竹田 広毅 院長の独自取材記事
双泉会クリニックなかの
(中野区/中野新橋駅)
最終更新日:2023/03/16

東京メトロ大江戸線の西新宿五丁目駅から徒歩11分の場所にある「双泉会クリニックなかの」を訪ねた。院長の竹田広毅(ひろき)先生は、東京医科大学を卒業後、母校の付属病院で長年、脳神経外科の医師として研鑽を積んだ。多くの手術を担当し、脳梗塞や脳出血の患者の診療に取り組んできた。その経験から、術後患者の在宅医療にも関心を持つようになったのだという。「患者さんやそのご家族が、家にいられて良かったと思えるように、できるだけお手伝いをしたいのです」との言葉から、患者を取り巻くすべての人への思いが垣間見える竹田院長。訪問診療をはじめとする医療への思いやクリニックのめざす形など、さまざまな話を聞いた。
(取材日2023年3月1日)
訪問診療や往診で、在宅療養生活をサポート
クリニックの成り立ちについて、教えていただけますか。

当院は、訪問診療や往診を中心としたクリニックです。母体は東京西双泉会という医療法人で、さまざまな理由で通院が困難な方に対して、ご自宅で診療を行う在宅療養支援診療所を運営しています。都内にはいくつかのサテライトクリニックがあり、それぞれのエリアで診察、診療を行っています。当院はその中の1つで、中野地区を担当しているクリニックとお考えください。訪問診療、往診の範囲は、基本的に中野区、新宿区、杉並区、渋谷区、世田谷区の一部・豊島区の一部となっていますが、それ以外の地区でも訪問が可能な範囲であれば、診察にお伺いしています。
どのような患者さんが多いのでしょうか。
当院で多いのは、脳梗塞の後遺症を抱えている方への訪問診療ですね。あとはがんの末期の方、ご高齢のために通院が難しくなった方。在宅医療を必要とする方々は、住み慣れた場所で、ご家族とともに今までと同じように過ごしたいというご希望があるのです。例えば、がんの方が絶対にお酒を飲んではいけないのかといえば、私はそんなことはないと思います。楽しみとして、多少たしなむ程度なら良いのではないでしょうか。また病院では面会時間が限られていますが、ご自宅ならお孫さんやご友人と好きな時間に会うことができます。そのために自宅療養をご希望される方が多いと思いますし、私たちもその思いをかなえて差し上げるために、訪問診療を行っているのです。
訪問診療では、どのようなことをされているのでしょう。

患者さんのご自宅に1ヵ月に2回、定期的にお伺いして診察をします。基本的には一般外来と同じように血圧や脈拍を測ったり、必要に応じて注射や点滴をしたりします。高血圧症や糖尿病など慢性疾患がある方の経過観察や栄養管理、アドバイスも行いますし、ちょっとした切り傷や巻き爪の処置などを行うこともあります。いわゆる町のお医者さんが行う総合的な一次診療を、ご自宅で行っているということです。病状が悪化したり状態に変化が生じたりした場合は、要請により往診にもお伺いします。また双泉会の各サテライトクリニックと連携し、24時間365日医師が対応するオンコール体制を整え、緊急時に備えています。患者さんの病状など情報は電子カルテで共有していますので、迅速に対応することが可能です。
患者を最期まで見守りたいとの思いから訪問診療の道へ
そもそも医師を志したのは、どのような理由からなのでしょう。

