ものが歪んで見える加齢黄斑変性症とは
初期症状や治療法について
おおうら眼科
(大阪市淀川区/三国駅)
最終更新日:2023/12/01


- 保険診療
年齢を重ねるにつれ、体の各部位に現れる老化のサイン。例えば目なら代表的な老眼だけでなく、緑内障や白内障、糖尿病の合併症である網膜症などさまざまな病気が隠れていることもある。そして近年増えているというのが、網膜の中心で光を感じる黄斑に障害が出る加齢黄斑変性症。60~70代を中心に、早ければ50歳程度から「ゆがんで見える」「中心部に暗点がある」などの症状が出て、進行すれば視野の中心の大部分を欠損してしまう病気だ。一般的な治療法は目への抗VEGF薬の注射で、早期受診・治療が鍵となる。極細針を使用し治療スケジュールにも臨機応変に対応しているという「おおうら眼科」の大浦嘉仁院長に、加齢黄斑変性症とはどのような病気か、初期症状やセルフチェック法、治療方法など話を聞いた。
(取材日2023年11月2日)
目次
片目で見るとわかる、ゆがみと中心部の暗点……。60~70代に増加中の加齢黄斑変性症に注意
- Qものが歪んで見える「加齢黄斑変性症」とは、どんな病気ですか?
-
A
▲大阪市近郊からの通院患者も多い「おおうら眼科」
加齢黄斑変性症とは、加齢とともに網膜の中心部分である黄斑に障害が起こり、出血が起こったり、網膜が剥がれたりする病気です。女性より圧倒的に男性のかかる割合のほうが高いという特徴があります。原因は主に加齢によるものですが、遺伝的素因もあるので、身の回りの血縁者にかかった人がいる場合には注意が必要です。またそれ以外にも、喫煙や紫外線、食生活の欧米化なども要因だといわれています。特に日本は長寿社会になり、食生活も豊かになったことで、加齢黄斑変性症が増えてきています。中高年以降に増加する緑内障や糖尿病網膜症と並び、加齢黄斑変性症もまた失明を引き起こす恐れのある病気ですので、注意してほしいですね。
- Q加齢黄斑変性症の初期症状を教えてください。
-
A
▲片目ずつ見比べ差がないかセルフチェックをし早期受診・治療へ
典型的な初期症状として「ゆがみ」が挙げられるほか、中心部が見えづらくなる「中心暗点」などがあります。まっすぐの線を見てもガタついて見えるため、例えば運転中のセンターラインがゆがんで見えるなど、ふとしたことで気がつくケースが多いですね。最も簡単なチェック方法は、カレンダーなど縦横に線のある物を、同じ距離から片目ずつ見てみること。また電車に乗っているときに車窓から見える看板などを左右交互に見て「差がないか」「中心の文字の見えやすさ」「周辺の見え方」などの確認を習慣づけてみましょう。加齢黄斑変性症は60~70代以降の方に多い病気ですが、早ければ50代から症状が出始める方もいます。
- Q加齢黄斑変性症を放置すると、どのような状態になりますか?
-
A
▲加齢黄斑変性症は早ければ50代から症状が出始める人もいる
加齢黄斑変性症は、網膜の中心にあり光を感じる黄斑と呼ばれる大切な部分が障害されると出るもので、急激に視力が低下するものではなく、ゆっくりと少しずつ悪化していく病気です。多くは片目から起こりますが、両目であっても進行スピードはそれぞれ異なるため、良いほうの目が悪いほうの目をカバーしてしまい、初期変性は気がつかないことがほとんど。視力に異常を感じていても「片目が見えているから」と受診せず、そのうちに中心部の視力が落ちて初めて検査をしたら、加齢黄斑変性症の病巣が大きくなっていたというケースもあります。網膜の病気は治療をしても元に戻りにくいケースもあるため、なおさら早期発見・治療が大切だと考えます。
- Q加齢黄斑変性症の治療法について教えてください。
-
A
▲極細針を使用し治療スケジュールにも臨機応変に対応している
加齢黄斑変性症のうち「滲出型」治療には、抗VEGF薬を硝子体内に注射する方法が一般的です。滲出型は、黄斑変性で傷んだ部分にできる新生血管から水や血が漏れることで構造が変化したり、神経が傷んだりするタイプの黄斑変性。この新血管の退縮を図るのが抗VEGF療法で、初期は月1回・3~5ヵ月連続で行い、経過を診ていきます。ですが、基本的に一度傷んだ組織は元には戻りにくいため、治療は早期に介入することが重要だとされています。当院では、初診でもその日のうちに注射治療を開始でき、ほぼすべての薬剤をそろえています。大阪市内の中でもこれほど柔軟に対応し、数多くの薬剤をそろえているところは少ないでしょう。
- Q加齢黄斑変性症の予防法について教えてください。
-
A
▲ライフスタイルに合わせた予防法を提案してくれる院長
加齢黄斑変性症の予防では、目の網膜に紫外線や酸化ストレスといった刺激を与えないことが大切です。美容や健康に気をつけるように、適度の運動や野菜多めの食生活に変えるなど、生活習慣の見直しをすることはもちろん、自分自身が加齢黄斑変性症になりやすいタイプであるという自覚がある場合にはリスクを下げるための対策を取りましょう。例えば、屋外作業が多い仕事であればサングラスなどで目の紫外線対策をするのも良いと思います。とはいえ、加齢は避けられませんから、「ひょっとして? 」「見え方が昔に比べて悪くなった」と思ったら、早めに眼科を受診して、治療のタイミングを逸しないようにすることが大切です。