的の腹腔鏡下スリーブ状胃切除術という治療法もあります。こちらの手術はBMI35以上の方が対象ですが、併存疾患の状態によって条件が変わります。
- Q手術治療には、大学病院と連携して対応するそうですね。
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A
私の母校である兵庫医科大学で、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を実施しています。胃の一部を切除しバナナ1本分ほどのサイズにすることで、摂食の制限を図るのです。全身麻酔や術後合併症など手術に伴うデメリットはありますが、治療の成果は非常に大きいことが期待でき、海外では普及が進んでいます。また腹腔鏡で手術ができるようになったことや、わが国では2014年から一定の条件を満たせば保険診療の適用になったことから、国内でも最近はこの手術が知られるようになりました。ただ、手術を希望されてもまずは慎重な検査や評価を要しますし、術前にはリスクを下げるために減量が必要ですので、そういったサポートを当院で行っていきます。
- Qこちらの肥満症治療で大事にしていることは?
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A
治療の中心である生活習慣の改善において、患者さんと一緒にできることを考え、患者さんがうまく取り組めるようにサポートすることです。すべきことは「カロリーを減らす」「運動をする」と決まっているわけですが、具体的に取り組めることは患者さんによって異なります。ですから診察時には、私だけでなく、管理栄養士や糖尿病の専門知識を持つ看護師も、患者さんと話をする時間を設けています。スタッフ間で情報を共有しながら、少しずつ変えられそうな部分を見出し、患者さんに受け入れてもらえる言葉で具体的に伝え、改善があれば認めてステップアップを図る。時間のかかる地道なアプローチですが、この積み重ねを大切にしています。
- Q肥満の進行を防ぐには、何に気をつければ良いのでしょうか。
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A
特に働き盛り世代では、SNSの普及やデスクワーク中心の仕事で、以前にも増して運動習慣のない人が増えています。また仕事や家庭へのストレスや、不規則な勤務時間に苦しんでいる人も多いですし、費用面を気にされる方が増えるなど、経済状況の変化も感じています。誰もが肥満になりやすい社会といえるかもしれません。でも健康に支障が出たり、生活の質が著しく落ちるほど太ってしまう前に、自分の健康を見つめ直しご自身を大事にしてほしいと思います。同時に、お一人で生活を変えることはなかなか難しいですし、メタボリックシンドロームや病気が隠れていることもあるので、病気の予防を目的に受診してみても良いと思います。