小学生の頃、ヒロインが白血病になるドラマを見て医師に憧れたのがきっかけです(笑)。その思いを持ち続けて医科大学に進学し、現在に至ります。大学卒業後は母校の大学病院で脳神経外科を専門としてたくさんの患者さんを診察し、多くの手術も経験しました。もちろん、術後の患者さんの経過観察も行いました。脳梗塞や脳出血の後遺症やてんかんの持病を持つ方への診察には、この経験が生かされていると思います。脳梗塞や脳出血によって認知症を発症することもあり、認知症の知識もありますので、そういったご相談にも乗ることができます。
脳神経外科を専門としていた先生が、なぜ訪問診療に取り組もうと思われたのですか。
病院で脳神経外科の医師をしていると、自分の患者さんがどうなったのか見届けることができません。手術をしてある程度回復をすると、患者さんは退院します。その後、ご自宅に近い病院で経過観察をするということになると、それきりになってしまうんですよね。でも私は、「患者さんは、その後どうなったんだろう」とずっと思っていたのです。元気になった人もいますが、後遺症が残った人もいます。医師として、最後まで患者さんを診たいと思った。それがきっかけです。それと、もう一つ、大学病院では脳神経外科を専門としていましたが、私がめざしていたのは広く浅く、なんでも診ることができる医師です。ですから勤務医時代も、他科の先生にさまざまな症状や病状に対する処置を積極的に聞くようにしていました。訪問診療は幅広い医療に対応できる「何でも屋さん」のようなものですから、ある意味、原点に返ったとも言えるかもしれませんね。
診察の際には、どのようなことを心がけていらっしゃいますか。

患者さんはもちろんですが、ご家族ともコミュニケーションを取るように心がけています。訪問診療では、お看取りをすることもあります。ご高齢者やがん末期の患者さん、そのご家族からは、「最期を自宅で迎えたい」、「最期まで家で過ごしてほしい」という思いから、在宅医療を選択されます。ですから私たちは、患者さんが平穏な気持ちのまま、最期を迎えていただくためのお手伝いをしているのです。痛みがあれば取り除く、不快なことがあればできるだけ解消し、楽にして差し上げる。そうして「家にいて良かった」と思っていただけることをめざしているのです。そのためにも、ご家族が気づいたことやお困りのこと、「こうしてほしい」というご希望など、どんなことでも打ち解けて、信頼してお話しいただけるように努めています。
患者の安らかな日々のために、なんでも相談してほしい
今後取り組みたいことや、めざす方向など、将来の展望をお聞かせください。

在宅医療を必要とされている方々と、そのご家族の生活サポートをさせていただき、地域の皆さんのお役に立ちたいというのが、私たちの思いです。そのために、今後は看護師をはじめとしたスタッフを増員し、できるだけ多くのお宅に訪問できる体制を構築したいと考えています。また、地域の医療機関、訪問看護師、ケアマネジャーなど各分野のスペシャリストとの連携を、今以上に密接にとって、皆さんの希望に沿った医療環境を創り上げ、地域に貢献したいと思っています。
お忙しい毎日だと思いますが、プライベートタイムはどのようにお過ごしですか。
今は診療を終えたら翌日の準備をして、自宅に帰ってバタンキューという毎日なので(笑)、体調を崩さないよう、食事に気をつけて、適度な運動をし、休みの日にはゆっくり体を休めるようにしています。普段は忙しいので、その分、休日は妻との時間を大切にするようにもしています。食事にいったり、買い物に付き合ったりという程度ですが。たまには2人で旅行に行くこともありますが、家で過ごすことが多いかな。何げないことでも、ゆっくり話をするだけで気分がほぐれて、リラックスできますからね。とはいえ休みの日でも電話がかかってくるかもしれないので、半待機状態で携帯電話を近くに置いているのが現状ですね。
では最後に、読者へのメッセージをお願いします。

在宅医療を受けられている患者さんのご家族に、お伝えしたいことがあります。それは、無理をしてご家族だけで抱え込まないでほしいということです。患者さんが過ごしやすい環境をつくるためには、ご家族の負担を減らすことも重要なポイントです。私は医療面において、できることはなんでも対応し、ご家族が楽できるようにして差し上げたい。そのために当院を開設しました。また医療面だけでなく、介護やリハビリテーションなど、相談をすることでご家族の負担が減り、楽になることはたくさんあります。どこに相談すればいいのかわからないという場合は、当院にご連絡ください。中野エリアにお住まいでない場合でも、当院の法人は都内各所にサテライトクリニックがありますので、ご紹介することもできます。患者さんとご家族の思いをかなえ、少しでも生活の質を上げるためのお手伝いができればと思っていますので、細かいことは気にせず、一度ご相談ください。