子どもが多尿・頻尿だと感じたら
小児でも発症する1型糖尿病
子どもの成長・糖尿病 上西のびしろクリニック
(春日井市/勝川駅)
最終更新日:2022/12/02


- 保険診療
糖尿病と聞くと、成人病というイメージがあるが、糖尿病の中でも1型糖尿病という病気は、大人よりもむしろ小児に多い病気だという。病院の小児科や、NICUで長く経験を積んだ「子どもの成長・糖尿病 上西のびしろクリニック」の圓若かおり先生によれば、大きな病院を受診した時点では、脱水による重篤な状態になっているケースも多いそうだ。自分の症状をうまく親に伝えることができない小児は、発見が遅れがちなのかもしれない。「高血糖な状態が続けば、命の危険がある場合もあります」と圓若先生。重篤な状態になる前に大人が気づいてあげるためには、どんな症状があるのかを知っておきたい。小児医療に詳しい圓若先生に、1型糖尿病について話を聞いた。
(取材日2022年10月31日)
目次
健常児と同じ日常生活を送れるよう、身近なクリニックで日々の血糖コントロールをする
- Q1型糖尿病とはどんな病気なのでしょうか?
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A
▲小児に特に多いといわれる1型糖尿病
膵臓内に自己抗体ができてインスリンをつくるβ細胞が破壊されてしまい、血糖を下げる役割を果たすホルモンであるインスリンが出なくなってしまう病気です。インスリンは、食べ物をエネルギーに変える過程で、食べ物由来のブドウ糖を筋肉や脳などの細胞の中に取り込むために必要なホルモン。そのインスリンが不足すると、細胞の中にブドウ糖を取り込むことができなくなってしまうのです。原因は一つではなく、ウイルス感染など関与しているものはいくつかあり、複合的な要因で発症するといわれています。1型糖尿病の発症は、0歳から大人まで何歳でも起こり得ますが、特に小児に多い病気です。
- Q子どもにどんな症状がある時に疑えばいいでしょうか?
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A
▲症状が出ていたらまずは相談してほしいという
多飲、多尿、トイレに行く回数が多い、活動的ではなく疲れやすいなどです。血管内のブドウ糖濃度が高くなると尿にブドウ糖を多く排出するようになります。一緒に水分も多くなるので、尿の量や回数が増え、喉が乾きます。その結果、多飲になり、トイレの回数も増えるのです。また、食べ物をエネルギーに変えることが難しくなるために、疲れやすく、元気がなくなるといった症状が見られます。気づかずに血糖値が高い状態が続いてしまうと、ケトーシス、ケトアシドーシスが進行してしまうこともあるので、注意が必要です。何かおかしいと思ったらまずは相談してみてください。
- Q治療方法について教えてください。
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A
▲専門医師によるアドバイスと毎日の管理が大切になってくると語る
1型糖尿病は、体内のインスリン分泌が完全に不足・欠乏しているので、インスリンを注射で補充し続けなければなりません。治療は、毎日のインスリン注射と食事や運動での血糖コントロール。注射は1日に2~5回打つ必要がありますから、入院中に家族やお子さん自身で打つ練習をします。完治が望める病気ではないので、日々の管理が必要な病気ですね。インスリンの必要量を減らしたり働きを良くしたりするためには、食事や運動も大切です。健全な日常生活と専門の医師による適切な治療が、病状を安定させるための鍵になります。
- Q身近なクリニックでの治療は可能でしょうか?
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A
▲子どもにできる限り負担の少ない機器を導入しているという
大きな病院の検査などで診断がついた患者さんの継続的な治療は、糖尿病を診療する地域のクリニックでも可能です。日々の管理は診察時間の幅が広いクリニックで行い、大規模病院でも定期的に受診するというのが、患者さんにとっても負担が少ないかと思います。当院でも、皮膚に接したセンサーが血糖値を測定する、皮下センサー設置型の持続血糖測定器や携帯型のインスリンポンプ、少量の血液で適切に血糖コントロール状態が測定できる機器など、できるだけお子さんに負担の少ない機器を導入しています。
- Q家庭ではどんな協力が必要になりますか?
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A
▲糖尿病治療は、インスリン治療だけでなく食生活も大事にしている
小児の糖尿病治療は、本人と家族、学校、主治医それぞれの協力が必要不可欠で、成長過程で体や心の変化に対応していくことが大切です。乳幼児期や学童期、思春期など各時期に合わせた臨機応変な治療で血糖のコントロールができれば、学校行事にも参加して、普通の学校生活が送れます。インスリン治療だけではなく、ご家庭でのカロリーや栄養バランス、糖質の摂取量を考えた食生活も大事ですね。